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ー浄土の章10- 報復の誓い

「先生って、なんでこんなに簡単にひとを信じてしまうんでしょうね?そのせいで苦労に苦労を重ねて、手に入れた越前をたった2週間で失ってしまいました」


「ま、まあ?ひとを信じるってのは、良いことだと想うぜ?殿との。それよりも落ち着いてくれ?頼むからさあ?」


信盛のぶもりが信長の機嫌をなるべく損ねないように、言葉を選びつつ発言するのである。


「ああ、だまし討ちをされた以上は、こちらも報復しないといけませんねえ。ちょっと、長島の一向宗のひとたち全員、死んでもらいましょうか?」


「う、うむ。それが良いと想うのでもうす。我輩、反対どころか、大賛成でもうす」


勝家かついえもまた、信長からただならぬ雰囲気を感じ取り、言葉を選んで発言していた。


「信長さまっち、でも、どうするんっすか?昨年までこっち、織田家うちは戦い続きっす。少しは兵を休ませないと、皆、倒れてしまうっすよ?」


信長の召集命令により、滝川一益たきがわかずますまでもが岐阜城に呼ばれていたのである。今は1574年2月。信長は報復のための長島攻めのために織田家の主力武将を集めていたのである。


「たらららーん!信長さまー。舟を手に入れるのに、もうしばらく時間がかかるって、九鬼くきさんが言っていたのですー。だから、あと1カ月くらいはどちらにしろ、長島攻めは行えないのですー。ここは、一益かずますさんの言う通り、兵に休息を与えつつ、しっかりと準備することを進言するのですー」


そう信長に進言するのは丹羽にわである。彼は正直言って、長島攻めにはノリノリであったため、特に反対の意思は持っていなかったのである。


「ふううう。今すぐにでも皆殺しにしてやりたいのですが、できないのですかあ。しょうがありません。まずは、越前から一向宗たちの侵攻を許さないためにも北近江の半分を秀吉くんに与えましょう。若狭は、うーーーん。丹羽にわくん、丸ごと収めてくれますか?」


「別に構わないですが、にわちゃんは長島攻めに参加するんですよねー?にわちゃんの家臣団任せになりますけど、かまわないですかー?」


「はい。それでいいですよ?若狭まで侵攻されなければ、とりあえずはそれで大丈夫でしょう。それと、のぶもりもり、南近江の秀吉くんの領地だったところを、全部、あなたに任せますけど、きっちり領地運営をしてくださいね?」


「ああ。わかったぜ。で、北近江のもう半分は誰が統治するんだ?まるまる一国、秀吉に与えるわけにはいかないだろ?」


「2分の1を秀吉くん。4分の1を光秀くん。そして、さいごの4分の1を、うーーーん。河尻かわじりくん辺りに任せておきますか。ああー。越前には勝家かついえくん、利家としいえくん、佐々(さっさ)くん、それに不破ふわくんに与えようと想っていたのですがねえ?」


「ガハハッ!越前を再び取り返したときに与えてもらえれば充分でもうす。それほど、気になさる必要はないのでもうす」


「すいませんねえ。勝家かついえくん。あああ、人生、なかなか上手くいかないものですよ。まあ、勝家かついえくんが越前に土地もらったところで、勝家かついえくん自身は、そこら中にでばってもらう予定だったりするのですがね?」


「まあ、織田家うちの豪勇第一を越前に貼りつけておくわけにもいかないもんなあ。でも、冬はどうすんだ?さすがに勝家かついえ殿でも豪雪地帯を通って、岐阜にはやってこれないだろ?」


「そこは無理やりにでも戻ってきてもらいますよ。勝家かついえくんの筋肉を甘くみないでください。勝家かついえくんの筋肉が発する熱量を舐めてませんか?のぶもりもりは?」


「い、いや?ちょっと、さすがに言っていることに無理があるような気がするんだが?でも、勝家かついえ殿ならやりかねないから、なんとも言えないなあ」


「ガハハッ!殿との。大雪になろうとも、その時は穴を掘って岐阜に辿り着いてみせるでもうすよ!まあ、利家としいえ佐々(さっさ)は嫌がるだろうでもうすがな?」


「まあ、越前を失ってしまった以上、また、大幅に路線変更を強いられたわけですが。まあ、済んだことはさておいて、とりあえず、目障りな者たちを駆逐しましょうか。長島でまず報復します。これは絶対です。次にそうですねえ。武田家を一発、殴りにいきましょうか?いくら家康くんと言えども、武田家を弱体化させておく必要がありますので」


「うん?殿との。ついに対武田の戦術が決まったのか?」


信盛のぶもりがそう信長に尋ねるのである。


「はい。北近江と南近江の国友村の再建を丹羽にわくんが完了してくれたので、これで鉄砲の増産が滞りなく行えるようになりましたからね。フル稼働で働いてもらえれば、1年で3000丁くらい作れる予定です。まあ、これは織田家うちの領土にある鍛冶屋全部を含めての話になりますけど」


