祭りと初キス
10ランクの鉱石を混ぜ合わせて精錬する事で
様々な特徴を持つ金属を生み出す事ができる
例えば鉄鉱石と黒鉱石を混ぜ合わせて黒鋼
桃鉱石と青鉱石と金を混ぜ合わせてオリハルコン
精錬には確かな知識と技術を必要とする
熟練の精錬工をもってしても魔法金属と言われる
精錬の成功率は低い
新作の武器を試作するミランダは
黒鋼を芯に桃鉱石と金を混ぜた粘りのある金属で挟み剣を何度も作る。納得のいくものが出来るまで食事も取らず睡眠さえ忘れてひたすらに鎚を打つ
朦朧としながらも何かに取り憑かれたように鎚を振るい一心不乱に剣を打ちつづけた
振るう鎚や火床は一般的な魔道具であり
驚く早さで金属を剣へと変えていく
昨日から何本もの剣を叩き
やっと納得のいく一本の剣が出来上がったのは
祭り当日の朝だった
目が醒めるとアンがこちらを見つめていた
「おはよう、どうした?」
「愛しい坊っちゃまを独り占めしているところですわ」思わず微笑みアンの胸に顔を埋める
今日から祭りが始まるらしいのだが
どこで何をするのかを知らない
ミランダが武器のコンテストに出場する為に新作の武器を作っていた事しか分かっていない
取り敢えずギルドに行き祭りの予定を聞かなくては。ベッドから起きだし身支度を整える
必ずアンがお手伝いをする。下着姿でブーツを履いて、この青紫の髪の毛と真っ白な肌、純白の下着にブーツこれが良いんだよなぁ
などと思ってはいない!
庭で簡単な朝食を食べ(パンケーキとミルクとくるみの入ったサラダ)取り敢えずギルドに向かう
アンはベタベタとくっついて離れないがまぁ嫌な気はしない、周りの目は痛いが
アンのエプロンドレスは何着もあり色も気分で変えているみたいだエプロンにも細やかな柄が入っている。薔薇に似た花や牡丹の花、鯉のような柄
今日は紫色に金魚のような魚のがらのエプロンをつけている
これで眼鏡を掛けていたら完璧だなと心で思っていたら「坊っちゃま何か?ご不満がございますか?」と尋ねて来たので
「いや、眼鏡がきっと似合うと思っただけだよ」
と答える
まるで、雷に打たれたように
「眼鏡!坊っちゃまはメガネっ子がお好きで?」
となぜか鼻息荒く食いつく
「まぁ嫌いじゃないよアンに似合うと思ってね」
大好きである!
「了解致しました!アンはメガネっ子になります」拳を握りしめ宣言している
ギルドに着き受付のゴリゴリに祭りの場所や見所などを尋ねる、すると
「まぁ、何と言っても鍛冶屋たちの新作武器の品評会がメインだわな!出品するのも審査するのもこの街の鍛冶屋が行うんだ一人一票を自分の武器以外に入れる一番多かった物が大賞だ、大賞を取ると1年間は街一番の鍛冶屋と呼ばれる」
「メイン会場はこの前の広場だもうそろそろ準備している鍛冶屋もいるはずだぞ」
その他は素人の鍛冶屋体験だとか
鉱山の体験だとか出店で武器を売ってるとか
お祭りにふさわしい盛り上がりを見せるとの事
広場に行きミランダを探してみる
広場のあちこちにおっさん達が自慢の武器を台に乗せ美術館の様に展示して側で説明していた
「この槍は黒鋼で出来ていてどんなに硬い魔物も一撃で仕留める事ができる!」
「この剣は青鋼で作っているので刃こぼれなんてしない!どうだいすごいだろ!」
なぜかミランダの姿がない?
