母との遭遇
不意に吹っ飛ぶ二人
注意を受けて
襲撃だと気づく
一体誰が??
遠くに見える黄緑色の髪の毛
俺の中の危機感が最上級の警報を鳴らす
「アン!ミスト!逃げるぞ!最悪の相手だ絶対に勝てない」俺はいつもの呑気な雰囲気を投げ捨て叫ぶ
その俺の態度にアンとミストが
「坊っちゃまわたくし共を残してお逃げください!早く!」と涙ながらに答える
「何言ってる!早く一緒に逃げるんだ急げ!」
一刻も早く逃げないと!
「申し訳御座いません、先程の魔術で身体を動かす事が出来ません」アンの表情は今まで見せた事の無い悲壮感を漂わせていた
ミストを見ると同じ様に身体が動かない様だ
仕方ない諦めるしかない
「坊っちゃま!早くお逃げください!!」
アンは涙を零して叫ぶ
「アレックス逃げて!」
ミストも泣きながら叫ぶ
二人とも相手は計り知れない強敵だとわかっている様だしかし、一つだけ気づいていない
遠くから一匹の白い犬が駆けてくる
少し懐かしく思い置いて来た事を申し訳なく思う
「坊っちゃまあぶない!」後ろからアンの悲鳴が聞こえる
「アレックス避けて!」
ミストも叫ぶ
が、こんなに尻尾を振りながら駆けてくる犬が危ないわけ無いだろう?などと考えていると
目の前でポチがジャンプして飛び込んでくる
その背後に光る矢が飛んで来ていたのに気づく
光の矢はポチのお尻に刺さりポチは悶絶しながら遥か後方に飛んで行く、ポチはこう見えてそこそこ体力があるので死にはしない
向こうで母ちゃんの叫び声が響いている
実の息子になんてもの打ち込むんだうちの母ちゃんは!
諦めて両手を挙げ降参する、家出しただけでガチ魔術とか半端ないわ
向こうから父ちゃんが駆けてくる
「アレックス大丈夫か?」
「僕は何とかでもポチが...」
ポチは脚を大きくL字に開き鳴きながらお尻を舐め続けていたお尻周辺の白い毛が黒く焦げている無残な姿だ
走って来た母ちゃんが
「ポチごめんねー」とポチに抱きつき鞄から出した凄く滲みる傷薬をポチのお尻に振りかける
より一層ポチの鳴き声が響き渡る
母ちゃんがこちらを振り向き
「ちょっと!よくも可愛いうちの犬に酷いことしたわね!」と怒っている。
「いや、ひどいのは母ちゃんじゃんか!」
真っ当な主張をする
「ん?んん?んんん?あれ?アー君にそっくりだわこの子。ぱぱ見てアー君にそっくりよ!」
母ちゃんが驚きながら父ちゃんに話しかける
「トゥルーよく見ろアレックスだ」
少し呆れた様に父ちゃんは答える
「いや、ちょっと呪いの帯が沢山あって精霊眼を切らないと分からない」それはあんたが掛けた呪いだ
「あ!あー!アー君だ!やっと見つけた!!あれ?精霊版が作動してないのはどうして??」
母ちゃんは息子を看板で識別していたらしい
「あぁ、ミストが目がチカチカするからって消してくれたんだ、でも母ちゃんひどいじゃん!息子に呪いどれだけ掛けてんのさ!あと勝手に変な看板背負わせて恥ずかしすぎるよ!!」
「ミスト?」母ちゃんが不思議な顔で聞いてくる
あ、後ろでもがいている二人のこと忘れてた
「母ちゃん二人に掛けてる魔法止めてよ!」
「あ!ごめんごめん」母ちゃんは右手を前に出す
突然動ける様になった二人が凄い勢いで俺の前に立ちはだかり俺を後ろに引き下げる
二人は緊張の面持ちで父ちゃんと母ちゃんを睨んでいる。
「アン、ミスト、俺の母ちゃんと父ちゃんだ」
俺達の話を聞いていなかったのか二人はこちらを二度見して小さく母ちゃん?と呟き
「えぇ!坊っちゃまのご両親ですか?」
「アレックスのお父さんとお母さん?」
驚愕の表情を浮かべている
「なぜ義母様がわたくしたちを攻撃なされるのでしょうか?」あ、そうだそうだ
「そうだ、母ちゃん!家出したからってあんな魔法打ち込むなんて酷いじゃないか!」
思い出して怒る家出の罪をうやむやにする好機!
母ちゃんが激おこで
「何言ってるのよ!アー君!他所のお家の娘さんを誑かして連れ出したんでしょ!母ちゃんはそんな子に育てた覚えは無いわ!」
うん?何の事だ??
「どっちの娘さんがアーザルさんの娘なの?」
アンとミストを見比べて尋ねる
「母ちゃんそれ騙されてるんだアンはゴーレムミストは精霊だよどっちもアーザルの娘じゃない」
母ちゃんはキョトンとした顔で父ちゃんに振り向き
「あの野郎やっぱり騙しやがったのか!」
父ちゃんも激おこ
勘違いで攻撃して来たみたいだ怖い母ちゃんだ
「ま、まあさ勘違いってことよね、うふ」
可愛く言ってもダメだよポチは未だにお尻を舐め続けているんだから
父ちゃんが
「少しの旅で二人も美人を連れてるのはどういう事だまったく!」論点がおかしいと思うが?
アンとミストが礼をして名乗る
アンは何故か目を伏せて
「先程は失礼致しました。アン・ランフォードでございます」
初めてアンの家名を聞いたな、ていうか家名なんてあったんだと思っていると
「ミスト・ランフォードです」
何故かミストも同じ家名を名乗る二人で決めたんだろうか?
