おっさんと一緒
エデンの別荘へと帰って来た俺達は庭先にテーブルを出し昼食をとる
山鹿ソテーのベリーソースがけ
山菜とキノコのパスタ
大アサリのクラムチャウダー
チーズタルト
脂身の少ない山鹿のステーキにとても合う甘酸っぱいソース
これでもか!と盛られた山菜のパスタガーリックとバターの風味がやみつきになる
手のひらほどの大きさのあさりをふんだんに使ったクラムチャウダー濃厚な旨味と風味、貝好きには至高の逸品で間違いない
濃厚なチーズのタルト層によって香りが違うのは幾つかの種類のチーズを重ねて作っているのだろう
フォレスとの闘い?を見ていたのでアンの作る料理をもっと真剣に味わう事にした
あんなに嬉しそうに作るアンを見たら仕方ないよね?
まあ、それは良いんだけど.....
「旨い!全ての料理がマーベラスでファンタスティックな上ゴージャスこの上なくエクセレントである!最高!」
赤い髪、赤い髭、眉毛まで真っ赤なおっさんが絶賛しながらアンの作る料理を貪り食っている
いや、ミストとフォレスの父親で間違い無いんだろうが...
父親は赤い髪、ミストは金髪、フォレスは白髪?母親は七色の髪の毛なのだろうか?
そんなどうでも良い事を考えながらおっさんの食べっぷりを眺めている。
やはり親子なのだろう、次々と出されるアンの料理を流れるようにその胃袋へと消していく
フォレスと違い語彙力の無さか旨いを連発している
あれ?このおじさんなんで一緒にお昼ご飯食べてるんだ??
ミストとフォレスの姉妹と別れ、エデンの屋敷に帰る途中で出会ったおっさんは、俺達の事を精霊攫いだとしつこく追いかけて来た、と言うより縋り付いて来た
途中で撒いても良かったのだが余りにしつこいのとメンドクサイので放置&無視をしていたのだが、図々しくエデンの屋敷に上がり込み庭先に用意したテーブルの椅子に腰掛けアンに
「服が汚れるといけないのでナフキンを下さい」
とワガママを言い今に至る
アンが出す料理、出す料理、旨い!だのマーベラス!だのと褒めながら軽く10人前は食べている
一体本当に何しに来たんだ
とろけるようなチーズクリームとサクサクのタルトを食べ紅茶で流し込む
「で?一体いつまで付いて来る気なんだ?」
「おかわりっ!んん??いつまでってそりゃ娘を返して貰うまで付き纏うぞ!当然じゃないか」
アンに空になった皿を手渡しながらおっさんは笑顔で答える
ただ飯を食べたいだけじゃないのか?
「別に付き纏うのは構わないが飯はこれが最後だぞ?次からは出さないからな?」
俺は核心を突いてみる
「なーーーーなっーー!なんで?なんでそんなこと言うのかなぁ?え?鬼なの?僕ちゃんは鬼なの?エルフだよね?あ、ハーフエルフ!ハーフでもエルフはエルフだよね?精霊の面倒見る義務があるじゃない!ね?ね?」
「いや?無いと思う」
慌てふためくおっさんに冷静に返してみる
「だーーー!だめ!だめだよー!何言ってるのよ!精霊とエルフはお互い協力しながら生きて来たんだよ?もうね!兄弟?親戚?いやもう夫婦!そう夫婦だよ!わかるでしょ?」
「いえ?分かりません?」
うざい、考えられないくらい、うざい...
因みにポチは、屋敷に着くなり雌犬7匹に尻尾を咥えられ引き摺られながら別棟の方へと攫われて行った...雌犬と仲良くな
そんな感じで、おっさんの訳の分からない説得を聴きながら紅茶を飲んでいるとエデンが帰って来た
エデンは肩に魚人の女性を担ぎながらとても良い笑顔で門から入ってくる
「おう!アレックス帰って来てたのか」
「あ...あぁ、ただいま」
「どうだった?洞窟は?」
忘れていた...まさか糞尿で立ち入り禁止の場所にしてしまったとは言えない。少し考えて
「いや...特に何も無かった」
「まあ、そうだろうな。不人気で地元の冒険者でも行くことはまず無い洞窟だからな」
「で、エデン、肩に担いでいる魚人は?」
「ああ!攫ってきたんだ」
とても良い笑顔で応えるエデン
猿轡を噛まされエデンの肩の上で暴れている魚人、誰が見ても犯罪にしか見えない
「あ....あぁ。だろうと思ったよ...」
「鮫が何処かに行くまでやる事がないからな」
白い歯をキラリと輝かせ笑顔で応える
コイツは何を言っているんだろう呆れて言葉が出てこない
「ところでアレックス、そのおじさんは?」
エデンは料理を貪り食べるおっさんについて聞いてくる
「多分、ミストの父親だと思うんだが勝手について来ているんだ。悪いな勝手に家に入れてしまって」
「いや、アレックスの知り合いなら構わないさ。それじゃ!コイツを黙らせに行くよ!」
エデンは、肩に担いだ魚人の尻を叩きながら玄関へと向かう。こりゃ逮捕は間近だな
「つまりは!エルフと精霊は二つで一つ!比翼の鳥なんだ!」おっさんは未だに謎の言い訳を続けていた
「良く分かりません」
「良し、分かった!おじさんも男だ!対価を支払おうじゃないか!」おっさんは懐から小さなビー玉の様な赤い球を取り出す
「なんですか?それ?」
少しだけ興味が湧き尋ねてみる
「ふふふ、火焔石だよ!火焔石!」
「火焔石?」
「そうだ!火焔石、凄いだろ!これをあげるから飯を食わせてくれ」
「何に使うんですか?」
俺は綺麗な赤い球に手を伸ばしおっさんから受け取ろうとする
「坊っちゃま!いけませんっ!!」
急に横からアンが手を伸ばし俺の伸ばした手を掴み引き戻す
おっさんの手から球は転がり落ちて地面に触れた瞬間!球は物凄い勢いで真上に焔を噴きだす。まるで地面から焔が間欠泉の如く吹き出している様だ
俺はアンに抱きかかえられその焔から身をかわす
「あ、悪い悪い。火焔石はワシ以外触れんの忘れてたわ」危うく殺されかけたのにとても軽い謝り方。ミストの親で間違いない
おっさんは噴き上がる焔を気にもせずに球を拾い上げ手のひらで包み焔を消し懐に仕舞う
おっさんの話では火焔石は湖に投げ込めば温泉になり山に投げ込めば消える事の無い燃え盛る山が出来上がるとても危険な石らしい
また、魔法の金属でその力を抑え込み燃える剣や鎧なども作る事が出来ると自慢していた
そんなおっさんの自慢話を聞くともしないで聞いていると母ちゃんから連絡が入る
「アー君大事な話があるの少しいい?」
何故か真剣な口調で話しかけて来る母ちゃんに嫌な予感がする
いかがでしょうか
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