シースルーな父ちゃん
目に涙を一杯溜めたかあちゃんが
「アー君..ぐすっ...ぱぁぱが..ぐすっダメって..言うのぉ〜」わ〜〜んとかあちゃんが泣き出す
あたふたと慌ててる父ちゃん
「ケビンボスヲナカスナ!」
ポチがかあちゃんを父ちゃんが虐めていると思ったのか父ちゃんに飛び掛かる
父ちゃんは身体を覆っていたローブをポチに剥ぎ取られる
現れたのは父ちゃんでは無く漆黒の骸骨
ローブを剥ぎ取ったポチは光の速さで腹を向け服従のポーズを取りながら漏らしていた
「え?」
訳が分からない父ちゃんだと思っていたローブ姿は前世の小学校理科室で見た人体模型によく似ていた
違いは色々とあるんだけど....
「あちゃ〜」
手で顔を隠して呻くかあちゃん
一方骸骨はただ呆然と立ち尽くしていた
敵意は無く何となくだが、この骸骨は父ちゃん何だと感じさせる。一つ一つの仕草やかあちゃんとのやりとりは小さな時から見て来たので間違いない
問題は何故こんな姿になったのか?
「父ちゃん、何でこんな姿に?」
俺の問い掛けに呆然としていた骸骨父ちゃんは自分を取り戻したのか慌ててローブを頭から被る
いやいや、もう遅いでしょ。ばっちり見たから
「かあちゃん、どう言うことなの?」
何故か、実の父親が骸骨になっているのに動揺する事も無い。分かっているんだ、かあちゃんが原因だと
「いや、話せば長くなるんだけどね〜えへへ」
かあちゃんが語った理由は、山に転移門が現れ、それの調査をしていたら、古代龍が門から顔だけを出してブレスで父ちゃんを消し去ったらしい
「うん?父ちゃんは死んだの?」
「え?いや〜まぁほら、う〜んとなんて言うの?あれえ〜っと」
「呪い?掛けてたの??」
俺はジト目になりながらもかあちゃんを問い詰める
「いや、呪い?というよりも加護?かな??」
かあちゃんは両手の人差し指を合わせながらモジモジと答える
「で?父ちゃんは骸骨に?」
「いや、それはまた違う話なんだけど.......
父ちゃんがブレスに消されてから....
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ぱぱぁーーーーー!!!!!」
「フハハ我ノブレスヲ人間如キガ防グ事ナド出来ルモノカ!」
古代龍の放ったブレスはケビンと貴族をこの世から消し去った
「許さない!たかが蜥蜴の分際で!【空間固定】絶対に許さない!」
「グ!貴様!魔女ナノカ!我ヲ捕縛スルナド良イ度胸ヲシテオル!望ミ通リ貴様モ我ガブレスデ消エサルガイイ!!」
「大きいだけの蜥蜴が!幾億の光の矢よその姿を拳に変えて醜い蜥蜴を嬲れ【神をも穿つ刃】」
怒りに我を忘れたトゥルーの背後に眩い太陽が顕現された
古代龍のブレスを免れた兵士は腰を抜かし、信じられない光景を目の当たりにする
彼等にとって厄災とも言えるワイバーンよりも大きな頭。漆黒の金属の様な鱗に覆われた古代龍、その牙は透き通るほど白く兵士たちの恐怖を煽り、こちらに向けられる瞳は紅く輝いている
そんな、この世の全てを諦めざるを得ない環境のなか、兵士たちの目の前では、夫を失った女性の背後から光が古代龍へと流れていた
あまりの速さに一つ一つが拳の形を作っているとは見えず光の波が古代龍の顔を上下左右に吹き飛ばしていた
まさに一方的に、古代龍の顔からは鱗が剥げ落ち牙が折られ、至る所から血が流れていた
フルボッコである
やがて、背後の光が全て古代龍へと向かい惨劇は終焉を迎える
「どう?偉そうな蜥蜴ちゃん?まだ何か言うことあるの?」
黄緑の髪の毛をした女性は腰に手を当てながら見た目にそぐわない高圧的な態度で古代龍へと問いかける
「タ、助ケテ.....」
「だめよ!だーめ!ぱぱにあんなことしたんだから!アンタはこのまま此処で剥製になるの」
「ヒィ!」
顔の鱗を全て剥がされ牙も全て折られた古代龍は情け無い声を上げてガタガタと震えている
「あ!そうだ、そうだ!ぱぱを蘇生しなきゃ!」
腰を抜かしへたり込んでいた兵士の耳にはっきりと蘇生と聞こえてきた。
兵士は震えて力の入らない体で這いずりながら
「すいません、貴女は蘇生魔法が使えるのですか?」
蘇生魔法は極極一部の神官が行使出来る魔法でその対価は計り知れないほど要求される
しかし、兵士は亡くなった主人を生き返らせる事が出来るのかと一縷の望みを掛けて恐る恐る問いかける
「ん?無理よ。ぱぱには私がのろ...ゴホン!加護を与えて居たから蘇生出来るの。アンタの主人だと良くてゾンビになるけどそれでも良い??」
「いや、すまない、それは勘弁してくれ」
ゾンビになった主人をどうやって館に連れて帰るんだ
「さてと、ちょちょいとやっちゃいますか!え〜っとまずは骨格よねぇ、う〜ん土や石で作れるんだけど?また、あんなショボいブレスで痛い思いさせるのも可哀想だし」
顎に人差し指をつけ、う〜んと唸りながら考え込んでいる
