牢屋でのひと時
宿屋の主人は
唇を噛み自分の野望の潰えたのを悟る
無垢な子供を犠牲に緑龍を従えこの憎っくき街へ
災いを振りまく筈が
馬鹿な女二人のせいで計画は台無しになってしまった
こうなったら緑龍だけでもこの街中で放し
手当たり次第に被害をだす下策しか残っていない
自分が誘拐犯として逮捕される前に
主人は緑龍を街の付近で放す
緑龍は先ず主人に噛みつき振り回す
自分が最初の犠牲者になるとは
これによって宿屋の主人はどうやってこの緑龍を街の付近まで連れてきたのかは分からなくなり
解き放たれた緑龍は獰猛な瞳で餌の豊富な街を目指す
人生初の牢屋での目覚め
アンとミストが俺を挟むように寄り添って眠っている
目覚めたアンが微笑みながら頬にキスしてくる
「おはようございま?あら?坊っちゃま此処はどこでしょうか?」
お前、呑気だなと突っ込む気力も無いままに
「牢屋だ」
「牢屋?まさか!坊っちゃま何かしでかしたのでしょうか?」お前らだよ
隣のミストも眼を覚ます
「うーん頭痛い小僧、水」
二日酔いか?
「アン水出してやって」
アンに水をもらいミストは一気に飲み干し
辺りを見渡す
「此処何処?」
「牢屋」
「牢屋?」
「そう、お前たちが酒飲んで暴れたから捕まったの」
「ええ!」
「えええ?!」
大きな声で叫んだせいでミストは頭を押さえている
「ぼ!坊っちゃま、わたくしたちは何を」
「温泉宿の破壊、宿屋の親父への暴行」
「あわわわわわ」
「まぁ示談で済むんじゃないかって話を聞いたからお金払えば良いみたい」
俺が落ち着いて居られるのはこの話を牢番に聞いてからだな
アンが涙を流しながら土下座している
「申し訳ございません坊っちゃま」
「もう、良いよ二人に愛されてるのがわかったから」優しく抱きしめて背中をトントンする」
「坊坊っちゃまぁぁぁ」泣きながらアンが抱きついて激しく頬にキスしてくる
牢屋の隅でミストが此方を頬を膨らませて口を尖らせながら見ている
左手を広げて、おいでと手招きする
バンザイしながらミストが飛び込んでくる
二人とも可愛いな人間じゃないけど
二人に両方から抱きつかれながら慰めていると
牢番が朝飯を運んでくる
少しのパンと水
まぁ囚人扱いだからこんなもんだなと思っていると
アンが不意に調理台を出して料理を始める
「坊っちゃまにこんな物を食べて頂くわけにはいきません」
いつものようにテーブルを出し
料理が並んで行くミストは悪びれもせず椅子に座り並ぶ料理に瞳を輝かせている
騒音を聞き牢番が駆けつけてくる
「おいおい何してんだ?あんたら」
「坊っちゃまのお食事はメイドであり正妻であるわたくしの仕事でございます!」
「まぁまだ囚人じゃないから良いけど火事は気をつけてくれよ」
牢番はおおらかに笑い去っていく
牢屋に居ながら
塩気の強いハムのサラダに
チキンのトマト煮
焼きたてのパン
まるでレストランのような料理が並び
三人で仲良く食べる
食後のデザートのチーズケーキと紅茶を飲んで
まったりとしていると
鉄格子の嵌った窓の外から大きな爆発音が聞こえ人々の叫び声が聞こえてくる
大きな音に飛び起きたミストが俺に肩車されながら窓から覗き込み外の様子を伺う
「なんか、緑色の龍が暴れてる」
「それは、まずくないか?」
そんなどこか緊張感に欠けるやりとりをしていると俺達の入れられている牢屋の屋根が吹き飛ぶ
青空が見える、あー今日も快晴だな!などと呑気に構えていると
アンが
「さあ!坊っちゃまわたくし達の愛を阻む牢は無くなりました自由ですわ!」と俺の手を引き外へと連れ出す
これって脱獄じゃない?
とても短くてすいません




