アンの実力とこれから
レイン島の港にある
古ぼけた建物、窓は無く入口にも板が打ち付けてあり人の住む様子は無い
その建物の中で数人の男が、ある仕事の話をヒソヒソと行っていた
「もうそろそろ他の島に移らないとダメだな」
猿人がため息を吐きながら呟く
「そうだな、そろそろ次の島に移るか」
もう一人の猿人も頷くその腕には見事な細工がしてある腕輪をつけている
その腕輪を目にして一人が呆れたように
「おい、ナッツ!攫った奴らから奪った物は
身につけるな!身元がバレるといけねえ!いつも言ってるだろうが!!」
「へへ、いいじゃねぇか一つくらい
あんまりにも見事だったんで気に入ったんだ」
「ちっ!たく、痛い目にあっても知らねぇぞ!」
「よし!じゃあ、あと5〜6人攫って来て船に積み込んでこことはおさらばだな!」
「よっしゃ」「おし!」
彼らはこの先に待つ運命を未だ知る由もなかった
ゴーレムを手に入れた俺は
仲間達に合流して近くのメシ屋に入った。
これからどうするかを決める為の話し合いを行うために。
料理が運ばれて来て食事を始める
パンにチキンにスープまぁ一般的な料理
驚いた事にアンは食べる事が出来るそうだ
ゴーレムなのに?別に食べなくても問題は無いそうなのだが、周りから見たらイジメられてるみたいなので俺の横に座り同じ物を食べている
レナトが
「で、アレックスはこれからどうするの?
また西の都に戻って採取と狩を続ける?」
と聞いてきた。
アンが取り分けたチキンをフォークに刺して
「はい、坊っちゃま♩あ〜ん♩♩」
口を開け食べながら
「いや、この世界をたびするのが目的だから
お金を貯めながら旅行がてらに冒険しようと思ってる」実際もう採取には飽きた
その横でアンが
「アンがあ〜んですってうふふふふふ」
何かツボにはまったらしい
「そっか、俺たちは納得いく装備が揃ったら旅に出ようと思ってるんだしばらくはこの国にいるんだろ?」片眉を上げながらレナトが聞く
アンが
「まぁ、坊っちゃまお口の周りがもぅ!」
と言いながらナフキンを自分の口で濡らして
俺の口の周りを拭き「もぅ可愛いんだから!」
と呟いている
俺は気にもしないで
「う〜ん、実際まだ何も決めてないんだ
一応この国の名所なんかを巡って見るよ」
ギルドにあるこの国の地図を羊皮紙に書き込んで
行きたい所に印を付けている
「そっか、まぁ、またいつか何処かで会えるよ」
なぜか、顔を引きつらせながらレナトが
笑っている
「あぁ!いつか会えるさ、その時はお互いSランクの冒険者だったらいいな!」
「まぁ!坊っちゃまカッコいいですわ!
