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メイドごーれむと異世界転生  作者: じゃこさぶろう
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鉱山見学とヤキモチ

「班長!ギルドからの返事は?」

「いや、まだ何もない!」


「どうするんですか!このままじゃ街に被害が出ますよ!」


「分かってるよ何度も要請してるんだ!アイツらマイトで穴ごと塞げって馬鹿な事いいやがる!」

「本気ですか!そんな事をしたら大損害じゃ済まないですよ」


「だから!分かってるって言ってるだろ!ギルドの者に話を聞きに来いって連絡を入れた!もう少し待ってろ!」

「封印がいつまで持つかわかりませんからね!」


「分かってるよ分かってる」


街から連なる、鉱山の入り口へとやって来る

入り口はとても大きく、馬鹿でかいトンネルのようだ。


200メートルほど進むと、そこには吹き抜け展望台のような広場があり、手すりにつかまり大きく掘られた地下と、とても高い天井を眺める。地下200メートルくらいの所が最下層のようで、小さな人がせわしなく動いていた。天井を眺めても暗くてよく見えない。どれだけ高いんだろう?


壁一面横に廊下のような搬出通路が並び、採掘用のトンネルが等間隔で作られている、まるで団地のマンションのようだ。


真ん中に昇降機を備え、上に下に鉱石を運んでいた。その全てが吹き抜けを横切る橋を渡り、この階を通じて外へと運ばれて行く。


橋の手前に受付があり、訪れる人々の対応をしていた。

「はーい、観光の方は右側の列にお並びくださーい」若い女の子が元気に声を上げている


「入場料は銅貨6枚です。9枚で案内冊子が付きますので是非そちらも良かったらどうぞ〜」

俺達は依頼で来ているので左に並ぶ


「お兄さん!そっちは従業員専用なんだ、観光はこっちこっち!」女の子が俺達を右側に手招きする


「冒険者ギルドの依頼で来たんだ、観光も兼ねてだけどね」笑顔で答えると少し驚いたように


「お兄さん冒険者なんだ?すごく若いのに苦労したんだね」苦労はしたがそんな可哀想な人を見る目で見て欲しくはないな


何か勘違いしている気がして「鎧蠍の駆除の依頼だよ?」と告げる


「あ!なんだそっちか、そっかそっかじゃあ奥の事務所の方に声を掛けてもらえる?」

女の子は何か納得したらしく奥の事務所を指差す


事務所の扉をノックして

「すいません、冒険者ギルドの依頼でやってきました」と告げると、奥から髭ダルマのようなおっさんが出てきて


「なんだとぉ?冒険者ギルドから来たぁ?」

「はい、依頼で来ました」


「ふざけんな!こんな子供にやらせられるか!おい!ちょっとギルドに文句言いに行ってくるぞ!」と、髭ダルマが激おこで事務所を出て行こうとする


「あ!すいません鎧蠍の件です」と告げる

髭ダルマは、あん?みたいな顔で思い当たったらしく、「なんだ、鎧蠍の件か早く言ってくれよ」

と急に疲れた様子で椅子に座りながら


「おーい、蠍出たの何処だっけ?」と部下に尋ねる


「B-16のL-25ですね4匹発見されてます」


「地下16階の左通路25番採掘場だな、番号書いてやるよ」髭ダルマが紙に番号を書き「昇降機の前で係りの者に渡すとそこまで連れて行ってくれる」と教えてくれる


お礼を言い昇降機に向かう大きな橋を渡る橋から下を覗くとあまりの高さにすこし膝が笑う

隣を見るとアンがじっと下を見ていた


「怖いのか?」尋ねると

「いえ、人間の力は偉大だなと思いまして」


そうだな、と答え昇降機にたどり着く

髭ダルマに貰った紙を見せて魔物の発見場所まで案内を頼む


