沙耶の過去その2
その日は泣きながら走って家に帰りベッドにうずくまっていた。
な、何で? 何で八雲はあんなこと言ったの?
ずっとずっとずっと考えた。そこである事に気づいてしまった。
また、助けられたのかと......
イジメられて一緒にいると私に迷惑がかかるからと.......今度も助けられたのに然も私の方からも傷付けて、あんな事まで言ってしまうなんて......
私はなんて、なんて最低な女なんだろう。
周りからチヤホヤされて、調子に乗っていたのかも知れない......ちょっとモテるようになったからって、一番大事な人を傷つけて失ってしまったのだから。
そのことに気づいた時には既に遅し。 死ぬほど後悔した......
いつか絶対謝る。そして、私から告白する。虫のいい話ではないが、OKしてくれないかな......
それからそのまま中学を卒業し、八雲に謝るために同じ高校に進学した。
しかし彼は高校でも表の舞台には出てこないでいつも机にうつ伏せているままだった。話しかけようとしたが事あるごとに躱されていた。私は高校でもまだ可愛い部類に入っていて、多分まだ私のことを守ってくれてたのだと思う。
いや、そう思いたい......
「もしもーし沙耶? どしたん?」
「おーい」
「聞こえてるー?」
はっ! 少しトリップしてた......
それより確認しなくてはいけない事ができた。
「ご、ごめんごめん。で、何だっけ?」
「ちょっと沙耶~、ちゃんと聞いててよねぇ」
「そうそう」
「あはは」
あぁ、ダメだ。全然頭に会話の内容が入ってこない。
「ごめん! ちょっと今日はもう寝るね!」
「りょーかーい」
「おっけー」
「おやすみー」
電話を切ると直ぐに部屋の電気を消して眠ろうとしたが、全く眠れない......
そうだこれは夢だ。そうに違いない! でも、無理があるよね。
あの子が嘘つくと思わないし......
明日、八雲の家に確かめに行くか......でも本当だったら私、どうしたら良いのかな? 謝る? 彼の遺体の前で? 家族の前で? あぁもう。
分かんないよ......どうすればいいの、助けて八雲......
またこんなこと言って助けてもらおうだなんて、本当に最低だな私......
翌日沙耶は八雲の家に向かった。彼の家はパン屋をやっている。
(○○病院に行っておりますので店は閉店です。)
そのために裏口から入ろうとしたらこの置手紙を見た。
その瞬間に思わずその意味を察してしまった。
急いで踵を返して○○病院に向かった。
八雲の病室の番号を事務に尋ねたが息切れが激しく、看護師さんに落ち着かされてから八雲の病室へと向かった。
その病室には八雲の家族が嗚咽を漏らしながら佇んでいた。
私はこう思った......あぁ、もう大事な大切な思い人に会えないのかと思うと......
私はその場に倒れてしまった。
********
目を覚ましたら病室の椅子で座りながら寝ていた。ふと横を見ると彼の母親がいた。私とは何回も会っているためよく顔を覚えていた。
「来てくれてありがとう沙耶ちゃん」
「いえ、昨日の夜にこの事を聞かされて飛び出してきました。本当に貴方の息子さんには何度も助けられました。こちらこそありがとうございました」
私は吐き出すように呟いた。そして逃げるように病室から出ていき、後ろから何か呼び止められる声が聞こえたが構わなかった。気づいたら自分の家に着いていた。
玄関を潜りすぐに部屋に入りベッドにうつ伏せになった。いつからだろう頬を熱い何かが流れていた。
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「おはよー」
「おはー」
「おーっす」
「おはよう」
――ガヤガヤ
「おはよ! って、うわっ! 沙耶! 何その顔!!」
「すごいやつれてるよ!! どうしたの?! 目も赤いし!」
え? あぁ昨日あれから殆ど一睡もしてないんだった。
ずっと泣いてたからなぁ
「あれ? 二宮さんどうしたの? すごいやつれてるけど。何かあったら相談に乗るよ?この福村健がね!」
そう言って話しかけてきたのはクラスのイケメン福村健君
はぁいつ見てもイケメンだなぁ八雲もよく見たらイケてたけど影うすかったから皆知らない。皆が八雲の顔をちゃんと見たら態度が逆転するだろう。それから福村の性格は余り良くはない。なんか凄い生意気なんだよね。異性にはすごく優しいが同姓には物凄く強く当たっている。
「大丈夫だよ、心配かけてごめんね」
「そうかい? いつでも頼ってね」
「ありがとう。何かあったらよろしくね。」
「へー、いい感じじゃん福村君と」
「えー? いやそんなんじゃないよ」
「でもいい感じじゃん! イケメンだし、優しいし、家は政治家の家系だしさ、逃しちゃ勿体無いよ沙耶!」
「ほんとに違うから! 私の好きな人は福村君じゃないし」
顔はいいけどタイプじゃないんんだよ、性格悪いし付き合ったら性格変わるタイプだよ。誰とも付き合ったことないけどさ......。 好きな人は八雲、幼馴染で私の事をよく知ってるし、優しいし、影薄いけど気配りできるし、意外と明るい時もあるが学校では見せないだけでありギャップがあってなんかかわいいんだよね。
「えー? 何で? じゃあ誰が好きなの? ねえ?」
「その話は今度ね」
「じゃあ次の休み時間に聞くからね!」
「え~~?」
――キーンコーンカーンコーン
朝のホームルームが始まる。
席につかなきゃ。はぁ、憂鬱な一日が始まる......
席について後ろから二番目の席を見るとやはり誰も座ってなかった。その席にはいつも眠そうにしているアイツがいるのに......
物凄い虚しかった。
あぁ、もう一回会いたいよ。 八雲......
そんな時だった。
ある一人の生徒が変な大声を出したのは......
「か、体がぁぁぁ!!!」
――ゴゴゴゴゴゴゴ――
「な、なんだぁ?!」
「キャああああ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
クラスで何かの模様みたいな眩い光に吸い込まれていく――
なにこれ......あっ、い、意識が......や、八雲......