神の御意思
本日2話目です。
「え…?勇者?本当に!?
俺が、俺が勇者なの?!マジか!マジだよね?うん!マジさ!
いぃぃっやったあああああああ!!!!!」
勇者、それはとても甘美な響き。
何物にも変え難いほどに素晴らしい、至高の言葉。至高の職業。
そして、俺が今までどんな妄想でも辿り着けなかった、真の勇者!本当の勇者になれる日が来るとは!
俺はこの瞬間を忘れないだろう…。
この喜びと、この幸福感と、そして美人な女性の顔を…!
うん?美人だって??
そういえば、この人誰だ?
とても神々しい光を放出する絶世の美女と呼んでもおかしくない程に、整っている女性は。
俺、さっきまでクラスに居たような…?
クラス一の美人であり、皆のマドンナである【如月 澪】よりも美しい奴など居たっけ?
というか、俺よりも年上やん!マジでこの人誰!何を根拠に俺のことを勇者と呼んだんだ!
もしかして、ドッキリなのか?!さっきまでの俺の喜びは全て、嘘の産物だったのか…?
そんなの酷いじゃないかー!もういい!
貴様が誰であろうと、俺は許さないからな!
さあ、今こそ勇者として、真の力を目覚めさせるときだ!覚悟しろ!嘘吐き女め!
「落ち着きなさい勇者よ。妄想はやめて、まず、話を聞きなさい。」
「心の中を読んだ…だと……?
まさか、貴様は超能力者だとでも言いたいのか!流石に今度は騙されないからな!」
「黙れ」
目の前の、嘘吐き女が、一言言葉を発したと思った時、猛烈な恐怖が俺を襲った。
途端、手足が震え、口の中から歯の噛み合う音が流れ出し、頭の中に大音量で警報が鳴り響く。段々と死が迫って来るのがわかる。
恐怖が俺の全てを覆い尽くし目を背けようと、必死に身体を動かそうとする。でも何も動かない。手足も、顔も、目すらも。全てが動かない。
何分経ったのか、時間すらも把握できない程に、濃厚な死が俺に刻一刻と、目前まで迫る。
「やっと、黙りましたか、勇者よ。
止めたら、また騒がしくなりそうなので、そのままで居なさい。
さて、何から聞きたいのか?」
嘘吐き女が何か言っ「私は神です。その様な、ふざけた名ではありません」……。
神だと?神ならもっと優しくしてくれるはずだろ?ふざけるな!貴様なんか死神と変わんねぇーよ!
「ほう?なるほど。死の恐怖だけなら抗ってみせると?ふむ…。
もう少し見ていたいですが、次が詰まっていますし、心の声が煩いので、一気に黙らせますか。」
うっ?!
なんだ!なんなんだ!
段々と手足の指先から、ジワジワと襲ってくる痛みは!うっぐぅ、あっがぁぁあああ!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
「ふぅ、ようやく黙りましたか。段々と威力を強めましたが、全身骨折程の痛みでようやく思考停止になるとは。
貴方の意識はまだ稼働しているので、用件だけ伝え、転生してもらいます。」
………………。
「勇者として魔王に挑み、そして死んでください。ただ、それだけです。弱過ぎるのも何なので、12歳。この歳になったら魔王に挑みなさい?
その後の転生先は無いから、人生楽しんで下さいね。
あと、クラスメイト達も勇者として転生しています。協力し合うのも結構ですが、必ず死ぬ事をお忘れにならない様に。では、いってらっしゃい」
…………っ!ぅっ、あ、あ、あ……あああああああ!!!!
貴様!何を勝手な事を言ってやがる!ふざけんのもいい加減にしろよ?俺達の命を何だと思ってやがる!
「まさか、打ち勝つとは…。
命?虫ケラの命など無碍に扱って何か悪いのですか?」
な………んだと?
「では、今度こそさようなら。
貴方は面白い人材だったので、虫ケラからゴミに格上げしてあげます。ついでに特殊能力《創造神の祝福:妄想》をあげます。
では、12年後にまた逢いましょう。」
ふっざけんじゃねー!