第16話『赤い鬼神のオーラ』
ラビットは、ヒロトの赤い目を見て驚いていた。
「あなたの身に、いったい何が…!」
ラビットのようなエキスパートでさえ驚くということは、この現象には魔法は関与していないのだろう。
もしかすると、ヒロトの中にあった何かが、覚醒したのかもしれない。
北校舎の様子を眺める影も、またそれに驚愕していた。
「どうなっている…こんな筈じゃ…」
本来の彼の目的は、ヒロトが魔物のように我を失い、この学園を破壊してくれることであった。
だが、その瞳は明らかに自我を保っていた。
──ヒロトの背中から、何かが現れた。
「…!!」
廊下の壁に手をついてトカゲを睨む、廊下を塞ぐほどに巨大な鬼神。
恐ろしい姿であったが、ラビットの恐れからの震えは止まった。
「アァ…ギャァ」
トカゲの体表から汗が吹き出るとともに、ヤツの体はぴくりとも動かなくなった。
「トカゲが…あのオーラを恐れている!?」
そのとき、ヒロトは左腕で自分の制服に手をかける。
するとヒロトの背中が露になると、ラビットは目を見開いた。
「刺青…!?」
ヒロトの鍛えられた背中には、赤い鬼神の刺青があった。
「ああっ…ぐっ…ぐぉお…──」
そしてヒロトは、ない右腕に力をこめる。
するとそこに、赤いオーラが濃くまとわりついた。そのオーラが右腕の形になると、その腕は再生した。
「何…腕がっ…」
ラビットはその現象に何の理解も追い付いていなかった。
ヒロトがトカゲの方に闊歩すると、鬼神もそれに続いて歩いた。
トカゲの肌から汗が、ボタボタと溢れ出る。慎ましく鬼神から頭を下げ、黙っていた。
外の稲妻がゴロゴロと音をたてる中で、立ったまま絶命…──オニオオトカゲの最期は、静かに迎えられた。
「…」
──ドサッ…
ヒロトがそこに倒れ、鬼神のオーラは消えた。だが鬼神は消えるとき、ニヤリと笑んだ気がした。
「…!ちょっ…」
ラビットが地面を這って様子を見にくる。
呼吸はしっかりしているようで、ラビットは安心していた。
「…よかっ…た」
ラビットも、そこで意識が途絶え、倒れた。
その様子を見る影の表情は、悔しそうではあったが興味深そうであった。
「失敗か…ふっ…まあいい。いい収穫があったな…」
影はそのとき、ふっと姿をくらました。
※
その後、ガンダーら3人によって2人は発見された。
「大丈夫か…!?」
倒れる2人に驚いて駆け寄ると、彼らは呼吸もしていた。
「よかった…」
「…じゃあ、この2人を保健室へ──」
3人が2人を背負っていこうとすると、誰かがそれを止めた。
「ちょっと待った!」
「「「…?」」」
後ろを振り返り、そこにいたのは…
「あなたは…」
「その2人は預かろう☆」
学園長──リズレ=I·クラクソンであった。
「この2人…実に興味深い♡」