暫しの別れ
大きな木でできた家の玄関、フォレスは人差し指でなぞりながら入口を消していく
嫌な予感がする
「さて♩私も付いていくわ」
白髪の少女は満面の笑みで宣言している
突然の宣言に
「だ!ダメよお姉ちゃん!」
ミストが両手をバタバタと振りながら答える
「えーなんでー!良いじゃん!けちっ!」
フォレスは頬を膨らませながら
「だって!..あ!ほら、この森の管理はどうするのよ!」湖を放棄したミストの言葉に耳を疑う
「大丈夫よ!ほらこうやって」
フォレスは右人差し指を地面に向けて何やらつぶやいていた
指先が銀色に輝いて地面の上に大きな白銀の虎が姿を現わせる
「この森を管理するフォレストフィアーの名にをいて命ずる森の維持管理を貴方に任せる」
白銀の虎は大きく一声吠えると森の中へ悠然と歩みを進める
まるで心配は要らないとでも背中で言っているように
その光景を見つめる俺達の中二人だけが驚愕の雰囲気を醸し出していた
白銀の虎の佇まいに恐れたのかお腹を見せているポチ
弱い、あまりにも弱い
まぁ、ポチの事を言えないくらい俺も弱いけど
もう一人
ミスト、両手で口元を押さえて驚愕の表情を隠している
「さっきのは、動物は一体何?かなり強そうだけど?」俺の問いに人差し指を顎に当てて首を傾けて
「え?守護精霊獣よ??管理者が持ち場を離れる時は必ず代わりを置いて行かないと管理している場所の生態が...って!あれ....?ミスト....??貴女きちんと、守護精霊獣を代わりに置いて来たのよね?」説明の途中で次第に顔色が変わり目を大きく開きながらミストに詰め寄るフォレス
「いや、あのっ、そのっ、だからさぁっ、て言うか」ミストは思い切り目を泳がせながら言い訳を考えているようだ
笑顔だった姉の瞳が剣呑な雰囲気に包まれ右手には輝く弓が現れる。魔法の弓なんだなあれ
呑気に感心しながら二人を見つめる俺とアン
「貴女!まーさーかー!!あれほどお父様に言われたでしょうが!!(ビシッ)持ち場を離れる時には必ず代わりを置くように(ビシッ)このお馬鹿っ!」
「きゃー!痛!痛い!。ち、違うの!違うのよ!」七色に輝く弓でお尻を打たれながら必死に言い訳をするミスト
「何が違うのっ!言ってみなさいっ!!」
フォレスは坂眉を立てながら右手の弓を振り上げミストの言い訳を待っている
「ちょっと忘れてたのよ!そう!今度しようと思ってたの」ミストの口から出た言い訳は呆れるほど稚拙なものだった。当然姉の逆鱗に触れ暫く弓でお尻を打たれるのを俺達は待つ事となった
暫くして
「ごめんなさい、アレックス私はミストを連れてイーグノ湖に先に向かうわ、大変な事になって無ければ良いんだけど」フォレスは少し疲れた様子で告げてくる
「それじゃぁ一緒に俺達も行くよ」
俺の返事に首を振り
「私と妹だけなら何とか魔術で飛んで行けるから先にイーグノ湖に向かうわ」
「えーやだー(ビシッ)痛っ!わかったわよ、アレックス、絶対に来てよ!約束よ!」
「わかったよ。初めて会ったあの湖だな、二人とも無茶だけはするなよ?約束してくれ」俺の言葉に頷きながらフォレスは再び右手の人差し指を地面に向けボソボソと呟く
やがて、白銀に輝く大きな鷲が姿を現わす
大きな鷲は羽根を広げ小さくなったミストとフォレスを背に乗せ一声鳴き大空へと飛び立つ
「直ぐに迎えに来てよーアレックスーあーいーしーてーるー♩」白銀の鷲の上で大きく手を振りながらミストが叫んでいる
落ちないように
そう心で祈りながら二人を見送る
「行っちゃったな」
「ええ、行ってしまいましたわ」
騒がしい二人が居なくなり少しだけ寂しさを感じながら二人が見えなくなるまで大空を見つめている
不意にアンが背中から抱きついてくる
「坊っちゃま!元気出して早く迎えに行きませんと♩」
背中に幸せを感じながら
「そうだな!よしっ!町に戻るか!」
「少しの間だけですが、また二人っきりですわね♩」アンは両手で頬を挟んでくねくねと腰を振っている
「たまには二人っきりでも良いかもな」
「............ワ.......ン」
思い切り機嫌を損ねたポチの機嫌が直るまで少しの時間を割きいざ町へと歩みを進めようとしていると
大空からこちらに向かってくる大きな鷲のシルエットと人影が
何か忘れ物でもしたのかと考えていると
近づくに連れ二人と違う人が乗っているのに気づく
「あれ?ミスト達じゃ無いようだけど?」
「そうでごさいますね?」
「ワン?」
大きな鷲は俺達の真上を通過する時その背中から一つの人影が飛び降りるのが見える
高層ビルの屋上から飛び降りるほどの高さだ
「おいおい、かなりの高さから飛び降りたぞ?」
「まぁ!」
「ワン!」
その人影は減速する事なくこちらに向かって落ちて来る、魔法が在る世界なので大丈夫なのだろう
そんな呑気な事を考えていると
ドンガラガッシャーーン!!!!とまるで漫画のように、地面に穴を開けながら落ちて来た人影は姿を消す
物凄い土煙と振動と音に俺達は咄嗟に跳びのき爆風とも言うべき土煙から身を守りながら様子を伺っていた
穴の中から
「た....助けてくれ〜」
と、弱々しい声が聞こえる
大きく空いた穴へと近寄り中を覗き込むと
真っ赤な髪の髭もじゃのおじさんが右手を伸ばして助けを求めていた
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