あ!そうだ坊っちゃまの勇姿をわたくし記録しないと!」そう言いながら腰に付けたポーチから
分厚い日記のような物を出してニマニマしながら
何かを綴っている
食事を終えて店を出る
三人はこのまま西の都に帰るらしい
乗り合い馬車があるので大丈夫だとレナトが言う
じゃあまた、必ずと約束して
俺はギルドに向かい宿泊をお願いする
すると、「悪いが、メイドと一緒には泊まる事は出来ない風紀上の問題があるからな」と断られる
ゴーレムだと説明しても
「たとえ、ゴーレムだったとしても他の人の目があるからな、悪いが宿を取ってくれないか?」
するとアンが
「坊っちゃまわたくしはゴーレムですので
寝ずに外で待機していますわ」と提案する
「いや、ダメだそれは許さない
俺はアンをただのゴーレムとは思っていないよ」
そう、メイドさんだ!俺の身の回りの世話を焼く
「ぼぼぼぼ坊っちゃま!!」
アンが顔を真っ赤にして涙を浮かべて
両手で顔を挟みいやんいやんと嬉しそうだ
何か勘違いしていそうだが、まぁいいか
俺はギルドに安い宿屋を訪ね宿を取りにいく
時間も夕暮れ近くなり紹介された宿屋は
東門近くの清潔な雰囲気の小さな宿屋
小間使いの女の子が出迎えてくれる
「いらっしゃいませ!お二人様ですか?」
輝く様な笑顔で元気に聞いてくる
「私はゴーレムですわ!」アンが直ぐに応える
「え?」
「いや、二人で頼む」説明がめんどくさいので
もう二人で良いやと返す
「では、こちらにどうぞ!お二人様でーす!」
「いらっしゃい、二人で一泊銀貨1枚だよ」宿屋の主人が笑顔で迎えてくれる
「取り敢えず3日部屋をお願いします。」
そう答えお金を払う
「部屋は2階の奥の部屋だ、おい、ミランダ案内しな!」「はーい!お客さんこっちだよ!」
女の子について行き部屋に案内される
奥の階段を登り長い廊下を進み一番奥の部屋へ
部屋には一つのテーブルと一つのベッドがあるだけの質素な雰囲気だが居心地は悪くない
あれ?ベッドが一つしか無いな、と考えたが
ゴーレムだしまぁいいか、と思い用意されたお湯で身体を拭いてさっぱりして、さぁ寝るかと
ベッドに寝転ぶとスルスルと衣摺れする音が聞こえる
ん?と振り向くと下着姿のアンが?
「坊っちゃまアンは「初めて」ですのでお手柔らかにお願いします」と上目遣いで顔を染めながら両手で頬を挟んでいる服の上からは分からなかった巨大な双丘が腕に挟まれて強調されている
ゴーレムなのに良く出来ているな、作り手の愛と
プライドを感じる意識の高さが隅々まで行き届いている。などと現実逃避していると
すっと、アンがベッドに入ってくる
ここで手を出したら旅どころでは無くなってしまうので「旅が終わるまでそういうのは無しだ」
と答えると
頬を膨らませて
「もう!女に恥をかかせるんですか」と胸を俺に押し付けて抱きついてきた。女?ゴーレムじゃないの?と頭は冷静に考える
一応揉みながら「いや、旅が終わるまでダメ」
と理性と若さが戦う。
「坊っちゃまのばか」と拗ねて背中を向けて寝るアンの美しい背中を見つめてこの後本当の戦いを一晩中続けた
俺の貞操は守られたがこんな状態じゃ身体が持たない。何とかしなくては
翌日、ギルドに行き簡単な採取と狩の依頼を受け
街の外に出る。アンの実力を調べるためだ
今になって冷静にあれ?アンの実力は旅に同行出来るのか?と思い始めて調べる事に
ちなみにアンの装備は黒のロングな
エプロンドレスに焦げ茶色のロングブーツ
ホワイトブリムに腰にポーチを下げている
当然武器防具の類はもっていない
街の外に向かいながら
「なぁ、アンそう言えばお前のステータスとか
スキルを聞いて無かったけど、どんな事が出来るんだ?」主に戦闘で
「もう、坊っちゃま!レディにステータスを教えろなんて!ちゃんと責任とってくださいね♩」
「なんでやねん」とえせ関西弁が口から出る
「私のステータスはこんな感じですわ♩
[製作者 ロベルト・B]
使用魔石 マンティコアロード(王族種)
名前 アン
所有者 坊っちゃま
職業 愛の奴隷(坊っちゃまのメイド)ですわ
LV ひ・み・つ♩
HP 1800
MP 3600
獲得スキル
料理 120
裁縫 120
錬金術 120
革細工 120
原初魔術 120
家事全般 120
状態
坊っちゃまの虜
愛の奴隷
愛の暴走螺旋階段上昇中
特技
坊っちゃまのためならどんな事でも♩エヘ
好きなもの
坊っちゃまの全て
将来の夢
坊っちゃまと...」
「いや、もういい」
色々聞きたいことがあるが目が怖い
使用されている魔石とスキルの高さがきになり
尋ねる
「マンティコアロードって確か今の聖王国が建国される前にあの大陸を支配してた魔物だよね?」
「流石は坊っちゃま!博識ですわ!」
母ちゃんの本にお伽話として書いてあった
「確か、聖王国の、初代聖王に討伐されて建国の秘宝として代々受け継がれてて200年くらい前に盗まれたはずじゃ?」
「その通りですわ!その魔石を使用していますわ!」
見事な胸を張りドヤ顔を決めるアン
「盗んだの?」
ジト目で尋ねる
「私が?いえ、ちがいますよぉ〜!もぅ
盗まれた経緯は知りませんが世界にマンティコアロードが現れたのは一度しか報告されていないのでほぼ間違い無いかと思っていますのよ」
「うん、そうだね。この事は誰にも言わない事」
少し呆れながら
「くふ〜私と坊っちゃまだけのひみつ♩」
鼻息荒く何かを妄想しているようだ
「それでスキルだけど、100が上限じゃ無いのは聞いていたけど120ってどうなの?高過ぎじゃ無い?
