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  作者: ハルカ
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一話

春の終わりごろの季節と言うのは夏の夜よりも寝苦しいものである。季節と体が適応してないから夏のほうが寝やすいのだ。

 時計短針は10を指しているが、一階からは元気な酔っぱらいの声が聞こえてくる。少しは子供の睡眠を心配してほしいが寝てないので文句は言えない。

 やることもないので時計の針のカチ カチ音を子守唄にしてベッドで寛いでいると下から母の怒鳴り声が聞こえてきた。母が怒鳴るときは大抵ロクでもない時だと分かってはいるが巻き込まれないように動いてもダイソンなみの吸引力で息子を吸い込んで行くので、下手な抵抗をするよりかは、好奇心に従ったほうが良いのである。

 「舐めてんのか!あのクソ豚!」

電話越しに怒鳴りつけてる母を見て簡単に事情を察した。

 「どうしたの母さん?」情報の正誤を判断するために母に訪ねると、電話相手に後でかけると言い母は私の問いかけに答えてくれた。

 「アヤネがまた、問題を起こしやがった。」

 ビンゴだ。クソ豚で人物を察する僕もどうかとは思うが、僕の知り合いで豚の名前がピッタリなのはアヤネしかいないので特別優れた推理でもないがそれでも当たると得意気な気分になって顔が顔がついにやける。

 「それで今回は何をしたの?」その問いかけにヤンキーのように40を過ぎた母が舌打ちをしながら、「あの豚、今度は真弓の金持って家出しやがった。」吐き捨てながら母は答えた。

 アヤネが事を起こすのは今回が初めてではない。真弓さんとその娘であるアヤネは仲が悪いのだが元々は真弓さんが覚醒剤に溺れアヤネを徹底的に虐待したことが原因なのだが、アヤネは真弓さんが刑務所から出てからしつこいほどの嫌がらせを始めた。

 元々アパートに住んでた僕と母は虐待を受けていたアヤネを見かねて一時的に家に匿ったことがある。そのときからの付き合いなのだが、真弓さんが出て来てからというものアヤネの嫌がらせは、僕たちの良心によって行われていた行為をもしかして…間違えたかな?と思わせるには酷いものだった。

 時には、真弓さんに男が出来た時に真弓さんがいないときにその男を寝とり。(当時アヤネ中学生)

 時には腹違いの妹を真弓さんが心を入れ換えたかのように子育てをしたのが気にくわないという理由で全治2ヶ月の病院送りに。(当時アヤネ16歳)

 これだけでも、はぁ?と言いたくなる出来事だが語るネタは原稿用紙を山のように盛ってもまだ足りないほどあるので、話はまたの機会に。

 きっとアヤネを匿った時の僕たちにはマザーテレサが宿ってたのだろうと思う。

 なんにせよ、アヤネを匿ったがばかりに運命の赤いロープにより切れない縁が出来た僕たちは何かと巻き込まれることになったのだ。

 「で、今度はどうするんだい?母よ?」

 関わりたくないけども動いてやるしかねぇだろ、と男前な発言をしながら母は着替えていた。僕も速やかに着替え車のキーを取りエンジンをかけ母を車で待っていた。僕は出ていった時間と地図と豚の行動範囲と性格を考えながら場所にあたりをつけていった。

 「で、どこから探す?クソガキよ?」

 母の問いかけにマークをつけた地図を渡すことで返事とし車をだした。

 ところで、話が変わるがアヤネが豚と言われるにはある、エピソードがある。あれは今回と同じように、アヤネが家出をした時だった、だがあのときは、すぐに見つかった。真弓さんの自宅つまり本人の家で、具体的に言うならゴミをまとめてるポリバケツの隣で盗んだお金でピザを食べていたのである。……待ってほしい、なんのネタだ?冗談だろ?と思うのは分かるが聞いてほしい。実話なんです!!奴のその太った体型とポリバケツの隣でピザを食べていたその汚れも雑菌も気にしない醜い姿から私たちは心からの畏怖を込めて【豚】と名付けた。

 そんな彼女のことである、きっと今回もその綺麗な食欲の赴くままに食べ物を求めてるに違いない。

 

 15分ほど車を走らせた先にそれはいた。それは、煙草をくわえヤンキー座りをしポテトチップスをの袋を漁りながらコンビニの前で君臨していた。その姿は堂々としており昔の方々なら王と崇めそうな貫禄を発揮している。

 だが、そのご立派な貫禄もその服の上からも分かるご立派な脂肪によって現代人の誰もが嘲笑うなんとも奇っ怪な姿となっていた。

 「…………帰るか」

 「待つんだ母さん!あれだけ男前な発言をしておいてそれはないだろう!」

だってあれと関わりたい?という母の問いに思わず無言になりそうだったがどうにか、こらえ真弓さんに電話をかけた。

 真弓さんはすぐに来た。わーいこれで一件落着だーい!とはならないのが豚シネマの魅力である。

 そこからは悲惨というほかなかった。あまりにも酷いので会話文だけで説明しよう。

「なんで、母さん来とん!?うちのことは放っておいてよ!」

歳いくつだ、こいつとは突っ込んではいけない。

「やかましい豚!人様に迷惑かけて何がほっとけや!」

最初に迷惑かけたのあなたですけど…

てか、実の娘に豚って…

「大体母さんが悪いんでしょう!うちがすることなんでも文句つけてうちを自由にさせてよ!」

その結果、金を盗み逃亡とは笑えない話である。それで自由になれるのはショ○カーぐらいのものである。

そう言ってアヤネは暴れ始めた。100キロを超える豚の行進である。だが真弓さんも闘った。豚と元ポン中の争いだ。醜い、なんとも醜い。見るに耐えない。隣の母さんがプルプルしてる。闘いは五分にも及んだ。ウルトラマンよりも長く闘ったのだ。両者共にノックアウトである。僕たちは車から降り、コンビニの方々に謝罪をし、後から駆けつけたお巡りさんに事情を説明した。現実はウルトラマンのようにご都合主義ではないのである。

 これは、こんな他人に迷惑をかける豚の日常日記である。 

 

 

 

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