第14話『ヒロト大ピンチ』
ガンダーはコウとキサクを連れて、西階段を通って北校舎へと走っていた。
「危険な目に遭うかもしれないんだぞ…」
ガンダーに厳しい眼差しをむけられ怯むも、二人は強く言う。
「あいつは、俺たちの友人なんです!」
「見捨てることはできへんのです!」
真摯な瞳で断言するコウとキサクに、ガンダーは止める気も失せてしまった。
そして10分後…──3人は西階段を通り、北校舎につなぐ橋に差し掛かったはずだった。
「「「!?」」」
目の前には、衝撃の光景があった。
橋は崩れ、このままでは向こうにいけない。あちらまでの距離は12m、飛び越えることも不可能だ。
「くっ…あの場所は遠いが仕方ない。10分はかかるが、遠回りだ!」
3人は二人の無事を祈り、痛む足を忍び全速力で走った。
※
ラビットは、トカゲがヒロトの腕を必死に貪っている隙を見て、ヒロトとともに何とかその場を逃れ、廊下の一番奥へと逃げ切った。
そして、ありったけの魔力をヒロトの腕に注いで回復させた。
「(血は止まった)…うっ」
ヒロトからの出血を止めると、ラビットは頭痛に襲われる。過度な魔力消費のせいだ。
もともとここまでの出血を止めるには、高い魔法の才能と大きな消費魔力が必要である。
「(このままやり過ごせば、いずれ応援が…)」
静かに廊下の隅にうずくまり安堵するラビット。
だがそれもつかの間…──
「…」
ラビットは廊下を戻ってきたトカゲの巨大な目に睨まれる。
ヒロトの血をたどってきたのだろう。
やつはこちらに、意気揚々として突進した。
「くっ…!」
途絶えかける意識のなか、なんとかそれを紙一重で回避する。
衝突に少し怯んだトカゲだったが、ラビットは意識が朦朧としていた。
ラビットの脳裏には、これまでの過去が走馬灯のように浮かんできていた。
「…ッ」
ラビットの虚ろな目が潤んだ。
──北校舎のこの様子を、呆れたように眺める影があった。
「案外あっさりと片付いちゃったなぁ…名家の嬢も、あの男にまんまと足を引っ張られたか…」
だが、その影は閃いたようだった。
「あの男、魔法も使わずにマッドモンキーを倒してた…きっと魔力を与えたら、この学園のみんなぶっ殺してくれるかもなぁー!」
何とも物騒な物言いのそいつは、ヒロトに指を差し、おぞましい魔力を送ろうとした。
──そのときのことだった…
虚ろになる意識のなか、ラビットは目の前にあったものに目を見開いた。
「…!」
赤いオーラを纏ったヒロトが、そこに立っていた。
その状況を見る影ですら、驚いていた。
「何…あれ」
自分の望んでいたものと何かが違ったのだ。
「…何を…して」
ラビットがヒロトに声をかけると、彼は赤くい瞳孔の目で振り返っていた。