彼女はもう泳げない
「今日させっかくだからいつものカフェ寄ってかない?」
「え?別にいいけどさ…あの二人はいいのかよ?」
「うん。多分あの子達は大して止めないと思うから。」
相崎はやはり告白の件でクラスの中での立場を失ったのだろう。でも今はそれを皆が表に出していない、だから相崎もまだそこまで悩まないでいられる。でも薄々気づいているのだろう。
「何か久しぶりだね。そこまで時間は経ってないはずだけど。」
「ん?ああ…そうだ!藤野を置いてきたんだ。藤野も誘わないか?」
「藤野さんいるんだ…いいよ。じゃあ私教室からバッグ取ってくるから藤野さんを呼んできてくれる?」
何だこいつ実は藤野が嫌いとかそう言う関係?嘘…女子怖い
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「ねえ相崎さん少しいいかしら?」
「え⁉︎藤野さん久しぶりだね…どうしたの?」
少し驚いた。私は友喜と告白の件があったからそのせいで藤野さんとも桐谷くんとも関係が切れた。だから急に話しかけられて驚いた。
「どうしたの…」
「あなたは何でこんな状況になってるか分かる?」
「それは…友喜が私を馬鹿にしたからで…」
それが全ての理由ではないことは分かっている。でも私もよくわかっていない。喧嘩なんてそんなもんだと思ってる。何が原因なのか分からなくても喧嘩は起こるし理由を考えても明確にはわからない。そんなものだと私は思う。だから確実に喧嘩の起点にあったことを挙げるしかなかった。
「あなたは立花くんが悪いと言いたいのね。たしかに彼は悪いわ。あなたのことをあんな形で馬鹿にしたのだもの。でもそれが本心じゃないことなんてあなたは分かるでしょ?」
「うん…」
「だったら一番悪いのは誰?勿論あなたでもないわ。悪いのはこのクラスの空気。でも空気は人じゃないからそんな事言っても仕方ない。ならその空気を作り出したのは誰なの?霧間くんよ。」
そんなのわかってる。友喜に選択を強いたのは霧間くんだ?だかは霧間くんが一番悪い。そんなのわかってる。なら何で私は悪いと思っている方と仲良くしている。
「何であなたは悪いと思っている方と仲良くしているの?」
痛いところをつかれた。理由なんてわかってる。私が弱いからだ…
「あなたが弱いから。そうでしょ。」
「つっ…」
「ねえ。もしあなたが自分のしている行為に違和感を感じているのならあなたからでなくてもいい、立花くんから仲直りを申し込まれたらそれに応じるべきよ。」
立花が相崎に仲直りを申し込むのはこの二日後の話である。
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「おーい!藤野!聞こえてないのか…」
さっき藤野と話した場所にいたのだが遠くから呼びかけても応えない。俺の声が小さいのかあいつの耳が悪いのかは分からないが走って呼びに行かないといけない。めんどくさ!
「おい、藤野。仲直りには成功したよ。いや仲直りのスタートラインに立てた。で、そのお祝いでカフェに行くことになったんだがお前も行かないか?」
「あ!ごめんなさい。今日は勉強をしなきゃ。ていうかあなた模試が四日後ってことに気づいてるの?余裕ね。」
そうだった!模試は四日後。俺の全国模試一位の連覇がかかっているんだ本気を出さなければ!でもせっかく相崎と仲直りできそうなのに…
おい!俺!せっかくの友達復活のチャンスなんだぞ!
「まあ。カフェに行った分違うところで補うさ。」
「まああなたの勝手だけど。」
「ごめんな相崎、藤野はいけないらしい。」
「大丈夫だよ。じゃあ早速行こうか。」
何度か来たカフェへの道。でもなぜだろう懐かしいようなそんな感覚に襲われる。今この瞬間が幸せだとそう感じられる。
「ここゲームセンター今日オープンらしいよ。寄ってかない?」
「ゲームセンターあんま行ったことないんだよな。まあ寄ってくか。」
ゲームセンターの中はさっきの風の音が聞こえる爽やかな道のりとは違く、五月蝿く耳に触るような音楽が鳴り響いていた。次第にそれにも慣れ置いてあるゲームに興味が湧いてきたとき相崎は少し驚いた顔をしている。相崎の目線の先には俺らと同じ制服を着た少女が熱心に格闘ゲームに励んでいた。
「あの子がどしたんだ?お前驚いた顔で見てるけど。」
「あの子ね。水野愛菜ちゃんって言うんだけど。水泳部なの。しかも、全国に連れてったエース。」
「別に水泳部だってゲームセンターくらい来るだろ。」
「私もねそれだけだったら驚かないの。でもね水泳部の練習は日曜日以外毎日なの。」
「今日は…水曜日だな…」
水野愛菜は練習のはずだ…




