祝福の力
オッス!オラ、メルク・モロ・ロードリアンス
アルメンテス王国内にある、モロの街を管轄下に置くロードリアンス家の次男坊さ!
父上と母上、後は2個年上の兄様と4個上の姉様と、あとはー、執事やメイド達と暮らしてるんだぜ?
あ、俺?俺は生後半年だけど?え、なんかおかしい?転生なんてこんなもんだろ?
普通だよ普通!
さてと。現状の説明が欲しいんだろ?分かってるって。だいじょーぶ大丈夫。
んー、魔王って奴の説明からしようかな。
魔王は、魔国の王様で代々その地位を脈々と受け継いでいるんだわな。魔王の配下には、知能を携えた魔物、所謂〔魔人〕と無知能な魔物〔魔獣〕が居るんだわさ。
その魔王は、500年ほど前までは、人族と敵対していた。それが63代目魔王。しかし、64代目魔王である【ウルクッタ・アスモナーク】の手腕により人族と友好関係になり不可侵条約を結ぶまでに至った訳さ。
当時は反対する魔族や魔獣も居たらしいが、全て纏めて魔王が武力で黙らせたらしい。
その時の魔王は、魔法も武力もピカイチで、敵は一人も居なかったらしい。でも1つだけ弱点があったんだ。
まあ、それが俺達が呼ばれた理由でもあるんだな。早く知りたいって?しょうがないなあ。
魔王と呼ばれる者たちは、勇者の称号を冠する者たちを殺める事で、一時的な不老不死の力を手にするんだ。勇者達の場合は、神からの恩恵、所謂《〜神の祝福》を手に入れられるんだ。
と、そこで当時の人々は考えた。
人族の意見としては、これ以上魔王に攻められるわけにはいかない。もし、攻められでもしたら人族の歴史に終止符が打たれかねない、と結論付けられた。そこで、魔王が代替わりしないよう、人族の王達は各国から勇者を集め、生贄として魔王に献上する事となった。
魔族の意見は、魔王が死ななければ何とでもいいと言う、簡単なものであった。
双方の意見に違いは無く、勇者を魔王に献上する運びとなったんだ。
しかし、勇者とて唯の人である事に変わりはない。抵抗したらしい。しかし、称号だけしか持ち得ない勇者達は、一人また一人と魔王の手により、この世を去っていった。
そして、その後も100年毎に魔王に献上される筈だった。そう、100年前までは。100年前、この世に勇者は一人も誕生しなかった。
だから今の魔王は不老不死の力も無く、余命は13年と言われてる。
俺達は魔王と人族の為に転生させられたんだ。
次は、勇者についてだな。
と、言ってもさっき迄の話で予想は付いてると思うけど、昔の勇者は「悪を滅する勇ましい英雄」であったが、今の時代では「人々の為、生贄となる者」の意味で使われる、或る意味名誉称号なんだ。
500年前から、勇者を子として誕生させた家々には、多くの金やら食料が与えられていたらしい。だから、勇者には死の未来しか待っていない。人の汚れた部分には、家族も何も無い。そこにあるのは、ただの欲望だけだ。
ん?俺がなんで普通に暮らせてるのかって?あー、勇者は12歳にならなければ発現しないんだ。それこそ、嘘吐き女が俺に言ったように、12年しか勇者に寿命は無い。
なら、諦めるしか無いのか?否!俺には祝福が付いている!これは完全にチート能力だ!
この能力のお陰で、俺は魔法と飛行能力を既に手にしている!
俺は、勇者も魔王も死なない世界を作ろうと思う!
「メルク〜!ご飯の時間でちゅよ〜♪」
なんだろう、良い区切り方だと思ったのに、母上が乱入してくるなんて…。
「ばぁぶ!」
「わかってまちゅよ〜、御乳でちゅよね?はい、どーぞ」
さあ、来たぞ、来たぞ!実の母親といえども、この楽園から目を背ける事など出来ないさ!今日も今日とて、とても大きい胸だ!
あ~、うめ〜。うっすいミルクや〜。
「じゃあね、メルク。また、夕食に来るから、大人しくしててね?」
そして、母上は仕事へ去って行った。
俺は、いつもの様にベッドの周りを見渡す。
ほとんど何も無い部屋だ。あるのは柵付きのベッドに絨毯、本棚に窓くらいだ。あ、ドアも勿論あるよ?
え?なに?まだ聞いてないことがある?あー、そうだね、俺の能力についてか!
俺の能力は《妄想》だよ!
現実では起こらないこと、起こっていないこと、まあ非現実的事象とでも言えばいいのかな?
それをまず思い浮かべるんだ、そしたら頭の中に時間が出てくるんだけどね?その時間分妄想をし続ける事で、能力が発現するのさ!
う~ん、例えばだよ?
俺は火魔法を覚えていない。どうにかして覚えたい。だから、妄想するんだ。イメージするんだ、俺の指先から、真紅の焔が浮かぶ様をね。そうすると、所要時間が頭に伝わってくる、えーと、1時間だってさ!赤ちゃんに1時間妄想しろだなんて、薄情だよねホントに!まあ、時間は大量に在るんだけどさ……。
〜1時間後〜
いやー、例でやっただけだから、元々火魔法覚えてたし。火魔法は発現しないだろうなー、どうなるのかなー?って思ってやり続けたら、火魔法の能力が俺から消滅したよ!
そしてね、上位版である「焔魔法」を習得したよ!
あとね、魔法のせいで俺のベッド全焼さ!完全消滅だぜ?
あー、父上に怒られるんだろうな、きっと。
てなわけで、魔王と勇者、俺の能力については理解したか?もう、俺眠いから寝たいぜ!
うん?まだ聞きたいことあるのか?魔法があるのか?だと?
いやいや、さっき見せたでしょ?は?説明してないだろ!って?しょうがないなあ、説明するよ?
この世界には魔素があり、魔法がある!
以上!おわり!俺は寝る!おやすみ!
って、これも俺の妄想か。話し相手が居ないと、妄想で紛らわせるしか無いからな、さも聞き手が居るかのように。でも、能力は発動したんだよなあ。所要時間もクリアしたし。でも、何かが変化した訳では無いんだよなあ。
死ぬ前に読んでた小説みたいに、俺の人生がこれから、誰かの手によって描写されていく。そんな能力だったらいいなあ………おっと、これも妄想か。
俺頭大丈夫かな?
あ!俺の名前や背景、親の描写は本物だからな!
って、また。俺は一体誰に言ってるんだ?
こんな感じで、主人公が妄想の力でやりたい放題です!チートです!
聞き手は誰も居ないのに、主人公は、心の中でめっちゃ説明していきます。これからも。