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彼の頭の良さは恐怖を与える。

「ただいま。」

藤野の話を聞いたあと俺は打開策を考えながらまっすぐ家に帰った。家に人はいるはずなのに、おかえりの声が聞こえない。あの事件以来家に俺の居場所はない。


「お帰りお兄ちゃん!」


いや違うか。一応俺にも居場所はある。この妹美来が優しくしてくれる。


「おー、みらい。ただいま。」

「どしたのお兄ちゃん。すごい疲れてるじゃん。」

「いやいや。いろいろあったもので。」

「まあいいけどさ。ご飯机の上に置いてあるってママが言ってたよ。」

「また母さんと姉さんは先に食べたのか。」

「うん。でも私は我慢してたから。一緒に食べよ!」


やばいこの子優しすぎ。それにかわいすぎ。

ここ最近は母さんと姉さんと一緒にご飯を食べていない。そらどころでもなく、まずあまり会話をしていない。


「ほらお兄ちゃんご飯温めなおすから持ってきて。」

「ああ今やるよ。」


今日学校での収穫は桐谷は特に理由もなくただいじめたいという思いによっていじめられていると言うこと。


確かに藤野が言ってた通りいじめというのにいつも明確な理由があるとは限らない。だけど理由もなしに二ヶ月もいじめられてるなんて、そんなの最悪だ。


「どしたのお兄ちゃん怖い顔して。」

「いや大したことじゃないんだ。」


だがもうやることは決まっている。これは桐谷の相談を受けた時からもう決まっていた。理由にこだわったのは作戦を確実にするためだ。


「本当に大したことじゃないんだよ。」

「ならいいんだけど。」


霧間のいじめをやめさせることくらい簡単だ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

立花くんは、理不尽な理由を聞いたあと少し落ち込んだような顔で帰っていった。さっき私が言ったことは多分正しい。いじめにいつも理由があるとは限らない。


ここ数日立花くんに目立った行動はなかった。理由がないことを聞いて諦めてしまったのか。彼は本当になんの行動も起こさなかった。


だけどそれは違った。彼のおかげで桐谷くんへのいじめは終わることとなる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




俺は朝早くに学校に来て作戦の準備をし終えた。

あとは霧間を待つだけだ。廊下から騒がしい声が聞こえる。多分霧間のグループが来たのだろう。

やっぱりそうだ。霧間を先頭として教室の中に入ってくる。俺はすかさず先頭の霧間に写真を渡した。


「何だよこれ。」

「何これ。」

「おい、立花お前がやったのか⁉︎」


霧間達は驚愕の表情を浮かべている。


「ああそうさ。この写真全て俺が用意した。」


そう俺がしたのは、霧間達が桐谷の文房具に細工をしているのを撮った写真をコピーしたのだ。そしてそれは破かれないように何十枚にも及ぶ。コピー代やばかったんだからな!


「なあ霧間ここに写ってるのお前だよな。そしてこれは桐谷の文房具だ。お前は何しているのかな?」

「これはただ桐谷の文房具を触っているだけだ。もし壊していると言いたいなら証拠を出せ。」


乗ってきた。ここからが本番だ。


「なあ人に気付かれず写真を何枚も取るなんてできると思うか?まあ出来るかもしれないがそんなリスクがあること俺はしねぇよ。」

「どういうことだ。」

「バカにもわかるように説明してやるよ。前のテレビを見ろ。」


俺は授業の際時々使うテレビを見るように促した。

徐々に霧間達以外の奴らも集まって来て、ほとんどの人がテレビを注目した時を見計らって俺はテレビに映像を写した。それは霧間が桐谷の文房具を壊している動画だった。


「俺は写真じゃない。動画を撮っていたんだ。その写真は動画を止めてそれをコピーしたものに過ぎない。

これは十分証拠だよな。」

「つっ…うるせぇな。少し壊しただけだろ。ぼっちがしゃしゃってんじゃねぇよ。」

「醜いな。証拠を出せと言って本当に証拠を出されて言い逃れができなくなった人間は。だっせ。」

「何だと!」


これだけだとまだ足りない。明確な理由がなかった以上この教室全体の空気を変えないといじめは時間を置いて再発してしまう。


「おいお前らいじめをしたとしてもこうやって糾弾されるんだ。今から俺はこれを教師にいじめの証拠として提出しようと思う。」

「それだけはやめてくれ。頼む。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私が学校に来た時にはもう立花くんが霧間くんを言い負かした後だった。そして私は改めて立花くんが頭がいいのだと思った。彼は霧間くんが醜く言い訳をして教師に言われるのを逃れようとしているのを多くの人に見せたのだ。そうすることで霧間くんは絶対的存在ではないのだと言うことを示したとともに、絶対的存在だと思われていた人でさえ立花友喜の前では弱者に成り下がることを示したのだ。これでクラスの中のいじめは立花くんを恐れる形で終わりを迎えるだろう。

なによりも霧間くんを言い負かしている立花くんの顔はとても恐ろしかった。そして彼は仲間には優しく敵には恐ろしく怖い人だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「あの。立花くん。ありがとう僕のために。」

「どうってことないさ。困った時はお互い様だろ。」


やばい。桐谷に礼を言われるのがとてつもなく嬉しい!


「本当にすごかったわね。」

「なんだ藤野改めて俺を尊敬したか?」

「尊敬はしてないわよ。改めて頭がいいことには気づいたけど。」


こいつ意外に素直なところあるんだな。


「約束忘れてないでしょうね?」

「ああ、日本史を教えるんだろ。構わないさ。」


「あのぉ、立花くん。」

声がする方を向いてみる。そこには黒髪ロングの可愛らしい女の子が立っていた。


「何か?」


なんかすごいもじもじしてるんだけど。何、期待させないでよ。


「さっきの立花くんの見て、すごいかっこいいと思いました。私にも自分の意見をしっかり言える強さをください。」

「くださいと言われても、あげられるもんじゃ。」

「いえいえ、アドバイスをしてくださいって意味で。」

「それは構わないが、何故いきなり?」


「私霧間くんから告白されたんです。でも断りたくて。」


一難去ってまた一難とはこのことか。












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