第25話『メイプルの挑発』
ヒロトはメイプルの言う通り、スタジアム上に出た。
コウとキサクも、当然困惑している。
「な…何でヒロトなん?」
「お…俺に聞くなよ」
この状況に至った理由を知るものは、当然いなかった。
ヒロトは、恐らくメイプルとカリンだけが知っていると睨んでいるらしい。
「ふっ…」
メイプルとカリンは、ヒロトを興味深げに見据えていた。
ヒロトがキョトンとしていると、後ろからラビットが言う。
「何やらかしたんですか?謝るなら今ですよ!」
「いやいや、心当たりがな…──あれ?」
言いかけてから、ヒロトは自分が10組編入の際に行った暴力と、ラビットの風呂に突撃したことを思い出した。
ヒロトはラビットに顔をぐっと近付け糾弾した。
「えっ…ちょっ!近いですってばっ」
「お前、まさか風呂の一件についてバラしてねえだろうな…!」
「そんなことするわけないでしょ!わたくしだって恥ずかしいじゃないですか!」
「…鬼神のこと、喋ってねえよなっ」
「喋る理由もないじゃないですか…!」
ヒロトはラビットの無実を知って、なおさらこの戦いの意味がわからなくなった。
他の生徒会が困惑しているのを見る限り、生徒会が絵を描いた計画ではないようだし、この二人だけの計画とは思えない。
誰かが裏で糸を引いているのか。
「安心せえヒロト。ワイがお前の力を確かめたくなったってだけや。指導とはちゃう」
「で…でも、何で10組の俺なんかに」
──騒然とするスタジアム…
2組でその様子を見るクレアは、一層驚いていた。
「なぜ、ヒロトくんが…」
クラスメイトの一人が、クレアに質問する。
「知り合い…?」
その質問に、クレアは短く答える。
「はい…そんな感じです」
──メイプルは、続いてさらに言った。
「ああ、そこのヒロトってやつ」
「…?」
「ラビットとの共闘を勧めたのは、お前とラビットの実力が互角だったからやないで」
「どういう意味だ…」
「簡単や…──お前じゃあワイの相手はつとまらん言うとんねん」
「なっ…」
ヒロトは、その少女の挑発に少しカチンときた。
それでもなお、メイプルにさらに反論する。
「ふっ…結構ナメられたもんだな。俺の実力を知ってて言ってんの──」
「知っとるでぇ」
「!?」
メイプルは口角を吊り上げながら言う。
「体術にいたっては防衛兵とドスコイやのに、魔法がまったく使えんっちゅうことで10組に入ったんやろ」
「…何でそれを」
「さあな~?」
「…くっそぉーっ!」
人をおちょくる態度ばかりの少女に、ヒロトはいよいよ怒りに耐えかねた。
「その息や…──おい、ラビットさんよ」
「はっ…はい!」
「ヒロトと組んで、フルパワーでかかってこいや」
「フっ…フルパワーですか!?」