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ー猛虎の章 7- お竹の幸せな1日

「おお、御父おんちち・信長殿。やっと来たでおじゃるな。しかし、北野天満宮きたのてんまんぐうの紅葉はきれいでおじゃる。こんな良く晴れ渡った日に、お竹ちゃんと結婚式を挙げれるとは、まろは思ってもいなかったのでおじゃる」


「将軍さま、お久しぶりですね。そうですね。先生も、これほどまでに見事に晴れもようになるとは思ってもいませんでした。しかも、紅葉が美しいことこの上ないですね。お竹さんの神社選びは大成功と言ったところでしょうか?」


「そうだねー。私もここまで晴れるとは思っても見なかったよー。これは人生で一番良い日になること、間違いなしだねー」


 白無垢姿の花嫁である、お竹がそう信長に告げる。


「あれ?お竹さん、泣いたのですか?眼のところが少し腫れ上がっていますよ?」


「うーん。ちょっとだけねー。さっき、お父さんとお母さんに今まで育ててくれたことに感謝を言いに行ってたんだー。そしたら、自然と涙がぼろぼろとこぼれちゃったんだよー」


 お竹の言いに、信長がうんうんと頷く。


「それは仕方ありませんね。うちの奥方連中も結婚式のたびに泣いてしまうひとが続出しましたからね。まあ、唯一の例外と言えば、帰蝶くらいなものですかねえ」


 信長がそう言うと、ふくらはぎをガン!と蹴飛ばされるのである。


「いたっ!だれですか。いきなり、先生の足を蹴るのは」


「結婚式に泣かなくて、すみませんでしたわね。どうせ、私はまむしの娘です。ああ、今度、殿とのが寝室にきましたら、懐剣で少し刺してしまいましょうか?」


 帰蝶が信長の後ろでニコニコとした顔つきで立っている。これはしまったとばかりに狼狽する信長である。


「あ、あの?帰蝶さん?さすがに、そろそろ寝室に斉藤道三から譲られたと言う懐剣を忍ばせるのはやめてくれませんかね?たまに視界に入って、いちもつが萎えかけるんですよ、あれがあると」


「あら?信長さまにしては情けないことをおっしゃいますわね?良いですか?男と言うのは常在戦場と言います。懐剣のひとつやふたつで狼狽えてもらっては困ります」


「いや、そんなこと言っておいて、近頃は槍とか鉄砲まで置いていますよね?寝室に。一体、帰蝶は何と戦っているのですか?先生、不思議でたまらないのですが」


「いつ、信長さまに不埒な行為に及ぶものが現れるのかわかりませんわよ?それくらいの準備を整えておくのは、大名の正室としてのたしなみなのです」


「そんなたしなみ、捨ててくださいよ!」


 信長と帰蝶の言いにお竹が、あははと笑いだす。


「そうかー。そうだよねー。帰蝶ちゃんの言う通りだよー。私も義昭よしあきちゃんを守るためにそのくらいの心構えでいなくちゃならないよねー。帰蝶ちゃん。あとで、その辺、詳しく教えてくれないー?」


「ちょっと待つでおじゃるよ、お竹ちゃん!まろとお竹ちゃんの寝室を武器庫にする気でおじゃるか?まろだって、槍や鉄砲に囲まれたら、いちもつが萎えてしまうのでおじゃる」


「まあ、将軍さまの身の回りが守られるなら、別に先生は構わないと思いますけどね?どうせなら、鎧も持ちこんだらどうですか?」


「鎧を着込んでのプレイかー。それは考えたことがなかったなー。どう?義昭よしあきちゃん?一度、鎧プレイもやってみないー?」


「それってしんどいのはまろだけなのでおじゃる。ただでさえ、お竹ちゃんに搾り取られていると言うのに、鎧をつけたままイチャイチャするなんて、どこの拷問でおじゃるか!」


 義昭よしあきの抗議に、お竹が腕を組んで、むむむーと唸りだす。


「じゃあ、私が鎧を着込むよー。そしたら、義昭よしあきちゃんは楽できるじゃないー?」


「それも、ありでおじゃるな。鎧を着込んだ女性と言うシチュエーションは燃えるでおじゃる。まるで、敗残兵を犯している気分になれるでおじゃる」


「あらら。将軍さまが何か変な性癖に目覚めてしまいましたね。でも、身ごもっている内は、そういう激しいのは止めた方がいいですよ?出産を終えてからのほうが、お竹さんとしては良いでしょうね」


「それもそうだねー。じゃあ、義昭よしあきちゃん。無事に赤ちゃんが産まれてから試そうねー。それまで、待ってねー?」


 お竹の言いに、義昭よしあきがだらしなく顔の表情をくずす。


「うっほん。そろそろ、式を始めるのじゃ。まったく、殿とのときたら、話を始めると止まらないのが難点なのじゃ!少しは自重すると言うことを覚えても良い歳なのじゃ」


 村井貞勝むらいさだかつが、正装をして、信長や義昭よしあきの前にやってくる。


「おお。貞勝さだかつ殿。御父おんちち・信長殿に意見を言えるのは、そなたくらいなのでおじゃる。日頃の言動についても厳しくお願いするのでおじゃる」


「はいはーい。丹羽にわちゃんなのです。義昭よしあきさま、貞勝さだかつさまが言ったところで、信長さまは反省なんかしないのです。むしろ、貞勝さだかつさまの胃に穴が開くまでとことん追い詰めちゃうのです」


「ぐぐぐっ。丹羽にわなのかじゃ。確かに殿とのに文句を言えば、あとで仕返しされるのは眼に見えているのじゃ。だが、それでもわしは殿とのに小言を言う役目を放棄することはないのじゃ!」


