精霊と新しい仲間
ゴールドフッドの南
山の中に大きな湖が現れる
その澄んだ湖には一メートルを超す魚や
その倍は有る湖の主などもいて
地元の釣り師たちを夢中にさせる
澄んだ湖には精霊が住むと昔から言われ
この湖[イーグノ湖]にも精霊が住み着いていた
駅馬車はゴールドフッドの街を出て
なだらかな坂道を下る
峠道だが道幅は広く馬車はゆっくりと坂を下って行く
「坊っちゃま?名残惜しいので?」
「え?い、いや次の街はどんなところかなぁって考えてたんだよ」ミランダの裸体が頭から離れない
「それならば良いのですが、あんな女の事を思いだしているのかと思いまして」
「い、いやそ、そんな事ないよ」しどろもどろになりながらこたえる
「坊っちゃま」
アンのジト目に睨まれながら
俺は目を逸らし長閑な旅は続く
前を行く護衛は蜥蜴の頭を撫でながら
危険地帯では無いのかどこかリラックスしている
此処に危険がありますよ!と言いたい
俺達の他には商人風が二人、親子、カップルの計9人、馬車はバスのような形をしていて席は横並び窓はあるがガラスは無く風が心地よい
窓から風景を眺めながら馬車に揺られる
峠を下りのどかな田舎道を抜けまた峠を登り
途中幾度かの休憩を挟み本日の停留所に
大きな湖のほとりに到着する
湖は透明度が高く澄んだ水は透き通っていた
馬車の疲れを体を伸ばしほぐしていると
小さな子供に見られているのに気づく
膝の高さくらいの小さな子供
あれ?子供にしても小さすぎやしないか?
そんな風に思っていると声をかけられる
「おい、小僧母ちゃんはどうした?」
うん?母ちゃんを知っているのか?てか、お前もお嬢ちゃんだろ俺より小さいくせにと思いながら
「どうして?」
尋ねてみる
俺の頭の上を指差して
「精霊版に書いてある」
どうやら精霊眼が使えるらしい
「これが見えるんだ?」
俺には見えないが
「精霊だからもちろん見える」
精霊らしい
「これは、母ちゃんのイタズラだよやめて欲しいけど消し方も分からないし」
気にしたら負け
「チカチカしてとても迷惑イタズラなら消しても良いか?」
「え!これ消せるの??」
「もちろん消せる精霊だから」
「お願い!困ってたんだ」
「わかった」
そう言い小さな精霊がおれの肩に乗り何も無い所を指で押す[パチ]とボタンのような音がして精霊は肩から降りる
「早く成人の儀式を受けないと迷惑」
と言葉少なに叱られる
「母ちゃんが認めてくれないんだよ何とかならない?」期待しながら尋ねてみる
「呪いの数が多すぎて無理じゃあな小僧」
肩を落とし精霊の後ろ姿を見つめる
まぁ派手な看板が消えただけでも大満足だな
アンに頼み魔術で見てもらうと何も出ていないと喜んでいた
俺には何にも見えないんだけどね
湖のほとりにテントを張りアンは夕飯の支度に取り掛かる
塩漬けの魚を使ったキノコたっぷりの
ぺぺロンチーノパスタ
ポタージュスープ
アンチョビ風の魚の入ったサラダ
アンが居れば食事は何処にいても困る事は無い
席に座ろうとすると先に精霊が席についていた
「どうしたの?」
「美味しそう、お礼貰ってない」
匂いに釣られてやって来たみたいだ
「アン、追加で作ってあげて」
アンにそう頼み追加の料理が手際よく並ぶ
相手が大人の女性じゃ無ければアンは機嫌良く作ってくれる
精霊は目の前のご馳走を凄い勢いで周りを気にせずに食べている
食事を始めようとしたアンに「おかわり!」
と叫んでいる呆気に取られたアンがこちらを伺う
肯定するように頷く、アンは自分の分を精霊に渡して調理台へと向かう精霊はその後4度おかわりをして「もう入らない」との言葉を残して湖へ
あの小さな体の何処に入ったのか不思議に思いながらアンにお礼を言う
「とんでもございません坊っちゃまのためですから」と微笑みながら冷めた俺の料理を魔術で温めて一緒に食べ始める
「そう言えばデザートを出すのを忘れていましたわ」食事が終わりココアシフォンケーキと紅茶を手に持ちアンが呟くと
いつのまにか席に座っている精霊
俺がジト目で睨んでいると
「自分ばっかりずるいあたしも食べる」
俺も精霊について聞きたい事があったので
アンにケーキを頼む
精霊は基本、森か湖を好んで生息しているらしい
性格は温厚で困ったエルフに手を貸してくれる
精霊魔術を使いそれなりに強いらしい
精霊の儀式は親の承諾が必要
などなど
その後精霊はケーキを8個も食べ満足して帰って行った
テントに戻り明日の予定を話し合い
アンの腕に包まれて仲良く眠る
翌朝、とてもよく晴れ湖に霧がかかる地元のひとが朝早くから釣りをしていた
何が釣れるのか聞くと
「大きなマスがつれるんじゃ」
そういったお爺さんの竿が弓なりに曲がり1メートルを超す大きなマスを釣り上げドヤ顔でこちらを見る「ほれ、持ってけ!」
お爺さんは男前な笑顔で釣ったマスを俺にくれた
「朝飯ができた」ふと足元を見ると精霊がいた
「朝飯食べる?」と聞くと
「もちろん」と答える
朝から豪勢にマスの姿ムニエル様々な香辛料とバターの香りが胸焼けを起こしそうになるが
精霊は勢いよくがっついてる
デザートは出ないのか?などとアンに文句を言いながら一向に帰る気配を見せない?あれ?こいつ居座る気か?アンが
「デザートは昼食と夕食のみで御座いますわ」
微笑みながら答えている
「そっか昼飯まで我慢するか」
あ!こいつ付いてくる気だ!
「精霊、俺たちに付いてくるのか?もうここから出発するけど?」そう尋ねると
「う〜ん此処は居心地が良いんだ小僧お前此処に住め」悩みながら出した答えは酷い物だった
「いや、無理に決まってるだろ、俺達は旅をしてるんだよ一箇所に留まるのはもっといろんな所を見てから決めたいんだ」
「わかったよ」
諦めた
「付いて行ってやるよ」
違った....誰も頼んではいない
アンの方を見ると
「私は構いませんよ?まるで二人の子供みたい、うふふふふふふふふ」微妙に壊れていた
「まぁ付いてくるなら良いけど迷惑は掛けないでくれよ?」仕方ないので同行を認める
「迷惑かけるなってあたしのこと子供みたいに言わないで」そう言うと精霊の体が水色に光り膝下くらいの身長が俺より少し大きくなった
精霊はとてもスレンダーな体でいてなぜかとても女性的な雰囲気を醸し出していた
腰まである金髪、スレンダーではあるが主張している胸くびれたウエストシャープに丸みを帯びたお尻
俺には精霊眼はないが女体観察眼は有る
アンとはまた違った良さがそこにはあった
アンが驚愕の顔で
「あ、いや、ちょ!だ、だめ、駄目ですわ!やっぱりだめーーー」と叫ぶも時すでに遅し
精霊は馬車の切符を買いに走っていた
精霊の名はミストラルフィアー
ミストと呼んで欲しいそうだ
新しい仲間?が増え少しだけ賑やかになりながら馬車に乗り込むアンは納得していないが
自分から構わないと行った手前なにも言えずにいるようだ
なにも起こらないといいけど......
最後まで読んで頂き有難うございます
もしよければ評価頂きますと
やる気につながります




