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ゲーム内で勇者でも、  作者: 新藤広釈
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その4の3


 その4の3


 丸太小屋風の喫茶店に入り、涼華はコーヒーだけを頼んで外を眺めていた。

 どう見ても、彼女は楽しんでいるようには見えない。

 あわよくば好感度を上げて、もしかして恋人になれるかも! なんて妄想をしていたのだが、最低ラインのいいお友達すら危険水域になってきた。

 紅茶を飲みながら、〔納豆巻き〕は頭をフル回転させ、ネットで調べた知識を総動員させていく。

「宮島さん、僕の我儘に付き合ってくれてありがとうございます」

 1.性格を褒める。

 性格を褒められて嫌な人なんて男女関係なくいない。しかし漠然と「性格がいいですね」なんて言われても胡散臭いだけなので注意しましょう。

「はは、僕都会育ちだから、人が多くてテンション上がっちゃったみたいです。本当は竹原たちを待っていたかったと思うのに、本当にありがとうございました」

 2.容姿を褒める。

 髪が綺麗ですね、肌が綺麗ですね、綺麗なネイルですね、など細かい箇所を褒める。正直男子にとって、これが一番の難関だ。

 男同士で容姿を褒め合うとう器官は存在しない。「竹原、今日は髪型決まってるね。その黒い肌は憧れるよ」なんて、虫唾が走ってしまう。

「所作が、本当に綺麗だよね」

 思わずポロリと口にしてしまった、そんな風を装い慌てふためく芝居をして見せる。

「な、なに言ってるんだろうね。なんだか気が付くと目で追っちゃて。ああ、これも変なことだね。その、今日一緒に回れてうれしいよ」

 正直、これで背いっぱい。

 3.優しい言葉をかけて・・・

「私の、なにを知っているというのですか」

 冷ややかな口調だった。

「新広くん、私のことが好きなんでしょう?」

 涼華は、綺麗な顔を醜く歪ませながら笑みを浮かべた。

「きっと宗像くんは、今頃オンちゃんに告白しているんでしょね。新広くんは宗像くんに頼まれて私を連れだしたのかしら?」

「ちっ、ちがう!」

 冷や汗が滲ませながら否定した。

「よく気づく女は嫌いですか? 可愛げがありませんよね。私も嫌いです。私は、私が嫌いです」

「どうして、そんな・・・」

「宗像くんと、新広くんは親友ですよね」

 言葉を詰まらせていると、涼華は小さく頷く。

「羨ましい。妬ましいというべきでしょうか。私にはそのような友人はいません」

「鳳梨さんがいるじゃないか」

「私のことを何も知らないくせに!」

 ヒステリックな声が喫茶店に響いた。

「私が彼女に何をしているか知っているのですか? 彼女に対して、私は決して許されないことをしている。どうしようもない、自分が抑えられない」

 苦し気に胸を押さえるが、その瞳は爛々と輝いていた。

「優しくて、善良で、清らかな、新広くんには私は相応しくありません」

「ま、まって、僕はそんなんじゃ・・・」

 涼華は立ち上がると、プレゼントしたスティックをテーブルに置いた。止めようと立ち上がる久留亜に対し、彼女は露骨に顔を顰めて見せた。

「胸糞が悪い、そう言わなければいけませんか?」

 そう言って、コーヒー代を払って喫茶店から出て行った。


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