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好きなことができない理由

「水野さーん。水野愛菜さん。次どうぞ。」


私を呼ぶ声が聞こえる。不安に胸を詰まらせた私に今何かを深く考える余裕はない。その不安を消し去ってくれるか、増やすかはこの後次第だ。


「失礼します。こんにちは。」

「水野愛菜さんですね。座ってください。どのような症状でこられたのですか?」

「何か目に違和感があるんです。何かが動いているような。それで時々意味もなく涙が出てくることがあるんです。」


全国大会予選してからか少し体の調子が悪い。最初は負けたせいで精神的な辛さから身体に異常があるのかと思ったがそれにしては症状が重い。その症状のままプールに入った日とても目が痛くなった。


「水野さん部活などはやってますか?」

「はい…水泳部です。」


担当してくれている医師は少し申し訳なさそうな顔になった。その表情を見た時私の中にある不安は倍増した。まるで私の心を締めつけるかのように…


「水野さんの症状から考えて結膜炎でしょう。多分重症だと思われます。これからは目薬などで治療していきますがしばらくの間部活には出ないでください。症状を悪化させることになりますから。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そのあとどうやって家に帰ったかは覚えていない。私は本当に水泳が大好きだった。小学生の頃に始めた水泳は水の中はとても気持ちよくて新記録が出るたびに親に自信満々に伝え褒められて喜んでた。中学校に入っても部活に励んで同じ熱を持った人達と腕を競いあった。それで全国大会にも出られるようになって…なって…


なのに…なんでよ…なんで私から大好きな水泳を奪うの…


私は現実と向き合うことができなかった。しばらくの間無断で部活を休んだ。もし理由を伝えたら誰もが私に同情するから。同情されたらもう自覚するしかないから。私は辛い現実から目をそらしているだけ、そんなのは分かっている。でも…それでも…私は辛いことと向き合えない。

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