『閑話』温泉街にて
※ケビン目線で話は進みます※
温泉街付近の山中に居を構えて数日
ほぼ全ての温泉を堪能して、お互いお気に入りを見つける
俺は周りの景色が堪能できる川沿いにある露天風呂が気に入りトゥルーは全て大理石で作られた湯船に金属で作られたドラゴンの口から湯が常に流れる豪華な温泉を気に入った様だ
俺たちはそれぞれお気に入りの温泉に浸かりながら久しぶりの温泉を堪能していた
温泉から眺める山頂には何処からかまた沸いて来たワイバーンが沢山飛んでいた
一体何処から飛んで来たんだろう?
あれから俺達の家へは襲撃をしてこない
ワイバーンも懲りたのだろうか?
滞在数日が過ぎ俺たちは一つの露天風呂を貸し切り仲良く二人でつかっていた
少々値段は張るが夫婦水入らずもたまには良いだろうトゥルーに背中を流して貰いながらこの街を囲む山をぼけ〜っと眺めていた
ん?
何か山の中に違和感を感じてその場所を注意深く観察する。麓から200メートルほど登った地点が何故か空間が歪んだ様に見えたのだ
「なぁ、トゥルー、あの辺り何か変じゃ無いか?」
「え?どこどこ?」
「ほら、あの木が岩の上に三本生えてる右側」
「ん〜?ちょっとまってよ?」
トゥルーは俺の背中越しに俺が指差す方へと視線を向け注意深く観察している
「んん??あれ?なんだあれ?」
トゥルーは素っ頓狂な声を上げ何かに気づいた様だ
「ぱぱ大変、あの場所なんだか空間が歪んでる見たい。転移門があるのかしら?」
「転移門?」
「もしかしてだけど駆除したワイバーンがまた沸いてるのはそのせいかも?ちょっと調べてみる必要がありそうね」
俺達は露天風呂を出た後その足で冒険者ギルドへと向かう
「えっと、つまりワイバーンの山の中程に空間の歪みがあると?」
「ああ、そうなんだ。ちょっと調べてみる必要があるだろうと思うんだが、すまないが此処の領主殿に許可を貰って欲しい」
「かしこまりました、高名な冒険者様の依頼ですので直ちに領主へ許可を申請致します」
前に家へと押しかけた職員が奥へと向かい奥から双肌を出した女性が現れる
「お話は伺いました、私はこの街の冒険者ギルドの長で御座います。直ぐに領主の館へと案内致します。」
俺達3人はギルマスに従い領主の館へと向かう
「で?要件とは?」
「御領主さま、こちらの冒険者の方がワイバーンの山に何か危険な物があるかもしれないと。調査の許可を申請しております。」
「ふむ、具体的にどの様なものなのだ?」
「ばっかじゃないの?それが分からないから調べに行くんでしょ?分かってたらわざわざこんな所まで来やしないわよ!」
「くっ!」
トゥルーはまだ先日の件を根に持っている様だ
「まぁまぁ、妻の見た感じだと空間に歪みがあるそうです。もしかしたら転移門がある可能性があります」
あっかんべーをしているトゥルーを後ろから羽交い締めにしながら説明する
「転移門?」
聞いた事が無いのか領主はギルマスに尋ねる
「違う場所へと転移する為の道具であったり古代の魔法陣であったり、現存する数はあまり多くありません」
「ふむ、貴重な物なのだな?」
「大変貴重ではありますが...」
「よし、案内致せ。調査は我が警備隊で行う、転移門とやらが有れば褒美を遣わそう」
「う〜ん?あなた馬鹿なの?転移門の調査なんて何処に飛ばされるか分からないのよ?例えば大海原の真ん中とか?空の上とか?はたまた土の中とか?正気なのかしら??」
トゥルーが肩を竦め呆れている
「貴様!少しばかり有名になったくらいで調子に乗りおって!我が警備隊の力を見せてやろう!」
「いや、領主様。転移門の調査なんて普通は上級魔法使いに依頼する物だ。魔法も使えない兵士なんて転移に対応出来ないと思うぞ?」
「ばあ〜か!べ〜〜だ笑」
「こら、トゥルーやめろ」
「だってこの馬鹿偉そうなんだもん」
「貴族なんてこんなもんだろ?ましてや代々続く貴族なんて自分の力じゃなくて単にその家に生まれただけなんだから」
俺はトゥルーに小さな声で話しかける
「構わん!わが街の警備隊の力を見せてやる!」
「知らないぞ?おいギルマス、キチンと説明しないと取り返しが付かなくなるぞ?」
「いや、そこまで煽っておいて......」
俺達の忠告を無視して館の前へと整列した警備隊に空間に歪みがある場所を指し示す
俺とトゥルーの案内に従い領主と兵士は山の中を掻き分けて目的地へと向かう
麓からは生い茂る木によって分からないが、山の斜面が抉られ少しだけ開けた広場。明らかに人の手が入った場所にその空間の歪みは存在していた。
「なんだ?この場所はまるで誰かが意図して作った様な?」馬ではなく徒歩で山登りをした貴族は息を切らせながら驚いている
「あまり、近づくなよ、何処に飛ばされるかわからないからな」
俺の忠告に警備隊が固唾を飲む
その時、まるで空間から生まれ出るような格好で1匹のワイバーンが歪みから姿を現わす
「ワ!ワイバーンだ!!」
慌てふためく警備隊、何人かは登って来た山を転がり降りて行く
「トゥルー」
「はいはい」
俺の呼びかけに、やれやれと肩を竦め左手から光の矢を射る
ワイバーンの胸に刺さった矢は背中から抜け角度を変え頭を吹き飛ばす
「す、すげぇ...」
腰を抜かし動けない警備隊があちこちで言葉にならない賞賛を上げながらトゥルーを見ていた
「領主さん、どうする?この向こうには最低でもワイバーン巣がある様だ。帰って来れるかは分からないが行くか?」
俺の問いに顔を真っ青に変えた領主は
「いや、我らは足で纏いになるだけだ、一旦麓に帰ろう。ギルドに報告して本格的な依頼を出そう。王城へも連絡せねば」
「それが、良いだろう俺達も帰...」
トゥルーに尋ねようとしたその時、空間の歪みからとても大きな漆黒の頭が現れる。
頭だけでワイバーンよりも大きく、その凶暴な瞳は紅く輝いていた。その大きさは以前退治した海龍の頭よりも大きい。
歪みが小さく身体は出ていないが頭や顔を覆う漆黒の鱗は1枚1枚が戦士が使う盾ほどもありまるで金属の様に輝いて見える。
あまりの事に貴族と警備隊は腰を抜かしその場にしゃがみこむ
【我ガ巣ノ近クニコノ様ナ物ヲ!許サンゾ!下等ナ種族メガ!】
まるで、地響きのような唸り声が聞こえ龍の頭は大きく口を開く
隣のトゥルーが焦った様子で
「気をつけて!!古代龍の一種だわ!!ブレスが来るから避けてぇー!!!」
腰を抜かした貴族達は動く事すら出来ない
大きく開いた龍の口の中で眩く輝く光の渦が見えた時俺は無意識に貴族達を庇う様に龍の前へと踊り出る
目の前が真っ白に輝く龍のブレスを両手を広げ受け止めるどこか遠くで愛しい妻の叫び声が聞こえてくる
すまない、トゥルー。
アレック....
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