その1の2
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戦略シミュレーションゲーム『エインヘリヤル』は評価こそ低いが、他にないゲーム性のおかげで根強い人気を維持している。
1万人が参加できる広大なマップで国家を作り天下統一を目指す。
プレイヤーはまず軍団を操り戦争を繰り返し、規模が大きくなってきたら国家を作ることができ、天下統一を目指すという流れになる。国を作るのが面倒だとか、軍団を操り常に前線でいたいというプレイヤーは別プレイヤーが建国した国に所属することもできる。
ここまでならよくあるゲームなのだが、このゲームの特徴でもあり批評を受けることになる戦闘が一般的じゃなかった。
軍団と軍団がぶつかり合い、戦いになるのだが、プレイヤー同士連絡が取れない。マップの把握しているのは総大将という役職のプレイヤーだけで、総大将が個別にプレイヤーに地形の情報やどう行動するのかを指示しなければいけなかった。
そう、総大将の負担が重いのだ。
周辺調査のためとはいえ敵陣に突貫させられ壊滅して、あなたは許せるだろうか? 敵の罠と知りながら森の中へと進めるだろうか? あと少しで敵が倒せるのに撤退命令に従えるだろうか?
総大将の命令は絶対ではない。命令は受けるが軍団を操るプレイヤーが指示に従うか否かは任されている。新人総大将の命令に従わず、軍隊が勝手に行動して勝利してしまうこともよくあるのだ。
それこそこのゲーム、『エインヘリヤル』の面白いところなのだが、プレイヤー同士ケンカになってしまうものだ。国家内でもギスギスしてゲームどころじゃない。
こうして一般人の数は減っていき、他にないゲーム性を好んでくれるゲーマーだけが残る結果となった。コアなゲーム性を楽しむ国家ばかりが連立し、初心者お断りのシビアな戦場が広がっていた。とても天下統一など不可能な状態だった。
そんな中で、一人のプレイヤーが天下統一を成し遂げたのだ。
なぜか勝ててしまう、不思議な君主〔納豆巻き〕。初期スキンの白騎士姿の彼が指揮する戦いは、どういうわけか勝利する。
数が圧倒的に負けているのに、気づけば相手が壊滅している。命令に従わず海岸線を進んでいると敵の中枢部を奇襲していた。右も左もわからない新人プレイヤーに軍隊の主力を担わせると、驚くほどの大成果を上げるなど、都合がいい状況が何度も起きてしまう。
初めこそ幸運の人物だと思われていたが、それが毎度続けば何かおかしいことに気が付く。それで勝利し続ければ、大国になれば、これは違うぞと気づき始める。人々が震え始め、そして当然のように天下統一してしまえば、それは伝説の始まりだ。
現在名だたるシミュレーションゲーム猛者が『エインヘリヤル』に参加し、〔納豆巻き〕に戦いを挑んでいる。それらをちぎっては投げちぎっては投げを繰り返していた。
そう、伝説は続いていた。