壊れてるとかじゃ?」
「もぅ、坊っちゃま!スキルの上限は魔石の
ランクによるものなので災害クラスの魔石を使用すると120まで上がりますわ♩ちなみに今までは壊れたふりをしていただけで壊れた事などありませんから、あ!坊っちゃまのせいで少しおかしいかも?」上目遣いで屈んで来る谷間が見事な迫力を出している、あざとい
谷間の弾力を指で押しながら
「戦闘に使えそうなスキルは、原初魔法?」
聞いたことがない魔法だなぁと思っていると
「原初魔術でございますわ♩」
何が違うのか尋ねる
「魔術とは一部のエルフに伝わる魔法の元々の姿でしょうか?魔術を簡単に使えるように改良したのが魔法なのですわ、改良したのは青空の魔女と呼ばれるエルフでその青空の様な足元まで伸びる長い髪の毛は観る物を魅了してそのまま命を奪われる、それはそれは恐ろしい魔女ですわ、15年ほど前に討伐されたと聞いていますわ」
怖い魔女がいたもんだな
「で、原初って?」
「魔術の根本ですわ!」
胸を張りドヤ顔を決める
「強いの?」
一撃で山が吹っ飛ぶ様なイメージが過ぎる
「いえ?元なので改良された魔術には
及びませんわ」
あっさりと否定する。ズッコケそうになるが
まあ、盾役には向かないなと考える
向いていたとしてもメイドの背後から攻撃するのは何か違う気がする
まぁ弱い敵で様子を見る事にする
草原にいた大鼠一応魔物の部類に入る
雑魚中の雑魚
「アン!大鼠に攻撃してみてくれ!」
アンに指示をだす
「坊っちゃま畏まりましたわ!」
不意にしゃがみ込んで、ん?なにしてんだろうと
見ていると石を拾い女子投げと言われる様な投げ方で明後日の方向に「えぃやっ!」と石を投げつけた
へ?と思っていると
大鼠がこちらに気付いてアンに体当たりをする
「きゃ〜」と吹っ飛ばされるアン
ドジっ子属性なのか?
俺は直ぐに大鼠を斧で叩き仕留める
アンは「うぇ〜ん」とあからさまな嘘泣きをしてこちらをちらちら見ている
一応「大丈夫か?」と声をかけると
両手を上げて
「おんぶしてください歩けません」と言っている
嘘つけ!とか思いながら仕方ないのでおんぶする
「はぁ〜 坊っちゃまの匂い!」と怖い呟きと鼻息が聞こえてきたので
「歩けるなら自分で歩け!」と背中から落とす
ふぇ〜んと嘘泣きしながら後ろからついてくる
その後簡単な依頼を完了させて
あざといメイドに頭を抱えて今日一日が終わる
誘惑にいつまでも耐えられそうにありません
お母さんごめんなさい
そんな言葉が頭をよぎる