もしかして間に合わなかったのか1日しか無かったしなと店に顔を見に立ち寄る
途端に不機嫌になるアン
「こんにちわーミランダいるかい?」
応答は無く奥から物凄く大きなイビキが聞こえてくる「ぐーがーぐーんっ!がーごー」
あれ?寝てるのかと奥の工房を覗くと
なぜか裸のミランダが大の字で寝ていた
大事な所も丸出しで
「え!何で裸で寝てるの?」とのオレの言葉に
アンが視界を塞ぎ「坊っちゃま!目が腐ります」
お下がりくださいと店舗に押しやられる
もう少し堪能したい気持ちもあるがされるがまま
アンが工房へと戻り奥の方から
「この!痴女が!なんて格好をわたくしの坊っちゃまに見せるの!」と、ピシッピシッと叩く音と悲鳴が聞こえる
少ししてきちんと服を着たミランダが奥から出てくる「ごめんね、集中し過ぎて訳がわかんなくなって寝てたみたいだ」風邪引くぞ
「あぁ、いやそれは構わないけど広場に行かなくて良いのか?もう他の鍛冶屋の展示が始まってたけど」と告げると、みるみる顔色が悪くなり
「今、何時?」
「お昼前だよ」
「きゃあーーーーーね、寝過ごしたー」
と大慌てで剣を持ち店から飛び出して行く
すぐに戻って来てこれじゃ無い!と
他の剣を握り再び飛び出して行く
会場は早いもの順で場所を決めるのでミランダは隅の方で剣を持ち立ち尽くしていた
他の人が一生懸命に説明しているのにミランダは
一言も発していない、どうしたのか近寄ると
「ぐーぐーぐー」立ったまま寝ていた
おいおい、と声を掛けて
やっと説明を始める
「私の作るこの剣は硬さと粘りが融合した全く新しい剣になります!」
隣で話を聞いていた鍛冶屋が
「おい!適当な事を言うな!そんな相反する性質を一つにできる訳ないだろ!!」
激おこである
「その証拠に鉄を斬ることも出来ます!」
え!出来るのと驚いた顔で隣の親父が食いつく
ミランダが実演する
鉄の塊を見事に斬り刃こぼれ一つない事を証明してみせる
刃こぼれ一つない事に鍛冶屋の親父達が賞賛の嵐を送る
投票の結果見事大賞に輝くミランダ最高の笑顔で賞賛を受けていた
受賞式が終わりミランダが俺に
「ありがとう、そういえばまだ名前聞いて無かったわ」
「アレックスだ」
「ありがとうアレックスあなたのおかげで大賞を取れたの、新しい武器は是非とも私に任せて!」
俺は桃鉱石でハンドアックスを注文する
翌日出来上がりを確かめに工房に訪れる
ハンドアックスは桃色に輝き芯には黒鋼をもちいている細かな彫刻が細部に施してありとても手の込んだ逸品に仕上がっている
値段を尋ねると
「これくらいただで当然よ後これも受け取って♩」と不意に俺に抱きつき唇にキスしてくる
「うふふ私の初キスよ」呆気に取られていた俺は
背後からの悲鳴で我に返る
「な!な!な!なにするのよこの小娘がー!!」
飛び掛かろうとするアンを慌てて抑える
してやったり顔のミランダ
こちらを向き大粒の涙をこぼしながら
「坊っちゃま!許せませんわ!」と叫んでいた
「坊っちゃまの初キスはわたくしのものなのに」と怒り心頭でプルプル震えながら泣いていた
仕方ないのでキスをする
本当はもっと良い雰囲気が良かったが暴れると止められないから
軽くキスするつもりがアンに頭を抑えられ大人のキスを長い時間される、なぜか襲われた気分だ
目がハートマークのアンは振り返りミランダに
あっかんべーをしていた
さぁ行きましょう坊っちゃまと腕を引かれ
俺はお礼を言いながら店を後にする
祭りも終わり鉱山も観光したのでそろそろ次の街に行くかと考えながら宿に戻る
アンのスキンシップが激しさを増して行く中間違いを一つ正しておく「俺の初キスは3歳位だ」
いやーーと響くアンの声が迷惑なので慌てて口を塞ぐどこでなんて野暮な事きかない
ちなみに初キスの相手はポチだ顔中舐め回された
そう、俺はあの時汚されたんだ
この後ミランダは謎の性病に罹りそれ以来男性
不信になる鍛冶一筋の人生を送り聖鍛冶師の称号を手に入れる
それはまだ先の話
如何でしょうか
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