ゴールドフッドにて
工房の奥でミランダは大きな溜息をついていた
もうすぐ始まる建街祭で披露する新作の武器のイメージが未だに固まっていなかった
この街は沢山の職人が腕を磨き
建街祭でのお披露目を目指し日々精進している
ミランダは雑念にまみれながら打ちあげた剣を放り投げる
「はぁぁ、やっぱり駄目だこんなんじゃ笑われちまうよ...父ちゃん」
父は昨年亡くなり工房を継いで初めての一人でお祭りに挑む不安に押しつぶされそうになりながら
いちから紙にイメージを書き起こす
後の世に聖鍛治と呼ばれる彼女もその才能を十全に発揮する事なく思考の迷路を彷徨っていた。
馬車の行く道は、徐々に険しい山道へと
変化していく、馬車を引く馬の為に、休憩を何度も挟み旅は終わりを告げようとしていた。
鉱山に囲まれた街[ゴールドフッド]
鉱山で働く人々が住み着き、街へと発展していった歴史が物語るように、家と工房の間を縫うように細い道が走る。整然と整った街並みとは違う趣きに、
旅人は皆圧倒される。
街の彼方此方には鉱物を取り扱う店
鉱物を加工する職人が数多く店を構え切磋琢磨していた
「なんか、雑多な感じがする街だけど嫌いな雰囲気じゃないな、心地いい狭苦しさがある」
なぜか押入れが落ち着くそんな狭苦しさがある
「あら坊っちゃま?ちょうどお祭りの季節みたいですわ」街の入り口には、(建街祭)とのタスキが大きく掛かっていた。
「へぇ〜お祭かぁ、楽しそうだなぁ〜」
こっちの世界で初めてかもしれないな?
などと思いつつ馬車は指定の駅へと止まる
「お疲れ様でしたお客様、またのご利用お待ちしております」少しも疲れを見せずに、行者は次の目的地への客を待ち馬車のメンテナンスを始める。
俺達は行者にお礼を言い
街の中心にある宿屋に部屋を取る。2週間で金貨1枚
物価が王都より少し安いのだろう
まずは、街のギルドに行き街の地図と簡単な依頼を見に行く。ギルドは質実剛健な作り
飾り気は無く、受付にはゴリッゴリの親父が座っていた
ギルドの奥にある、依頼板を斜め読みする
1番左に貼ってある海龍の討伐は、王都のギルドでも見た依頼だが、達成済みと書かれていた。
ギルドも頑張ってるじゃないかと感心していると
ゴリッゴリ親父が「どうした?坊主?」と声を掛けてくる
「いえ、海龍が討伐されたんですね凄いなと思い」急に現れたゴリゴリにビビりながら答える
「あぁ!この世界に新しく現れたPTが単独で討伐したらしい、今龍王国ではお祭騒ぎだ!」
単独PT?勇者みたいだなぁと他人事に思っていると
「なんでも男と女と狼のPTらしい!」と目を輝かせて興奮しながら説明する
俺は、何故か嫌な予感がする?「男と女と狼?」
「あぁ!なんでも魔法使いの女が魔法で仕止めたらしい、王国では『黄緑の聖女』として大人気らしいぞ!この国にもお披露目できてくれないかね!」
なぜか、汗が止まらない....まさか...ま、まさかな。
いくらなんでも...な
なぜか、悪い笑顔で高笑いする母ちゃんとポチを幻視する。
気を取り直して、ゴリゴリに簡単な依頼で名所巡りなんかできるものはないかと尋ねる
「名所巡り?なんでぇ坊主は冒険者しながら観光でもしてんのか?」
「新婚旅行ですの」とアンが間髪入れずに答える
「おいおい、坊主...お前嫁さんにメイドの格好させる趣味とは業が深いなぁ」呆れながら呟く
「坊っちゃまのためならどんな格好でも致しますわ!それが[妻]であるわたくしの務め!」
うん、少し黙ろうか
「まぁいいや、観光なら鉱山に行くと良い。いまなら..ちょっとまてよ、あ!あった(鎧蠍)の討伐、これだな」
「この蠍はそんなに危険ではないんだが何年かに一回は死亡事故が起きる魔物なんだ気を抜かない限りは安心なはずだ、コイツは鉱山の鉱石を勝手に食べてその身に纏い身体を強化しやがる毒はないが食べた鉱石で強さが変わるからまぁそこだけ注意しといてくれ」
依頼を受け何故か嬉しそうなアンと共に街中を散策する
不意にアンが
「坊っちゃま、さっき否定なさらなかったのは何故ですの?」と上目遣いで訪ねてくる
「さっき?」と不思議に尋ね返す
「もぅ!いぃですわ!」と頬を膨らませて拗ねている
ああ、妻ではないと否定しなかった事かと思い至り
「アンは妻みたいなもんだ、いま居なくなったら困るし寂しくなるからな」とアンの背中に呟くと
「まぁ!ぼ、坊っちゃま!もぅ」とクネクネしながらとても嬉しそうに腕を組んでくる
快晴の空の下美人と腕を組みデートなんて
[ごーれむでもいいじゃないびじんだもの]
と頭をよぎる言葉を胸に幸せに包まれながら特に左肩のあたり、街を二人見て回る
少し短めです
よければ評価ブクマお待ちしてます
左肘を左頬に変更致しました