それを受け母ちゃんが少し怒った顔をして
「貴女達、その名を名乗るのは覚悟の上でしょうね?」その場の空気がピリピリと張り詰める
「義母様当然覚悟の上でございます」
アンは真っ直ぐに母ちゃんの目を見て答える
「あたしも覚悟の上です」
ミストも母ちゃんを見つめる
「わかりました、ただし!息子の嫁は一人今回の旅に同行して息子の心を射止めた方を嫁と認めます。旅が終わるまで何人もの女性が現れるでしょう貴女達以外を息子が選ぶかも知らないけどいいのね?」
「覚悟の上でございます」
「わかってます」
二人は頷き真剣な話は続くのだが
本人を置いて嫁の話は無しなんじゃないのか?
「アレッサンドロ!良いわね?」
母ちゃんが俺の名前を不意に呼ぶ
「え?ああ、わかった」
でもこの世界は一夫多妻も珍しくない
何故嫁は一人なのだろうか?
真剣な話は終わり俺は短い旅で出会った人達の話を母ちゃんにする
奴隷商人に捕まりエルフに助けてもらったと言うと「あぁ、父さんが言っていたわ。アー君がこの国にいるのも父さんに聞いてきたのよ」
どうやら母ちゃんの父さんらし...ん?
「え?じゃあ俺のお爺ちゃんなの?」
「え?名乗らなかったの??」
何も聞いていないあれがお爺ちゃんか
若くないか??金髪と一緒にいたな
「そうだ父ちゃん、金髪の名前忘れたけど父ちゃんの顔に傷付けたって自慢してたおっさんにも会ったよ」
「あぁ、バディかその後でお爺ちゃんと一緒に会ったよ」
後誰かいた様な気もするが思い出せない
しばらく和やかに話を続けていると
ミストが俺の袖を引き
「アレックス、呪いを解いて貰わないと」
小さく耳元で囁く
あ、そうだそうだ
「母ちゃん、俺に掛けてる呪い解除してよね!」
母ちゃんの顔が引き攣り
「へ?な、なな何の事???」
顔を背け口笛を吹きだす
「母ちゃん!絶対解除して!」
強く念押しする
「えーでも600以上もあるんだよ?無理に決まってるじゃんまぁこのままウチに帰って一緒に暮らしながら一個づつならいけるかも??」
などと悪い笑顔で呟いている
するとミストが
「大丈夫、あたしが解除する。お母さんアレックスとの精霊の儀式に承諾して」
「ええ!いやダメよ!まだアー君は子供なんだから!!だめ!」その子供に600以上の呪いを掛けるのはどうなんだ?
「正式な儀式じゃなくて構わない仮の契約を結ぶだけ、1日一つ解除していく」
「トゥルーいい加減子離れしないと!」
父ちゃんがかっこよく決める
「アレックスのお父さんにも呪いが...」
ミストの言葉に一同が固まる
油のキレたおもちゃのようにギ・ギ・ギと母ちゃんを見た父ちゃんは
「トゥルー俺にも呪いを掛けてんのか?」
「え!い、いや大したことないものよ??あは」
「ミストちゃん、どんな呪いがかけられているんだい??」父ちゃんがミストに尋ねる
ミストは父ちゃんの方を見ずに
「異性にはお父さんの顔が性器に見える呪いです」顔を赤らめて恥ずかしそうに答える
怖い、怖い怖い!なんだ!うちの父ちゃんは顔がナニで街をうろついていたのか!怖い
父ちゃんはジト目で母ちゃんに
「トゥルーそれはないだろ!」
「だってぱぱモテるんだもん!」
頬を膨らませて口を尖らせている
ミストとの仮契約に渋々承諾して
父ちゃんに掛けている呪いも解除して話はこれからの事に移る
「で、アレックスこれからどうするんだ?」
「旅を続けて色んな所を回ってみるよ色んな島も見に行きたいから」
「そっか父ちゃんは武王国に寄った後エルフの里に行く予定だ用事が有ればギルドに依頼を出せば良い。」
「可愛い花嫁を連れてこいよ」
「うん、もう二人候補がいるけどね」
「ちょっとギルドに用事があるから父さん達はもう行くぞ?体には気をつけろよ?」
「うん分かってる」
母ちゃんが
「元気でね怪我しちゃ嫌よ」
ポチも
「マタネ」
何故か俺達の横に並んで父ちゃんを見送ろうとしている
「いや、二人ともアッチだよ連れて行かないから!」
驚愕の表情で俺の顔を見る二人
いや、当然だろう?話の流れ的に
父ちゃんは顔を手で押さえてあきれている
「えーやだー母ちゃんも一緒に行く!だってこの娘達弱いじゃん!母ちゃんの方が強いし!」
いや強くてもダメ
「オレハハナレナイゾ」
小さくなったポチがオレの肩に乗り頭にしがみ付く
「トゥルーいくぞ、お前も里に行かないといけないだろうが!アレックスポチは何とか連れて行ってやってくれ」
「えー?」
「ポチの頭、本当は月の形の模様なのに可愛くないからって星型に母ちゃんに毟られてるんだぞ可哀想だろうが!なんとかしてやってくれ」
まぁ長い付き合いだし仕方ないかと
「分かったよポチは連れて行くよ」
「えーじゃあ」「母ちゃんはダメ!」
ひどいひどいの泣き真似を無視してそれじゃぁ行こうかとすると
ミストが一言
「その犬も呪いが」......
母ちゃん何やってんだ!!!!!
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