道中にて
龍王国での準備を終え
港から自由連合を目指す
「ぱぱどこに行く?」
「そうだな、お義父さんは自由連合の王都で会ったって言ってたから、東の都か南の街か」
「どっちに行きそう??」
「アレックスの事だ、下級龍を見に温泉に行くと思うが人魚も捨てがたい」
「ぱぱ?」トゥルーとポチがジト目で睨んでくる
「いや!俺は興味はないぞ!人魚なんか...」
「人魚ね!この父にして我が息子だわ!」
「ワン!」
こうして俺達は自由連合の南、この世の花と言われる種族人魚が歌い舞う自由連合最大の名所
[華の都スカラレイ]へと向かう船に乗り込む
待ってろよ!人魚、いや我が息子よ!
海岸沿いを馬車は走る
潮の香りと海風が心地よく窓から外を眺めている
アンはいつもの様に針を持ち服を仕立てている
ミストは俺に向かい合わせに抱きつき眠っている
もちろん子供サイズで
アンは裁縫しながら俺に食べ物の好みなどを
聞いて今日の夕食はあれにしようかこれにしようか悩んでいる
何を作ってもアンの作る料理は
シェフ顔負けのプロの味
「そういえば、アンはどこで料理を習ったんだ?」スキルは熟練度ならどれだけの修行をすれば120なんて馬鹿げたスキルになるのだろう?
同じようにすれば120まで上げる事が出来るのだろうか?
「わたくしをお作りになった方が究極のメイドを作る事を目指して非常に厳しい躾をわたくしに、世間では聖技巧師とかメイドマニア、メイド馬鹿などと呼ばれていましたわ」
メイドに対する熱い想いが溢れて最高のメイドを作ったのか、感謝だな
「どうかなされました?」
「いや、素晴らしいメイドを作り上げてくれて感謝してる」
「いえ、まだ完成はしておりませんわ!坊っちゃまの愛でわたくしを完成させてください♩」
完成というより修理かな?
停留所に着きキャンプの用意を始める
停留所には駅馬車の他幾つかの馬車が停留している
豪華な馬車も一台、貴族と言うよりも
成金的ないやらしい趣味が施された金ピカの馬車
揉め事はゴメンなので少し離れた場所にテントを立てる
今日の夕飯はカニとキノコのシチュー
シチューの中にほぐしたカニの身とキノコがたっぷりと入っている
焼きたての硬いフランスパンに良く似たパンと魚介のサラダ。イカやホタテが入りレモンの効いたスパイシーなドレッシングがかけられている
相変わらずミストはバクバクと食べている
少し疑問が「なぁ?ミスト?」
「うぐ!ん、はぁなあに?」
「そんなに食べるのになぜそんなに痩せてるんだ?」
「精霊だから??」いや、知らんがな
聞いた俺が悪かった
三人で仲良く夕食を楽しんでいると
金ピカ馬車から召使いの様な若者が近寄ってきて
「おい、アーザル様がお呼びだ!ついて来い」
とても偉そうに声を掛けてくる
「いえ、結構です」
即答で断る
「は?な、何言ってるんだ!アーザル様だぞ!」
知らんがな
「今は夕食中なのでご遠慮下さい」
面倒な匂いがするので断り続ける
「な、何言ってるんだ!アーザル商会のアーザル様だぞ!」だから知らないって
「どう言った御用でしょうか?」
「来れば分かる」
「いえ、だから結構です」
「ふざけるな!早くついて来い!」
断ってるのに中々帰ってくれないなぁ
などと思っているとアンが
「坊っちゃまがお断りしておりますのでお引き取り下さい」笑顔だが目が笑っていない
威圧感が半端ないアンの言葉に
「どうなっても知らないぞ!」
捨て台詞を吐いて馬車に戻って行く
此方は何もしていないのになんて理不尽な
若者が馬車に入ると少しして真っ黒な鎧に包まれた強そうな雰囲気を纏う男が出て来た
嫌な予感がする
黒い鎧の男は黒い髪の毛と顎髭を生やし
鎧の上からでも鍛えているのが分かる
かなり強い!気がする?
男は此方に近づいてくる
アンが不意に
「怪我をしたくなければそれ以上殺気を放ちながら近づかない事ね?」と微笑みながら告げる
殺気?どこから出てるのかわからない
男は立ち止まり
「少しは出来る様だな?我が主人が用があるのだ少しご足労頂きたい」
男はニヒルに笑う
かっけぇ
俺は立ち上がり
「仕方がない分かりました、参りましょう」
あまりいい話では無いのは聞かなくてもわかる
いやらしい趣味の金ピカの馬車に近づくと中から先ほどの若者がにやけながら出てくる
「大人しく最初から来れば怖い目に遭わないで済んだのに馬鹿が!」おい、呼んでおいてその態度はなんだ
馬車の中は驚くほど広い
魔法で拡張してあるのだろう奥に暖炉が見え
その前にいやらしい顔でソファーに横たわる
とても肥えた親父がいた
「やっときたか?早くしろ!この私の時間を割いてやってるんだぞ!」はあ?なんだこのオヤジ?
「で?幾ら欲しいんだ?小僧」
「何の事ですか?」
「なんだ?用件を言っていないのか?全く使えん奴らだ!貴様の連れているメイドと女をこの私に売れ、私が可愛いがってやる」切れそうになる
「お前みたいな貧乏人よりも私といた方が贅沢な暮らしが出来るその方が幸せだろう?」
コイツ何言ってるんだ?馬鹿なのか?
俺が何か言う前にアンが前に出て
「黙れ、豚!耳が腐る様な言葉を私達の夫に聞かせるとは言語道断!その身をもって罪を償え!」
ブチギレてらっしゃる
そこにミストも並んで
「幸せをお金で買おうなんて顔も体も根性も腐ってる思い知らせてやる!」
此方もブチギレてらっしゃる
自分がキレそうでも他人が先にキレたら急に冷静になるよね?俺は二人の腕を取り
自分の方に抱き寄せ二人に代わる代わるキスをする
「お前みたいな豚には少し勿体ない美女だな」
笑顔で告げる
呆気に取られたオヤジはみるみる顔が赤くなり
黒い鎧の男に怒鳴り付ける
「何をしてるそのガキをぶちのめせ!!」
「いや、俺じゃこのメイドには勝てないぜ?」
何かぎゃーぎゃーと叫んでいる馬車を三人で後にする
二人を見ると目がハートになりながら
「坊っちゃま♩」
「アレックス♩」と呟き抱きついていた
街までまだまだある
嫌がらせしてくるよな〜多分
はぁメンドクサイ
少し短めですが
宜しければ評価頂ければ嬉しいです




