食材以外はNGです
自由連合国の旧王都にある一番高級な宿屋で悪態を吐く男が一人
PT名[白と黒の残像]
リーダーのインザーギ世界でも数少ないAランクの冒険者である。
「どうした?インザーギ?」
「ふん!ギルドの馬鹿供が地龍の討伐を名指しで依頼して来やがった」黒髪の痩せた男、目元はキツく人相は悪い。ちなみに性格も悪い
未だに海龍の討伐に自分たちが選ばれなかった事を妬んでいた
「クソが!あんな金髪に俺達が負けるわけ無いんだ!こんな地龍なんて地味な仕事やってられっか!!」手紙を丸めて投げ捨てる
「でも、インザーギ指名依頼は断れない」
仲間が口にすると忌ま忌ましそうに
「分かってるよ!用意しろ早く!」
仲間にまで癇癪を起こしている
ブツブツと文句を言いながら
インザーギは腰にレイピアを差し込み肩からマントを掛け豪華な部屋を後にする
後には仲間達がゾロゾロと付き従う
インザーギのPTは6人組、盾、剣士2、盗賊、魔法、治癒のバランスが取れたPTだ
盾役のクリスと二人でギルドに説明を受けに行く
「つまり、親子連れの地龍の討伐だな?」
「ええ、そうなんです。いま、カルロスさんが海龍の討伐に向かっている為インザーギさんしかいないんですよ。」
その言葉にプライドを傷つけられながら
「あんな金髪野郎より俺たちの方が優れていると思い知らせてやる!」と意気込んでいた
「おいおい、落ち着け」クリスの言葉も耳に入らないほど興奮している
準備を整えてダンジョンへと向かう
ギルドの話しでは深さは3階広さも大した事は無いらしい。地龍は何度も仕留めているのでそんなに緊張する相手でも無い心配はなさそうだ。
俺とアンは余った素材をギルドに卸に来ていた
「やあ!アレックス君買取で良いんだよね?」
職員が俺達に飛びついてくる
「あぁ、余り物で申し訳無いが」
とアンに指示して素材を買い取りの受付に持っていく
「いや、充分だよ!全て買い取らせて貰うからね!」職員は興奮しながら素材を奥に持っていき鑑定を始める少しして袋を一つ素材と一緒に持ってきた
鑑定の結果と買い取り金額を書いた羊皮紙を俺に渡す。金貨64枚で買い取ると書いてあった随分高いな?と思いながら
「この金額でよければここにサインしてくれないか?」と促される。
契約書にサインして金貨の入った袋を受け取り中身を確認する。64枚確かにあったので袋ごとアンに預ける
さて、どうしようか?と考えていると
「アレックス君昨日のダンジョンに母親の地龍もいたようで向かったPTは、ほぼ全滅してしまった様だよ本当に運が良かったね」
と職員が話す
「それじゃぁ森には入れないね?」
親の地龍はAランクの魔物だと説明していたのを思い出す。
「いや、王都の中でも有名なPTに指名依頼してあるからもう安心だよ。彼らは何度も地龍を仕留めているからね、あ、噂をすれば彼らがそのPTだよ」指差す方に
神経質そうな痩せた男と体格の良い男が職員と話をして何か怒鳴っていた。
俺達には関係無いので依頼板を斜め読みしながら森での採取がまだ達成されていないので
昨日と同じ森へと向かう
キノコとツノを求めて。
◆◆◆
ギルドで説明を受けた通り
ダンジョンに出てくるのは獣に毛が生えたような雑魚ばかりだった
盗賊のディディエを先頭にダンジョンの中を進んでいくダンジョンの中はなぜか薄明るく光る
年月の経過で深くなりなぜか明るい事から一般的にダンジョンは生きていると考えられている
目的の3階まであっという間にたどり着く
道中の雑魚は蹴りのみで処理するレイピアを抜くまでもない
奥の部屋に続く長い廊下の途中でディディエが止まるように合図する
緊張感が高まりディディエが静かにドアから様子を伺う、音も無くこちらに戻って来て部屋の中の様子を報告する
部屋の中には子供の地龍が居り母親はその奥の壁を掘り進めているようだ
「どうする?」絶好の機会だと皆の意見が揃う
幾ら子供でも二匹よりは一匹づつの方が仕留めやすい。
扉の前にゆっくりと気付かれないように近付き
強化魔法を掛け、魔法使いは氷結の魔法を唱え盾を構え剣を抜き一気に部屋の中へと突入する
呆気に取られている地龍の子供の脚を氷結の魔法が凍らせる嚙みつこうとする頭を盾で受け止めて左右から剣で斬りつけレイピアを刺す
強化魔法のおかげか剣はほぼ首を断ち切り
レイピアは根元まで深く刺さる
三本脚のせいもあって踏ん張りも効かず
その場に崩れ落ちたレイピアの一撃で心臓を貫きトドメを刺す
子供の鳴き声を聞いたのか壁に開いた大きな穴から母親の地龍が姿を現わす、我が子の変わり果てた姿を見て怒り狂っている。
一度後ろに下がり態勢を整えるインザーギ達を見向きもしないで子供の側へと駆け寄る
