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人間界にあり忠実に本人を表すものそれは鏡だ。

鏡に映る自分の姿は左右対称とはいえ本物である。

人はそれを見て安堵したり失望したりする。

鏡には手鏡や全身を映せる鏡など色々あるわけだが

それはどれも表面状のものだ。


鏡が映すのはいつも外見だけであり内面は映さない。

なら内面は何が映してくれるのか。

そんなものはない。ないのが正しいのだろう。


似たような境遇にいる人を自分に重ねることは傲慢である。鏡を見る前に抱くのはいつも理想で見たあとは現実である。


もし他人を自分に重ねるのならそれは理想を押し付けているのと同じである。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

俺は柏木の後をストーカーのようにつけ水野の家に辿り着いた。我ながらきもい。


でもこれインターホン押せないよな。なんて言えばいいんだ。


どうして家が分かったの?

柏木をつけてきたんだ。


キモすぎる。やばいだろそんなの。

門前払いを食らう可能性もある。



いやここまできたんだ。ここで躊躇ってどうする。

勇気を出せ俺!


心の中で葛藤を繰り広げながらもインターホンに手を伸ばした。


インターホンの音が自分の家と同じだというどうでもいいことを思いながら反応を待つ。


手汗で手がベタベタになっているだろう。


「はーい。あらどなた?」


インターホンからは知らない人の声がした。

多分水野の母親だろう。

水野が出てくれると思ったがそんなに甘くはないらしい。


「あ…あの、水野さんと同じクラスのものです。

水野さんが休んでいた分のプリントを届けに来ました。」


少しぎこちないがまあましな紹介だとは思う。


「愛菜ー。お友達が来てるわよ。名前?ちょっと待って

あのー、お名前は?」


全て丸聞こえな家族会話を聞き名前を言い忘れたことに気がついた。


「立花です。」

「立花さんね。今開けますから待っててね。」


そう言った三十秒後くらいにドアは開いた。

中から水野と何処と無く雰囲気が似ている女の人が出てきた。


「来てくれてありがとうね立花くん。

愛菜は二階の部屋にいるから。後でお菓子とか持って行くわね。」

「あ…お邪魔します。」


そう言われ階段を上がり愛菜というプレートが貼ってある部屋を発見しノックした。


部屋の中から


「はーい。入っていいよ。」


という声がし人生ではじめての女子の部屋に足を踏み入れた。


「入るぞ。よお。」

「うん。プリントだっけ?ありがとう。」


部屋の中は人形が数体置いてあり綺麗に整頓されている女子らしい部屋だった。


ベットが部屋の端っこにあり、その上にラフな格好で座っている水野がいた。

学校の時とは違い可愛らしかった。


「ああ。休んだ日順になってるから。

授業は大して進んでない。まだ難しい単元に入ってないしな。まあ最悪俺が教えてやるよ。」

「おお頼もしいね。」

「ああ…」


いまいち本題への入り方が分からない。

意味のない会話を繰り広げても水野からしたら何でいるのだろうと不思議に思うだろうし、本題を切り出すハードルも上がってしまう。


ここは勇気を出した方がいいのだろうか。


「で?これだけじゃないんでしょ?

ていうかよく私の家わかったね。」

「ん?ああ…それは色々あってな。

まあ先生が教えてくれたよ。」


嘘をついてしまった。まあ正直に言って引かれるよりはマシだろう。


「で、本題なんだがな、お前最近休みだしただろ?

しかもクラスに馴染みにくくなってから。

だから心の病的なやつかなと気になったんだ。」


水野は気難しい顔をした。

まるで触れて欲しくなかったものに触れられたような。


「うん。それはね。たしかに行きづらくなったっていうのは本当だよ。でもねそれだけが原因じゃないの。

私ね部活を休んでいる理由は目なの。

目が少しよくなくてプールの水とかは目に悪いから

医者に止められてて、でその症状が最近悪化して。」

「大丈夫なのかよ。」

「うん。学校も休んで大人しく寝てたし大丈夫。

明日にはいけると思う。行きたくはないけど。」


てっきり水野が面倒くさいから部活を休んでいると思っていたがそうではなかったんだな。

水野は本当に水泳が好きなのだろう。でないとチームを全国に連れて行くなんて無理だ。

本当に好きな水泳を目の病気のせいでできないなんて。

確かに辛い。辛すぎる。

なのにクラスメイトはサボりだと言って辛く当たってくる。そんなの最悪じゃないか。


「それは柏木には話したのか?」

「話してない。」

「そりゃそうだよな。話しててあんなこと言ってくるなんてどんだけ最悪なんだって感じだよな。

でもなんで?俺には言えるんだ話せばいいんじゃないか?」


何を言っているんだ俺は。落ち着けよ。


「話したら柏木も分かってくれると思うし今の状態より良くなるんじゃないか?そしたら目が良くなってから楽しく水泳もできると思うし。」


俺が言いたいのはこんなことじゃないだろ。

無責任にもほどがある。大して本人の気持ちを汲み取らないでこんなことを言うなんて。


「だからさ話してみた…」


「勝手なこと言わないで!私の気持ち大して分からないのにそんなこと言わないで!私だって悩んだよ。言おう言おうってそう思ったよ。でも言えないの。どんな顔されるんだろうって同情されたら嫌だなって思って言えなかったの。それで現実逃避のためにゲームセンターとかにも通うようになってでも水泳の楽しさを補える程のものではなくてどんどん空っぽになって行く私が惨めで悔しくて、でもどうにもなんなくて。本当に本当に嫌だった。そんな私を御構い無しに目はどんどん悪くなって生活に支障はないから良かったねなんて家族は言うけど全然よくない。私は凄く悲しいのに。ねえ立花…何でもわかってるふりしないで。」


水野の怒りは爆発した。泣きながら。

いや俺がさせたんだ。

俺の無責任な最低な言葉で水野という女の子の心をズタズタにしそして泣かせた。

彼女がチームを全国に連れていった努力を俺は自分の推測でしか知らない。

多分俺の推測を遥かに超えるほどにとてつもない努力なのだろう。

その努力も分かってないのに辛さは分かる?

分かるわけないだろ。なのに何で俺はあんなことを…


そうか俺は自分を水野に重ねていたんだ。

中学生の頃誰も俺のことを信じてくれないで

迫害された俺を。

水野を俺に見立てて過去のやり直しをしようとしていたんだ。

それが俺が水野にしつこく助けになりたいといった理由だ。最初から自分勝手に水野の助けになりたいと言った。まずそれが間違いだった。


間違いを重ね続け今それが崩壊した。


ここで諦めるのか?

それこそ無責任じゃないか…

俺は全て謝るべきだ。自分思っていたこと全て伝えるべきだ。それをするのが俺のせめてもの罪滅ぼしなのだから。


「なあ水野聞いてくれないか。俺の全てを…」


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