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魔法学園と鬼氣使い(ヤンキー)  作者: みっしゅう
第1章『全てはここから始まった! 最強の日本人ヤンキー 異世界の魔法学園に転移!』
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第21話『関係を深める2人』

 過去の全てを語り終えたヒロトは、辛そうだった。

 ラビットはヒロトに駆け寄って彼の背中を(さす)る。

 ヒロトは安心できたようだ。

「ありがとう。俺も過去を打ち明けたおかげで、少し気が楽になった」

 ヒロトは笑みをかべて言った。

「わたくしも、あなたと過去を語り合えてよかったです」

 2人は向かい合って、お互いの顔を見つめあった。

 ヒロトもラビットも、お互い過去を語り合い、親密(しんみつ)な関係となれた。

「へへ…」

 ヒロトの安らかな笑顔…──それを見てラビットは、少し心が躍動した。

 不本意のそれに、ラビットは思いがけず目をらした。

「…ん?どうしたよ…」

「なっ…なんでもありません…っ」

 このまま、しばし二人っきりの時間が続くかと思われたが…──


「ガチャ☆!おっ、やってるねぇ」

 ドアを開けて入ってきたある男が、その空間を見事にぶち壊してくれた。

「お二人ともそんなに近距離(きんきょり)で…♡。不純(ふじゅん)異性交遊はダメだぞぉ♡」

 学園長のリズレである。

 二人は自分達の距離を見直す。

「ひゃあっ」

 ラビットは思わず距離をとる。

「ふふっ、結構(けっこう)いい関係になったみたいだね☆」

「誰がですか!」

 リズレは結構いい関係の二人に微笑みを浮かべる。何とも上機嫌(じょうきげん)で考えを変えるつもりはないらしい。

 ラビットは真っ赤な顔である。

 だが、リズレは二人に頭を下げた。

 それには、謝罪と感謝の両方の意味が含まれていた。

「…ありがとう。君たちのおかげで、この学園は最悪の事態を(まぬか)れることができた」

「「…」」

「10組の担任の行動については、絶対に許されるものじゃない。彼は契約違反(けいやくいはん)として解雇(かいこ)させてもらった」

「ふっ…ざまあみろだな」

 リズレはヒロトを見る。

 意味ありげな視線だったが、ヒロトは気付いてはいなかった。


 リズレは微笑みを戻して、手を叩いた。

「さあ、それじゃあ夕食にしようか☆みんなもう食事は済ませてるけど、君たちにはそれ以上のご馳走(ちそう)を用意してるからね!」

 ラビットは、自分がひどくお腹が空いてることがわかった。

「ご馳走…いいですね。ヒロトs…──ぅえっ!?」

 口元からヨダレをだらだら垂らすヒロトに、ラビットは声を出して驚いた。

「ごぢぞぉおおっ…!(ヨダレだらだら)」



「「「っ…!」」」

 ヒロトの規格外(きかくがい)の食いっぷりには、ラビットもリズレも料理人たちも驚いていた。

「んがーっ…がぶっ」

「は…400gのステーキが一瞬で…」

「もぐもぐ…ゴクン──これあと5つもらえる?」

「…っ!!」

 ヒロトはフォークを止めずにさらに言う。

「ピザをあと3枚くらい…あと野菜も欲しいからサラダをボウルいっぱいにちょうだい」

「は…はい」

 ヒロトは急ピッチで料理するコックらを気にせず、400gステーキ12枚とピザ7枚をぺろりと平らげていた。

 それを見て、ラビットは絶句していた。

 …10分後

「──…っふぅー!食った食ったぁーっ!」

 ヒロトは食事を終えてテーブルに皿が()まれる様子に、その場にいた全員が困惑していた。

「わたくしステーキ1枚でお腹いっぱいだったのに…」

「ステーキ27枚とピザ13枚って…どうなんてるんだい君の胃は」

「あはは」

「「『あはは』じゃないっ」」



(りょう)にて…


 ヒロトは、コウの部屋をノックした。

 ──こんこんっ

「ヒロトだ。開けてくれー」

 ドアをノックすると、(おく)から音が聞こえた。

 ──ドタッ…ドタドタドタドタ!!

 するとドアが開き、コウとキサクが現れた。

「「ヒロト…?」」

「…?いやいや聞くまでもないでしょ──」

 ヒロトがそう言おうとすると、二人は目を(うる)ませて力強く抱きついてきた。

「…ふざけんなよ!心配したんだぞ」

「ほんとやよ!死んだらどうするつもりやったんや!」

 感情を押さえきれない様子のキサクにいたっては涙があふれていた。

 奥にはアシュ、サルマ、マーニと他の10組の者もいるらしく、彼らもまた涙をこらえる様子であった。

「ごめんな…心配かけて」

 ヒロトは、微笑んで優しく声をかけた。

「…っし、おかえり!無事でよかったぜ」

 コウとヒロトは、手を堅く(にぎ)った。



 ラビットの部屋は、電気を消して月明かりに照らされるだけだった。

「弥上ヒロト…ですか」

 風呂から上がってパジャマになり、ベッドに横になるラビットは、つい先程までここにいた彼を思い出す。

「あんなに(いか)めしくて(にく)たらしい顔なのに…なぜでしょうね。笑顔と寝顔はあんなに魅力的(みりょくてき)で…」

 夜空に浮かぶ満月を見上げ、彼女は不敵に笑う。


「父様や母様とも、満月の時はゆったりと空を見上げて…──こうやって月を見るのも、いつぶりでしょうかね」

 ヒロトはあのような過去を持ちながら、笑顔を絶やさずに…いたっては他人のために身を呈することができる人間だ。

 鬼神のオーラが馬鹿のように似合わない(まぶ)しい笑顔を見せる彼が、ラビットにはキライになれなかった。

「っ…──!?」

 ラビットは、自分の頬が赤くなっていたのを感じとり、思わず我にかえって、枕に顔を埋め足をじたばたした。

「くぅーっ…」


 へばってしまったラビットは、月を見返してみる。

 …彼女は思わず、それに見とれてしまっていた。

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