ダンジョンが震えるほどの大きな声で叫びおもむろに子供の遺骸を食べ始める。
インザーギが「しまった!」と口にするも時すでに遅し。「撤退だ!!」と仲間に急いで脱出する様に促す。
地龍の母親は子供の魔石を吸収する事で亜種へと変化しようとしている、身体は金属の様に鈍く輝きその瞳には復讐の炎が燃えていた
一目散に走って逃げるインザーギを仲間達が追いかけてくる。その後ろから物凄い勢いで母親の地龍の亜種その身体はブロンズに包まれている
ブロンズ龍が追いかけて来る
最初に回復の男が犠牲になる
次に魔法使いそして盾役のクリスがブロンズ龍に踏み潰されインザーギのすぐ後ろまで迫っていた
インザーギは二人の仲間に
「このままじゃダメだやるぞ!と声を掛ける」
二人もこのまま何もしないで殺されるのはごめんだと「おう!」と声を揃える
「行くぞ!」とインザーギが声をかける
二人がブロンズ龍の脚目掛けて攻撃を仕掛ける
インザーギは止まる事なく逃げ続けた
二人はインザーギの援護が来ないことに戸惑い
インザーギの方を見て驚愕し罵声を浴びせる
二人を使い足止めさせる事に成功してインザーギは一人ダンジョンを抜ける、街まで逃げ切れば何とかなると思い他の人間の事など考えずに一心不乱に街を目指す。
森の中で会う他の冒険者には何も告げず足止めに使うつもりだ、そんな中、森にメイドを連れた子供を見つける。馬鹿がこんな危険な森にメイドなんて連れてるお前が悪いんだ、と何も知らせずにその場から逃げる。背後から大きな轟音を響かせて木々をなぎ倒して迫るブロンズ龍から少しでも遠くに
◆◆◆
アンと二人仲良く森の中をキノコ狩りを楽しんでいると遠くの方から大きな音が聞こえてくる
アンが不審に思い俺の側に近寄って来る
「坊っちゃま何か来ますわお気を付けて」
その言葉のすぐあとにギルドで見た痩せた男が俺たちの脇を駆け抜けて行く
ヤバイと思ったら木々がなぎ倒され鈍く輝く龍の姿が遠くに見える
アンが俺の腕を掴み「坊っちゃま掴まって!」
と木と木を蹴りながら木の上に登って行く
俺達に気付く事なく龍は男を追いかけて街の方向へと駆けて行く
「あれは地龍の親ですね。どうやら亜種で金属の身体のようですわ」
あの冒険者はあんな化け物を俺達に押し付けようとしていたのか?と少し怒りが湧いて来る木の上から眺めていると少し先で龍に追いつかれた冒険者が戦っているようだ金属を打ち合わせるような音がする。
少しして龍がこちらに戻ってくる冒険者は負けたようだ、俺達の下に来た龍が不意に臭いを嗅いでいる
龍はこちらを見上げて
「小僧!貴様が着ているその鎧は我が愛しい子供の革」と人の言葉で吠えてきた
あちゃー見つかったとアンを見ると笑顔で
「ご安心を坊っちゃま」と木から降りて龍の前に並ぶ。怒り狂う母親の龍を相手にどうするつもりかと見ていると
「貴女の子供は弱かったからこのわたくしが右脚を剥ぎ取って差し上げましたのよ?弱さは罪ですね〜」と母親を挑発する
怒り狂う母親がアンに向かって突進し前脚で踏みつけようとする金属の太い脚を華麗に躱しポーチからいつもの包丁を出して脚の筋目に沿って切れ込みを入れる
母親は危険を感じ後ろに退がる
「矮小な人間の分際で!」右脚の付け根から大量の血を流しながら母親は逃げた
今回は追う事なく包丁をポーチにしまう。
「今回は追わなくていいのか?」と尋ねると
「金属は食べれませんわ?」と不思議そうに返してくる。食材かそうで無いかが重要らしい
依頼のキノコを回収してウサギと共にギルドへ届けて龍の母親の事を報告すると
ギルド職員は頭を抱えながら「なんでこんな時に」と愚痴っていた
俺は二つの依頼の報酬を受け取り街の外に出て
アンが作る昼飯を食べていた
今日のメニューは
香草と薬草とキノコのサラダ
苦味と香草の香りがキノコと相まって幾らでも食べれる味付けはオイルと塩
地龍の木の皮包み焼き
不思議な香りのする木の皮で地龍の肉を包んで焼く味付けは塩と胡椒のような香辛料
柔らかくて味わい深い、木の皮の香りも優しく鼻を抜けて行く
ウサギのスープ
昨日絶賛してもう一度リクエストした品だ
〆のデザートは焼き林檎と紅茶
少しほろ苦く甘い大人のデザート
うん、全てが美味い。
「これはもう、アン無しでは生きて行けなくなるな」と褒めると
「そんな事言って、責任取ってくださいね♩」
と可愛く微笑む
軽くイチャイチャしながら
あの、龍の母親どこに行ったんだろう?もう会いたく無いなぁなどと考えながら紅茶を飲み寛ぐ
宿屋に帰りアンの胸に抱かれながら
幸せってこういう事なんだろうなと自分に掛けられた呪いの事など忘れて眠る
本日2話目の投稿です
面白かった、などと言ってくだされれば
やる気に繋がりますので是非とも
評価など宜しくお願い致します。




