彼の姉は弟を嫌っている。
「作戦ってなんなんだ?」
「これを作戦って言っていいかはわからないわ。
どちらかといえば応急処置ね。まず私も完璧な作戦を考えようとしたわ。そこで一番重要なのが霧間くんがどういう意味で彼女を好きなのかということなの。」
それは俺も真っ先に考えた。もし霧間が相崎と付き合っているという事実だけが欲しいなら告白して振られるというのはプライドが許さないだろう。だがあいつは答えを待っている。これが示すことは事実が欲しいだけではなく相崎に少しでも好意を抱いてるということだ。
「私は彼は相崎さんのことを好きなんだと思うわ。
少なくともアクセサリーとして見ているとは思えないの。だったら告白して振られても相崎さんを陥れる事はしないと最初は思ったわ。」
「それは違うと思う。あいつは多分だが振られた後自分だけのせいにするんじゃなくて、相崎のせいにもすると思う。」
「私もそう思うわ。だから作戦を立てるのがすごい難しいの。でもね作戦じゃなくても応急処置ならできるわ。」
「ん?ああ…そういうことか。わかったよ。でもそれを決行する力と信頼が俺らにあるのか?」
「それはわからない。でも信じてみましょ。じゃないと何も出来ないもの。」
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「じゃあね立花くん。お邪魔しました。」
「おう。」
「また来てくださいね!」
藤野は美来に笑いかけ、手を振り帰っていった。
すぐ後にドアを開ける音がする。
なんだ?藤野が忘れ物でもしたのか?
ドアから入ってきた人は今一番会いたく無いと言っても過言じゃ無い人だった。姉だ。
「ね、姉さん。おかえり。」
「何その口調。別に無理して話しかけなくていいから。」
「ちょっとお姉ちゃんひどいんじゃない?」
「何美来その男の肩を持つの?」
実の兄弟だぞ。多分姉のその男という表現には俺となるべく距離を取りたいという意味が込められているのだろう。
「ていうか、今女の子が出て行ったけど、あんた家に呼んだの?」
「ああ、何か悪いか?」
「あんた中学のころあんなことしといて自分は幸せに女の子と遊んでるの?それって無責任だと思わない?」
「それは…まず、中学の頃のあれは!」
「言い訳なんか聞きたくないわよ。」
この姉は俺のいうことを真剣に聞こうとしない。
いつも自分の考えを俺に当てはめ、それで勝手に俺を判断する。それが正しい事実に基づいている評価かなんかどうだっていいんだ。姉は自分の思い通りに人が動いてくれればそれでいいのだろう。
「ねえ、お姉ちゃん流石に酷すぎる。お姉ちゃんはいつもお兄ちゃんの話を聞こうとしないで、それで勝手に批判して。なんでお兄ちゃんには幸せになる権利がないの?なんでお兄ちゃんだけ幸せを拒まなきゃいけないの?そんなのおかしい。私はお兄ちゃんには幸せに笑顔に日々を過ごして欲しいと思ってる。だって血の繋がった兄弟だから。」
「おい、美来お前の気持ちは嬉しいがその辺にしといてくれ。姉さんの俺に対する態度はいつもこんな感じだろ?だから慣れてんだ。」
姉は流石に実の妹に説教されたのが聞いたのか大人しくしていた。でも顔は何かを言いたそうで、きっと妹がいない環境だと絶対に言っていた俺に対する罵倒を抑え込んでいた。
「ねえ、美来あなたは今実の兄弟と言ったわね。もちろん私は最初は友喜を信用していたわ。でもねその信頼が大きければ大きいほど裏切られた時に憎しみに変わりやすいの。そしてあの事件以来私の友嬉への信頼は憎しみに嫌悪感に変わったわ。だからいつだって信頼なんて無責任で絶対に普遍的では無いものなのよ。」
姉は自分の部屋に戻っていった。少しして美来も自分の部屋に戻った。一人広いリビングの中姉の信頼への持論を何度も頭の中で再生して間違いを探した。
でも彼女の言葉はとても正しくそれでいて少し寂しそうだった。




