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魔法学園と鬼氣使い(ヤンキー)  作者: みっしゅう
第1章『全てはここから始まった! 最強の日本人ヤンキー 異世界の魔法学園に転移!』
19/96

第18話『ラビットの語る過去』

※5年前


「すばらしいわ!ラビット!」

「流石は私の自慢(じまん)の娘だ!」

 当時10歳のラビットの(はな)った魔法によって、何もない小さな苗床(なえどこ)にポンと()が出た。

 それを見て彼女の父母は、目を見合わせて彼女を()(たた)えた。


 ラビットは、幼くして多くの者から将来を嘱望(しょくぼう)されていた。それゆえに、ムーン家には多くの人間がハイエナのように押し寄せた。

「ラビットさんを、うちの学校に編入(へんにゅう)させてください!そうすればラビットさんのさらなる魔法の上達が!」「いいえ!うちの学校に」「バカを言うな!うちの学校に来たいに決まってる!」「いいや、彼女には特別な教師数十名による確実な教育が必要なんだ!うちには素晴らしい教師が45人も…」

 全員口は達者(たっしゃ)だったが、結局は自分の名声しか(あたま)にないのは(あき)らかであった。

 だが、父母は追い返すにもラビットの意見を優先(ゆうせん)した。

「どうするんだ?ラビット」

 父の質問とともに、押し寄せるハイエナはラビットを凝視(ぎょうし)した。

「このひとたち、こわいからやだ」

 ハイエナたちは、そう答える彼女を(にら)み付けて家を出ていったが、一同がなぜ不機嫌(ふきげん)そうなのか理解できていなかった。

 ラビットは外の環境から守られつつ、何人かの友達と関係を(つむ)いでいき育ってきた。


 だが、3年後、冬の夜に悲劇(ひげき)はおこる。

 ムーン家に突如、魔物が現れたのである。

 結界は張ってあるはずだったし、周囲には魔物の気配(けはい)はなかった。

 寝込(ねこ)みを(おそ)われ、()し使いは次々と魔物の餌食(えじき)となっていった。

 足元にある召し使いや魔物の死骸(しがい)の臭いに鼻をつまんで、ラビットは走った。

 ラビットは、ただひたすらに走った。

「お母様ぁ!お父様ぁ!」

 (なみだ)(ふる)える声で叫んだが、父母の声は返って来ることはなかった。

 ラビットは、ただひたすらに走った。


「こっちだっ!」

 突如聞こえる男の声──…

「こっちよっ!」

 突如聞こえる女の声──…

 その声に向かって走ると、森に抜けた。

 森の木々をひたすらにすり抜けたが、父母の姿はなかった。

「はあっ…はぁっ」

 息絶(いきた)()えとして森を抜け、その家を見る。


「…はっ!?」

 ムーン家は、赤い(ほのお)に包まれていた。

 救助隊によってラビットは救助されたが、家の残骸(ざんがい)からは、父と母の焦げた遺骸(いがい)が見つかったという。

 あの声は、父母(ふぼ)が途絶えかけた意識のなかで、ラビットにテレパシーを送ったものだった。


 救助されたラビットは、その後施設に保護(ほご)された。

 だが、父母が()くなったと聞いて、カウンセラーまがいの物好(ものず)きや無神経な質問を()り返す(やから)(おお)(おとづ)れた。

 ただその目からは、光が失われてゆく一方である。

「父さんと母さんのこと、記事にするから話してくれない?」「どうなの今の気持ち」「辛い?悲しい?怒ってる?」

 ラビットに無礼(ぶれい)な質問を繰り返す取材者に、彼女の心の中の何かがブチッと音を立てて千切(ちぎ)れた。

「わたくしに、近寄(ちかよ)るなァッ!!」

 ラビットは目をギッときわめて、衝撃波(しょうげきは)とともに彼らに物を投げつけた。8歳児とは思えない剣幕(けんまく)に、取材者は逃げていった。

 彼女はそれから、周りの人間から距離(きょり)()くようになり、その過去を知ろうとする者を、なりふり(かま)わず退(しりぞ)けた。



 その過去を知ったヒロトは、ラビットから目線をそらすこともなく、彼女と真剣(しんけん)に向き合っていた。

「そうか…お前も辛い過去を(あゆ)んできたんだな」

 ヒロトは、優しい声色で言った。

「無理に話させて悪かったな」

「いいえ、あなたになら別によかったなと…これで喋ってくれるんでしょう?」

「…まあな」


 ヒロトはついに腹をくくる。

 ラビットに真剣に向き直り、彼女もヒロトを見つめた。

「じゃあ、今から俺が(かた)ることは、お前にとってはにわかには信じられないことかもしれないが、どうか信じてほしい…俺がこれを伝えるのは、ここに来てお前がはじめてだ」

 ヒロトはそう言うと、自分の過去について語り出した。

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