「あっ!そっか、この沢山ある鱗を使って作ろう!一緒にこの牙も混ぜて〜っとえへへ。うん、いい感じいい感じ!」古代龍の周りに所狭しと落ちていた鱗と牙を魔法で掻き集め女性は嬉しそうに鼻歌を歌いながら、こねこねと何かを作っていた
「よし!出来た!うん、カッコいいかも?でも何か足りないのよね?う〜ん?そうだ!」
まるで黒いスケルトン?を自作した女性はトコトコと古代龍の側へと近寄る
「ねえ、アンタさあ、龍語の魔術使える?」
「ハ!ハイ使エマス大丈夫デス」
古代龍は震えながら答える
「じゃぁさ!ブレス無効の魔術を掛けて?あと、左眼ちょうだい」
「ハ、ハイッ.....?エッ?左眼デスカ?」
「そう、生きた蜥蜴の眼って確か龍眼とか言ったわよね?」
「エエ、確カニ、龍眼デスケド....」
「どうせ、蜥蜴なんだからまたすぐに新しい目玉が出てくるんでしょ?早くよこしなさいよ!またブン殴るわよ?」
「イヤ、蜥蜴蜥蜴ッテ古代龍デスカラ、シカモ目玉ナンテ再生スル訳無イジャナイデスカ」
「もう!うるさいわね!殴るわよ!!」
「解リマシタヨ」
黄緑の髪の毛の女性の無茶な注文を古代龍は涙を浮かべながら従っている
漆黒の骸骨の身体は光り輝き金属の光沢を放つ
「痛イ痛イ」
鳴きながら古代龍は左眼を自ら差し出す
「これでよし!うんなかなか良いわね!強そうだわ!あ、斧もお揃いで作っちゃお」女性は満足気に頷いている
古代龍の左眼は肋骨の間、丁度心臓の辺りに縦に固定される、魔法なのか?フワフワと浮いている様だ
「さて!じゃあぱぱの魂を呼び込むわよ!」
「ィャ、ァノチョット待ッテ」
「真なるエルフ、トリンシァが願う古の契約によって愛する者を我が元へと返せ【魂蘇生】」
「ァ...」
辺りを眩く水色の光が照らし兵士は目を開けている事が出来なくなっていた
初めて見る蘇生魔法に興味があったが両手で光を遮り光が収まるのを待つ
ほんの数秒、光は収まり次第に目も慣れてくる
兵士の目の前には漆黒の骸骨、胸には紅く輝く大きな龍眼がこちらを覗いている。
失敗なのか?と兵士が考えていると、骸骨の瞳に紅い光が灯る
不意に骸骨は動き出し己の手や足を眺め頬を摩りそして空を見上げ動きが止まる、右手に持っていた斧を落とし愕然としているようだ
「んん??あれれ?失敗した?ぱぱだよね?」
女性の声に骸骨は振り向き頷きながら何かを必死に伝えようとしている
「ふむふむ、なになに?目の前が真っ白になって気がついたら骸骨になってた?ふむふむ、おかしいな?私の魔術が失敗なんて?今まで一度も無かったのにな??」
ジェスチャーを駆使する骸骨と会話する女性ホラーでしか無い
「ぱぱ、聞いて、ぱぱはこの蜥蜴にブレスで一度殺されたのよ、だから私が蘇生の魔術を掛けたんだけど、何故か骸骨に?失敗なのかな??」
首を傾ける女性とアタフタと踊っている様な骸骨
「大丈夫よ、大丈夫。私が何とかするから、でも理由が分かんないのよね?」
「アノ〜」
思案顔の女性に恐る恐る語り掛ける古代龍
「うん?なに?」
「エット我多分ワカッタ」
「え?失敗の理由が?」
「ハイ」
「なに?どうして失敗したの?」
「ハイ、ソノ前ニ捕縛ヲ解イテ貰エマセン?」
「あ〜はいはい」
女性はパチンッと指を鳴らす
「有難ウ御座イマス、ソレデ失敗ノ理由ナンデスケド。多分、我ノ鱗ト牙ソレニ左眼ヲ使ッタカラダト思イマス」
「え?」
「元々、我ハ古代龍ナノデ我カラ獲レル素材ハ全テ魔力耐性ガ有カラ....」
「ふむふむ、成る程。じゃあ、つまりはあなたの素材で作ったから私の魔術が一部弾かれたと言う事?」
「エエ、多分。我ノ素材デ作ルナラ其レコソ(青空ノ魔女)デモ無イ限リ」
「じゃあ!この失敗はあなたのせいね!」
女性はビシッ!と人差し指を古代龍へと向ける
「ヒィ!」
悲鳴を上げて古代龍は頭をスポン!と引っ込める
「あ!待て!逃がさないよ」
女性が転移門へと近づくとバシュッ!と大きな音を立てて門が消え失せる
「あーー!逃げた!」
女性は地団駄を踏みながら喚き散らしている
隣に立つ漆黒の骸骨は大空を見上げながら佇んでいた。その右手から落とした大きな漆黒の斧を足元に寝かせたまま
地団駄を踏んでいた女性は骸骨を慰め始め生き残った兵士にこの事を喋ったら地獄を見せる!と脅迫しローブを巻き上げる
転移魔術で二人が姿を消した後兵士達はこの事をどうやって報告するかと頭を悩ませる
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
と言う訳なのよ」
やはり、読み通り犯人はかあちゃんだな
「で?どうやって元に戻るの?」
「私のお姉ちゃんを探しに魔王国に戻るわ」
「かあちゃんのお姉ちゃん?」
「そう、かあちゃん実は双子だったのよ。お姉ちゃんが魔王国の何処かにいるはずなの」
「かあちゃんのお姉ちゃんって事は俺の叔母さん?治せるの父ちゃんの事?」
「当然!治せるわよ、有名な魔女なんだから。だってみんなこう呼ぶのよ?」
「青空の魔女ってね」
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