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水野が俺を彼氏にだと言ったせいで、その後のクラスの雰囲気は最低だった。勿論水野と喧嘩していた咲という女の子は不機嫌そうだった。それに加えて霧間も不機嫌な様子で、そのせいで他の人たちもぎこちなかった。御構い無しに授業は進み休み時間は過ぎ、そして昼休みに突入した。昼休みの前に藤野からは本当に彼氏なのか問いただされ水野が部活をサボっている理由などを包み隠さず話した。藤野は水野がついた嘘だと割り切り信じてくれた。


「ねえ、友喜少しいい?」


俺が弁当を広げ具材が冷凍食品ばかりで少し落ち込んでいるところに相崎はやってきた。小さな声で俺に呼びかけ何かを話したそうにしている。周りの人にその声は聞こえないほど小さかった。俺の前でご飯を食べている桐谷でさえ気づいていない。何だかんだ言って桐谷とは毎回飯食ってるし仲良いな。これが友達ってやつかって今はそんなのいいか。


俺は教室から出て行く相崎の後を追い静かにドアをくぐり抜けた。あまり人気のないところまで進んだ相崎はこちらを振り返ってきた。


「ねえ、クラスの子が言ってたんだけどさ、友喜と水野さんが付き合ってるって本当なの?」

「いやいや全くもって嘘だよ。まあ色々あってそういう噂が広まってるだけさ。」

「よかった…」

「なんか言ったか?」


相崎が小さな声で何かを言った気がしたが声が小さくよくわからない。もしかしたら何も言ってないのかもしれないし追求するのも面倒なんで聞き流そう。


「噂が広まった原因も知ってるよ。水野さんが柏木さんに友喜が彼氏だって言ったんでしょう?」


咲って苗字柏木っていうのか。これで名前呼びをやめられる。てか名前呼びとかリア充の証拠だろ。てことは俺リア充?いやリア充は心の中だけでなく本人の前でも使うか…


「その通りだ。だからその話は嘘だし、俺も何で水野がそんなこと言い出したのかもわからない。」

「だよね。私も半信半疑だったんだけど、嘘なら何で水野さんがそんなこと言ったのかがわからないの。」


俺と水野は一回話しただけで大して仲は良くなかったはずだ。悪いわけでもない、普通って感じだ。なのにいきなり恋人だのよくわからん。水野の頭が少し残念ってことで片付けるのは簡単だが、そんなわけないしな。


「本人に聞いてみるしかないのかな…」

「え⁉︎友喜も知らないの?てっきりあの後二人で色々話したのかと。」

「いやあの後俺と水野は一言も喋ってない。水野は教室に一人で大人しくいたし、声をかけるのも面倒だったしな。」



あのあと水野が人と接しているのを見ていない。まるでいつかの俺のように静かに寂しそうにクラスの中にいた。


「そうなんだ…まあ私が言うことじゃないんだけどさ水野さん何か悩みがあると思うんだ。だから少し面倒でも聞いてあげて。私が聞くのじゃ多分意味がないと思うから、友喜が悩みを聞いてあげて。」

「わかった。すぐにとは言わなくても悩みがあるか位聞いとくよ。俺もなんかスッキリしないしな。」


乗りかかった船だ。いやまだ乗りかかってすらいないか。でも水野が抱えている問題は気にならないわけではない。ただの野次馬だけれども水野が俺を巻き込む嘘をついたということは彼女なりの救助要請だったのではないか?ただの考え過ぎかもしれない、でも確認する価値はある。


「じゃあもう腹減ったし話は終わりでいいか?」

「…うん。」


俺は教室に戻り弁当に詰め込まれた冷凍食品を食す。少し冷えた具材は本来の旨味を出せてなくあまり美味しくない。


自分の心情も加わり大して味を感じることのできない弁当をたいらげ、俺は水野の元へ向かった。水野の方へ向かう途中クラスの人達は噂をするかのように友達と固まりこちらへ好奇な視線を送ってきた。クラスが少し静かになり目線に刺されるのは居心地が悪い。水野を通り過ぎて最初から水野に話しかけるつもりなどなかったかのように立ち去るのは楽だろう。でもそれだと何も解決しない。だから俺はここで勇気を出さなくてはならない。


俺が水野の肩を叩き呼びかけた時振り向いた水野の顔は待っていたかのように微笑んだ。でもその顔はどこか悲しそうな瞳のせいで作り笑いなのが丸見えだった。

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