二人と俺
彼女は彼を心から愛している。不器用な彼の優しい横顔を愛おしそうに見つめ、彼女は嬉しそうに微笑む。不器用な彼が顔を真っ赤にして照れれば、彼女は満面の笑みを浮かべて彼を抱きしめる。
不器用な彼もまた、彼女を心から愛している。彼女へのプレゼントを選ぶ時なんて、どれだけお店を回ったか。付き合わされるこっちの身にもなってほしい。
そんな二人は、俺にとって大事な存在。
「そんなに愛されていたら幸せね?うらやましいなぁ。」
誰かが彼女に聞く。
「そう?私は愛されるより愛したいけどね。愛される方が幸せなんて、もったいないわ。」
愛する者を愛することが幸せだと、彼女は言う。そんな風に愛されたら、身も心もとろけてしまう。
そんな甘ったるくて暖かい彼女の愛情は、惜しげもなく彼に注がれていた。
俺は、彼女の傍に居た。隣ではないが、決して遠くはない場所に。
「ほんと、あいつのこと大好きなんだね」
俺が彼女へそう言うと、彼女は頬を緩ませて答えた。
「うん、愛してるの」
その言葉が俺に向けられていないとは分かっていても、彼女が決してこちらに振り向くことはないとわかっていても、それでも頬を緩ませてしまう俺は、彼女に溺れているのだろう。
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