貞勝さだかつ殿もめんどくさい性格だよなあ。そんなんだから、胃に穴が開くんだぜ。少しは殿とののやりたいようにやらせてみるのも良いことだと思うぜ?」


「ガハハッ。信盛のぶもり殿、それは貞勝さだかつ殿に言っても無駄でもうすよ。貞勝さだかつ殿から小言を取ったら、何も残らないでもうす」


「くっ。信盛のぶもり殿に勝家かついえ殿め。お前たちもわしの胃に穴を開けている張本人と言う自覚はないのかなのじゃ!」


「あれー?俺たち、なんか貞勝(さだかつ)殿にしたっけ?曲直瀬(まなせ)殿の毛生え薬をちょこっと譲ってもらった件か、もしかして?」


「ガハハッ。あれはなかなかに面白い薬でもうしたな。薬の効果が効いている間だけ、黒い長髪の女性になってしまうでもうす。まあ、いちもつはそのままなので、本当の女性の気分にはなれないでもうすがな!」


「本当、勝家(かついえ)殿の顔が女性顔になってんのに、身体は筋肉隆々だったから、思わず、酒をふいちまったぜ。ありゃなんの冗談だったんだ?」


「わしの唯一のストレス発散の毛生え薬で遊ぶななのじゃ!まったく、曲直瀬(まなせ)殿の毛生え薬は値が高くつくというのに、ガバガバと使いおってなのじゃ」


「え?まじなの?俺、知らずに10錠くらい、かっぱらったのって、まずかった?」


「お主はどれだけ盗んでおるのじゃ!あれは、1錠100文もするものなのじゃ。まったく、油断もスキもない男なのじゃ」


「うちの嫁さんの小春は肩までくらいの長さだし、エレナは褐色だから、黒髪がものすごく長くなって、夜の営みではまるで別人を相手しているみたいで、すっごく興奮するんだよなあ。しかも、女性にアレを飲ますと10歳くらい、顔が幼くなるわけよ。もう、犯罪臭がプンプンしちまうぜ!」


「ほっほう。のぶもりもり、中々、良い趣味をしていますね?でも、エレナさんにその薬を飲ませると、10歳前後の顔付きになってしまうと言うことですか。ちょっと、誰か、警護のひとを呼んできてくれます?ここに性犯罪者がいますよ!」


「信長さま、丹羽(にわ)ちゃん、思うんですが、せっかくのハレの日に、逮捕者を出してはいけないと思うのです。ここはおおめに見ておくのです」


 丹羽(にわ)がそう信長をたしなめる。だが、信長は、ちっと舌打ちをして悪態をつく。


「あーあー。先生も20歳くらいの若い(めかけ)が欲しいですねえええええ!そして、その曲直瀬(まなせ)くんの毛生え薬をその女性に飲ませてみたいものですよおおおお」


 そうのたまう信長のふくらはぎをガンッと勢いよく蹴るのは帰蝶である。


「信長さま?いい加減にしてください?よくよく考えてみるのですわ。1錠で10歳、若返って見えるのであれば、私にその薬を2錠のませれば解決するとは考えないのですか?」


 帰蝶が眉間に青筋を立てながら、信長にそう告げる。


「はっ!そうですよね。さすが帰蝶さんです。では、さっそく、貞勝(さだかつ)くんの薬箱から毛生え薬を失敬してくるので、少し待っていてくださいね?ああ。帰蝶が10代に戻るなんて、先生、今夜はハッスルしちゃいそうですよおおおお」


「だから、わしの毛生え薬を盗ろうとするのはやめるのじゃ!殿(との)たちも、曲直瀬(まなせ)殿から直接、買えばいいのじゃ」


 貞勝(さだかつ)にそう言われた信長が、何を言っているんだこいつはと言う顔付きになり、続いて、信盛(のぶもり)勝家(かついえ)の方を向く。


「のぶもりもり、勝家(かついえ)くん。貞勝(さだかつ)くんってわかってないですよね。他人のものだからこそ、盗りたい気分になるっていうのにですね?」


「まあ、貞勝(さだかつ)殿の財布は軽くなるが、そのおかげで俺たちはいろいろなプレイを楽しめるんだ。貞勝(さだかつ)殿には素直に感謝の念を伝えておいたほうがいいと思うぜ?殿(との)


「ガハハッ!しょうがないでもうすな。では、皆を代表して、我輩が貞勝(さだかつ)殿に感謝の念を伝えておくでもうす。貞勝(さだかつ)殿、毛生え薬を分けてくれてありがとうでもうす」


「だから、誰も殿(との)たちのために曲直瀬(まなせ)殿から薬を買っているわけではないのじゃ!感謝の念は入らぬから、反省でもしていろなのじゃ」


 信長、信盛(のぶもり)勝家(かついえ)貞勝(さだかつ)の言い合いを近くで見ていたお竹が、つい可笑しそうに笑いだす。


「あはははっ。やっぱり、織田家のひとたちは皆、面白いひとたちでいっぱいだよー。私は皆に祝福されて、結婚式を挙げれて、幸せものだよー」


 幸せそうに笑うお竹を見ながら、義昭(よしあき)は思う。もっと、お竹ちゃんを幸せにしなければならないでおじゃるなと。


 しかし、義昭(よしあき)の心の内は、お竹とは少し違っていた。織田家を幕府の政治から排除し、新しき世でお竹ちゃんをひのもとの国1番の幸せ者にせねばならないと考えていたのであった。

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