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ゲーム内で勇者でも、  作者: 新藤広釈
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その2の2の1

その2の1の1


 巨大ロボット、ランナーたちが衝突しあった。

 そして、同時に足を滑らせひっくり返った。とても戦いどころじゃない。華麗なフットワークが売りの『ランナーズ』とは思えない、無様な戦場だ。

 ランナーは空を飛ぶことができない。武器は主に銃と盾。足場さえよければアクロバティックな戦いが繰り広げられるのだが、吹雪の中でレーダーが使えず、敵か味方かもわからない状態で銃撃戦を行っている、ひどい状態だ。

「う、うわぁ!」

 〔湯豆腐〕も例にもれず雪に足を取られ、ひっくり返っていた。

 現在は総攻撃前の前哨戦。総攻撃は日曜日の昼であることが告知されており、それまで暇なプレイヤーが威力偵察も兼ね小競り合いが行われている。『自由、無言、誰でも可。誰でもOK』クラン側からすると、これだけで壊滅してしまいそうな勢いなのだが。

「こりゃ、敵も味方も戦争になってないな。レイラの助言がなかったら、撃破されてたな」

 『エインヘリヤル』より長く『ランナーズ』をやっている〔レイラ〕の助言は、始めたばかりの〔湯豆腐〕では絶対に至らなかった。

「新規パイロットには最新鋭のランナーが支給されます。まず、それを売りましょう。五年前ぐらいの型落ちランナーを中古で購入して、できる限りカスタマイズしてください。絶対必要なのはコックピットの暖房です。寒いだけならデバフで済みますが、ここだとキャラクターが死にます。足回りも大切ですが、なによりもレーダーです。最新レーダーでも吹雪きますと役に立たなくなります。ですから視認からの予想レーダーという特殊なレーダーを積んでください。次に・・・」

 さすがは古いゲーム、独自のやり方が確立されていた。こんなところで抵抗する必要もないのでアドバイスを素直に聞き入れてランナーを組み立てた。

 その結果、周辺のランナーは15mから10mぐらいだというのに、一機だけ20m以上のノッポ機体で、巨大な盾を持ってドッスンドッスンと戦うこととなった。

 しかしそのおかげでひっくり返る回数も少なく、敵味方も判断しやすい。

「よっこいしょ!」

 巨大な機体よりも、更に巨大な八角形の黒い鉄の棒を敵に叩きつけた!

 敵機は一撃で爆散する。

 いわゆるジョーク武器。このゲームにおいて剣などの接近武器は素早く振れるが、ダメージがほぼほぼない。だがこの鉄棒は動きが遅く、大ダメージを与えることができる。フットワークが売りのゲームで当てるのはほぼ無理だ。

 例えば、ランナーが倒れているという状況でなければ。

「あらよっこいしょ!」

 赤い枠で表示されている塊に再び振り下ろし、爆散した。

 隣に倒れている青色の枠で表示される塊が慌ててライフルを持ち上げるが、大きな手で制止する。

『味方だ! 撃つなよ!』

『あ、ああ! すまない!』

 外部に向けて喋るスピーカーで声を掛け合う。

 再び吹雪の中にドッスンドッスンと進み、赤い枠の塊に鉄棒を振り下ろす。

『ま、待て! 俺は味方だ!』

『お前は敵だよ!』

 隣で爆散した仲間を見て怯えた声を上げた赤い枠の塊に、無慈悲に鉄棒を振り下ろした。

「このぐらい、敵と味方が分かりやすかったらいいのにな」

 そう思いながら、歩みを進めた


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