「うっわ。鉄砲を3000丁作らせるのかよ。とんでもない計画だなあ。それじゃあ、武具はどうすんだ?そっちまでは回せないだろう?」


「そうですね。鉄砲が3000丁もあることが肝心ですからね。これがそろわない限りは武田家とまともに野戦をする気にもなりませんよ」


「えっ?信長さまっち、何を言っているんっすか?300騎で家康さまっちの1万2千をふるぼっこにした相手っすよ?信長さまっちは越前を一向宗に取られたのがきっかけで狂ってしまったんっすか?」


一益かずますくんは失礼なことを言ってくれますねえ?先生、本気の本気で武田家と野戦で戦うつもりですよ?いくら信玄くんに比べて、勝頼かつよりくんが劣ると言えども、あちらにはそれを補佐する武田四天王が存在するのです。彼らが、わざわざ先生が手塩にかけた岐阜城を攻めるわけがないじゃないですか」


「それもそうっすね。でも、どこで野戦を行うつもりなんっすか?鉄砲を3000丁そろえたところで、戦う場所が、鉄砲を使うのに適した場所じゃないと、意味がないっすよ?」


「そこは家康くんに今、調べてもらっているところです。一見、武田家の騎馬軍団が圧倒的に有利に戦えそうで、実は、こちらの鉄砲軍団のほうがめちゃくちゃ有利に戦えそうなところです」


「そんなに都合よく見つかるもんっすかねえ?まあ、俺っちは信長さまっちにやれって言われたら、それに従うまでっす。あと時期はいつ頃なんっすか?」


「うーーーん。まあ、来年、梅雨明けしたのを見計らってでしょうね。ですから、来年の5月から6月ってところでしょうね」


「わかったす。それまでに配下たちに鉄砲の訓練を重点的にさせておくっす。3000丁ってことは、俺っちの部隊に回ってくるのは大体、500丁と想っておけば良いんっすか?」


「先生の考えでは、のぶもりもり、一益かずますくん、そして、利家としいえくん、佐々(さっさ)くん、塙直政(ばんなおまさ)くん。さらに勝家かついえくんに出陣してもらうつもりです。秀吉くんや光秀くんたちにも来てほしいところなんですが、そこらは微妙ですねえ」


「うん?せっかくの武田家との一大決戦に、秀吉と光秀を呼ばないのか?勿体ない気がしないか?殿との


「武田家との1大決戦を視野に入れれば、それまでの間、越前を放置したままになりますからねえ。どちらかを丹羽にわくんと共に若狭、北近江の守備につかせねばならないわけですよ。まあ、どっちにでばってもらうかは、公平にくじ引きで決めますかね。くじ引きなら恨みっこなしですし」


「まあ、くじ引きなら公平だな。なんか、そのくじ引きに唐辛子一気食いとか混ぜてたら、地獄を視そうだけどな?」


「のぶもりもり、それは良い案ですね。あと、たわし1年分もつけましょうか。いやあ、どちらかが当たりを引くまで、延々、変なモノを引き続けることになるとは、秀吉くんも光秀くんも予想できないでしょうね?」


「たららーん。それなら、くじ引きに切腹も混ぜたらどうですー?すっごく緊張感が出ていいと想うのですー」


「い、いや?丹羽(にわ)くん?それはさすがにやりすぎです。何の咎もなく切腹はだめでしょう?そういうのは罪人相手のくじ引きにしましょうね?」


「はーい。わかりましたのですー。じゃあ、罪人専用のくじびきを考えておくのですー。切腹、打ち首、はりつけ、火だるま、血だるま。うーーーん。あと、何がいいでしょうかー?」


「ガハハッ。水攻めと生き埋めがあるのでもうす。まあ、罪人と言えども、捕まえる前に自ら死を選びかねないでもうすがな?」


勝家(かついえ)が笑いながらそう丹羽(にわ)に言うのであった。


「罪人と言えば、岩村城の叔母がいましたねえ?あの叔母にはほとほと困ったものです。武田家との秋山信友(あきやまのぶとも)くんでしたっけ?結局、結婚しやっがったんですよね?」


「あー、そうなの?俺たちが、畿内や越前へ飛び回っている間にそんなことになってたのか?いやあ、殿(との)の親族なだけあって、頭のネジがふっとんでるなあ。とてもじゃないけど、降伏するだけならともかく、敵方の将と結婚までしちまったかあ」


「じゃあ、その信長さまの叔母用にくじ引きを作っておかないといけませんねー。竹のこで首級(くび)を切り落とすのも混ぜておくのですー」


「まあ、岩村城の攻略は後回しですね。下手に手を出せば、こちらの準備が整わないうちでの武田家との決戦がおきてしまいますし。まずは、長島の一向宗を皆殺しにすること。そして、武田家との一大決戦の準備をすること。そして、越前を取り返すこと。これが織田家のここ1~2年の方針となるでしょうね」


「ほい。殿(との)。わかったぜ。じゃあ、舟の準備ができ次第、長島攻めになるわけだな?今の内にたっぷりと兵士たちに休息を与えておくぜ?しっかし、今年も波乱含みのスタートだなあ。神さまはもう少し、俺たちに楽を与えてくれてもいいんじゃないですかねえ?」


信盛(のぶもり)は首をごきごきならしながら、まいったもんだぜと神さまに対して悪態をつきたい気分であった。

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