トンネルには板が打ち込まれ入らないようにしてあった、板を外し魔道具のランタンのようなものを渡され奥へと入っていく。

奥までは一本道なので迷うことは無いそうだ


5分ほど歩くとカサカサと何か動いている

70センチほどの蠍が壁を伝い天井に張り付いていた


「アン、天井の蠍落とせるか?」

「任してください!」アンは胸を叩き火の玉を右手から蠍に向けて打ち出す


「ドゴ!」と言う音と共に蠍の丸焼きが落ちてきた。まずは一匹


その後、三匹同じようにアンの火の玉で駆除する。

楽なのは良いが、俺はもしかして髪結いの亭主なのか?などと憂鬱になりながら、四匹の蠍を手にトンネルを出る。


事務所に戻り、ヒゲ達磨に完了報告を入れようと扉を開くと、何か言い争いをしているようだ。


そこには、ギルドのゴリゴリがいて髭ダルマと言い争っている。

「ダルマー何度も言っているだろ!鉱石の精霊なんて倒せるPTはこの街にはいないんだ!!」

髭ダルマはダルマーというらしい


「ゴーリ!そんなこたぁわかってんだよ!そこを何とかするのがお前達の役目だろ!マイトで穴ごと塞ぐなんて承知出来るわけないだろ!!」

ゴリゴリゴリの親父はゴーリと言うみたいだ


「しかも!今回のは桃鉱石の精霊らしいじゃないか!BクラスのPTでやっと倒せるかどうかなんだぞ!!街に被害が出る前にとっとと穴ごと塞ぐのが1番に決まってるだろ!」


鉱石にもランクがあり

銅鉱石、鉄鉱石、黒鉱石、銀鉱石、金鉱石、

紺鉱石、青鉱石、桃鉱石、紅鉱石、虹鉱石

の10ランク。長い年月を経て鉱脈に精霊が入り込み極稀に鉱石精霊として坑夫に被害をもたらす


「だから!桃鉱石がどれ程の価値があるのか知らない訳じゃないだろ!!坑夫の俺がそんな事出来るか!!」


そんな言い争いをしていたその時、外が急に騒がしくなってきた


扉が勢い良く開き「班長!鉱石精霊が封印を突破しました。もう、そこまで来ています!あとは任せて直ぐにお逃げください!!」

盛大なフラグを立てておっさんが外に出て行った

直ぐに「ドカ!バキ!」と聞こえ

ゴーリとダルマーが仲良く外の様子を伺う


一緒に外を伺うと、いびつな人型をした桃色に輝く鉄の塊が暴れていた。鉱石の精霊である

稀少な鉱石の塊がギクシャクしながら暴れている


この後に及んでも二人はマイトだ!いやダメだと言い争いをしていた。そんな場合じゃないだろと突っ込みたいが先にアンに指示を出す


「アン!アイツなんとか出来そうか?」

「坊っちゃまお任せ下さい」


アンは気負いなくツカツカと近寄りギクシャク動く鉄の塊の足を引っ掛け転がして手足を捥いでしまう。


相変わらず、『力技』で戦闘技術は皆無、そんなアンが精霊の頭をブーツで蹴り飛ばす、頭は物凄い勢いで壁に当たり爆散する。


ゴーリもダルマーも口を大きく開けて唖然としていた


精霊は頭を失ったにも関わらずギクシャクと動いていた、するとゴーリが「頭じゃ駄目だ!胸にある水晶を壊すんだ!」


それを聞いたアンは、精霊の胸から水晶を外す。

途端にスイッチが切れたように動かなくなる精霊


ゴーリが「いやぁ助かったよ。一時はどうなることかと」と笑顔で語りかけてくる


ダルマーも「ほんとに助かった!ところであの精霊はどうする?あの量じゃ持ち運びなんて出来ないが?」と、まるでこちらに寄越せと言う態度が鼻に掛かったので


「いえ、大丈夫です。アン頼む」とアンに指示を出し


「はい!坊っちゃま」とおもむろに鉱石の塊をポーチに入れる


ダルマーは

「あ!ああ!あ」などと呟いていたがスルーで


鉱山をたっぷりと堪能してからギルドに戻り、依頼の報告を済ませる。精霊の退治は依頼が出されていないので報酬は無いとのこと。まぁ鉱石がかなりの金額になるので我慢してくれと言われ、

なんだか騙されたような気がするが

考えてみたら俺は何もしていないので黙って頷く


お金と鉱石が手に入ったので、新しい武器でも作るかと街の工房を見て回る、中々いい武器は無い


少し早い夕食の為、公園の隅で準備を始めるアンを眺めていると木陰から呻き声が聴こえてくる。


「あーーうーーはーん?あーうーん!おー」


なんだ?と木陰に近寄ると頭を抱えた娘がいた

「どうしたの?調子でもわるいのか?」

尋ねるが返事は無い、ヤバイのか?と思い近づく


「どうした?大丈夫か?」

俺の問いかけに顔を上げ驚いたように


「わ!な、なに?誰あんた!」

「いや、苦しそうに呻いてたから調子でも悪いのかと思って声を掛けたんだ。」赤毛の娘は、化粧っ気は無いが美人の部類に間違いなく入る。


「あ、あぁ!ごめんごめん。祭りに出す新作の武器の事で頭がいっぱいいっぱいなんだ。中々良いアイデアが思い浮かばなくて。」娘は鍛冶屋らしいそこへ

「坊っちゃま御食事の御用意が整いました」と、なぜか少し機嫌が悪そうなアンが声を掛けてくる


わかったと頷き立ち去ろうとした時

[ぐ〜〜〜〜]と、とても女性のお腹が鳴ったとは思えない程大きな音が娘から聞こえる


娘は顔を赤くして俯いている。俺は自分の新しく作ろうと思う武器の事を聞きたくて一緒に食事でもどうか?と誘う「え?いいの?」おずおずと答える


俺は「ああ、アンもう一人分作ってくれ」

とアンに頼む、何故か不機嫌なアンが

「畏まりました」と短く答え調理台の方へと向かう

まさか?怒ってるのか?などと考え椅子を一脚だしてもらい娘に話を聞く


「新作の武器と言うことは、お姉さんは鍛冶屋なの?」不機嫌なアンが物凄く大きな炎で調理している、まるで中華の達人のように


「え、ええそうよ。ミランダ武具というお店をやっているわ。とは言っても父親の残した店だけどね」と不安そうにチラチラアンを見ながら答える


「どんな武器を作ってるの?俺も丁度新しい武器を探してるんだ」アンが調理台に肉の塊を何度も叩きつけて叫んでいるが肉の繊維を柔らかくする為のはず「くそがぁ!坊っちゃまと二人っきりの時間が台無しだ!」静かに料理してくれないかな?


「一応基本の武器はどんな種類でも作れるわ、ただお祭りに出すとしたら普通の物じゃ駄目なのよ」


悩みが深いらしくアンの叫びは聞こえていないみたいだ。何故かダンクシュートのように調理台に肉を叩きつけている、もう見た目にも大分柔らかくなっているぞ、アン!


テーブルに料理が並び準備完了さて食べようか...

いつも向かいに座るアンが左隣に寄り添うように座り無言で食べている


娘が「凄く美味しい!」などと褒めているが


「二人っきりならこの倍は美味しいのに」とか聞こえないほどの小声で呟いている


後でご機嫌を取らないとな


食事が終わり、『新しい武器の事なら相談に乗るわよ』と約束し娘の店の場所を聞きまた明日伺う約束をして別れる。


宿屋に戻り、アンが作った部屋着に着替えて寛いでいると不意にアンが

「坊っちゃま!アンは坊っちゃまにとって何番目に大事な物ですの?」と瞳に涙を浮かべながら真剣な眼差しで問いかけてくる


直ぐには答えずにアンを手招きしそっと抱き寄せる「俺にとってアンは物じゃ無い一番大切な女性だよ」と瞳を見つめながら答える


そっと瞳を閉じるアンの頬にキスをする

「もぅ坊っちゃま!」頬を膨らませて俺を睨む

うん、コイツ可愛いな


機嫌の直ったアンが

「さぁ!坊っちゃまいつものようにアンの胸に顔を埋めて!さぁさぁ」といつもより積極的なのは、ヤキモチを焼いていたんだなと少しだけ罪悪感


明日、武器の相談に行くんだけど

そんな事を至高の『ぽにょぽにょ』に包まれながら

微睡み考える



如何でしたでしょうか?


面白かったと思って頂ければ

良ければ評価してください


やる気につながります

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