ー猛虎の章 6- 愛があるから尻を掘る
「ふひっ?そういえば、将として一角あるものを自分の小姓にすると言う話はどこにでもあるのでございますが、信長さまは蒲生氏郷には手をつけなかったのでございますか?」
光秀がふとした疑問を信長に示すのである。
「氏郷くんですか?そうですね。先生としては、手を出したい気持ちはあることはあるのですが、いかんせん、自分の娘を嫁がせる話を決めてしまいましたからねえ」
「ああ、なんとなく、それは心情的に嫌な気分になるッスね。信長さまの娘としてはッス」
「ふひっ。自分の父親に尻をほられた男を夫に迎えるのは、嫌でございますね。なんとなく、男として見れなくなると言ったところでございますか?」
「いや?違いますよ。光秀くん、勘違いしていませんか?別に性欲のおもむくままに先生たちは尻を掘るわけではありません。愛があるからこそ、お尻を掘るのですよ?」
「信長さまの言う通りッス。信長さまの娘から言わせれば、もし、氏郷の尻を信長さまが掘ると言うことは、信長さまとその娘は恋敵と言うことになるッス」
「ああなるほど、そういうことでございますか。それは確かに、信長さまの娘は嫌な思いをするわけでございますね。親娘でどろどろの恋愛劇とか、たまったものではないのでございます」
光秀は得心したとばかりにうんうんと頷くのである。
「光秀がもし、男に惚れた場合は、その辺、気をつけるッスよ?その男の嫁さんに刺されるくらいの覚悟で尻を掘ったほうがいいッス」
「あれ?もしかして、利家くんの奥さんの松さんに、先生、命を狙われている可能性があるってことですか?」
「うーん、どうなんッスかねえ?松とはしっかりイチャイチャはしているッスから、そんなことはないと思いたいッスけど、本心のところはどうなんッスかね?」
信長と利家が頭にハテナマークを浮かべながら、うーん?と頭を捻ることになる。
「ふひっ。女性に刺されるよりも、男に刺されるほうが危険性は高いと思うのでございますが、その辺りはどうなんでございますか?」
「俺の場合は、信長さまの茶坊主を斬ったことはあるッスね。そう言われると、男女変わらず、痴情のもつれって怖いところッスね」
「話は少しずれますが、大内義隆と陶晴賢と言う人物を知っていますか?」
「ん?陶晴賢って言うのは、確か、大内氏が衰退した原因になった男じゃなかったッスか?大内義隆に謀反を起こしたあとに、さらに謀反を起こした毛利元就に討たれた男だったようなッス」
「だいたい、そんな感じですね。まあ、彼らの名前を挙げたのは、大内義隆と陶晴賢は愛し合っていたんですよ。というか、陶晴賢は改名しているんです。元の名は陶隆房であり、大内義隆より、名前の1字をもらっているのですね?」
「なるほどッス。陶晴賢は名前の1字をもらえるほど大内義隆に溺愛されていたわけッスね」
「で、下衆の勘ぐりな巷の噂では、陶晴賢の謀反は、痴情のもつれと言われています。国内の動乱により、息子を失った大内義隆が国政より身を引いたことにより、かつて愛した男が情けない姿になりかわったことに腹を立てた陶晴賢が謀反を起こしたとも言われているのですよ」
「うへえ。怖い話も有ったもんッスね。でも、俺は信長さまが腑抜けになったとしても、全然、構わないッスよ?腑抜けになった信長さまもそれはそれで、面白い夜の営みを楽しめそうッスもん」
「ふひっ。それは世に言う、ヘタレ攻めというやつでございますかな?最近の攻めの姿勢には色々あると言われているのでございます。謀反攻め、焼き討ち攻め、根切り攻めなど、色々あると言われているのでございます」
「おっ?光秀にしては詳しいッスね。謀反攻めって言うのは、主君のお尻を逆に掘ってしまうプレイっすね」
「焼き討ち攻めとか、根切り攻めって言うのは何です?利家くん?」
「焼き討ち攻めって言うのは、ろうそくのロウを身体に垂らして熱がるのを見て、楽しむプレイのことッスね。最近、流行り出したんッスよ」
利家の言いに信長がほうほうと言いながら耳を傾けるのである。
「あと、根切り攻めと言うのは、多人数によるプレイッス。南蛮風に言うと、3ピーとか4ピーとか言われているそうッス」
「色々とあるものなのですね。先生、さすがに性欲が無限大だと言われていても、同時に相手できるのは3人までですよ」
「信長さまは奥方が多いッスもんね。一晩に2~3人同時じゃないと、さばけないッスもんね」
「ふひっ。信長さまがうらやましいのでございます。僕は浮気防止で、いちもつを墨で真っ黒に塗られているので、他の女性と寝たら、一発でばれてしまうのでございます」
「あれ?でも、墨なんて汗で流れてしまうッスよね?汗で流れたと言えば、ばれないんじゃないッスか?」
利家がそう光秀に問いかけるのである。
「なんでも、墨に何かを混ぜているらしいのでございます。墨自体は汗で流れたとしても、いちもつについた味や匂いでわかると、ひろ子は言っていたのでございます。しかも、日ごとに混ぜているものを変えているらしく、何か小細工をしようものなら、いちもつをへし折られてしますのでございます」
いちもつをへし折られると聞いて、利家は股間を抑えて、ぶるぶると身震いするのである。
「いちもつは縦の衝撃には強いのでございます。でも、横への衝撃は弱いのでございます。握ってもらうときは少し恐怖を感じるときがあるのでございます」
「ああ、先生も2,3度、折られたことがありますね。あれは地獄の痛みなんですよ。さらに、おしっこするときにおもしろいことになるんですよね。曲線を描きながら放射するので、便器にうまく命中させることができなくなります」
「そんな解説いらないッス。もっと建設的な話をするッスよ」
「ええ?でも、聞いておいて損はない情報だと思いますけどね?ねえ、光秀くん」
「ふひっ。ところで、利家殿は自分のための小姓を雇ったりはしないのでございますか?」
「んっ、それって、信長さまさと俺みたいな恋愛を家臣とはしないのかって意味ッスか?」
「そのとおりでございます。利家殿もそろそろ、良い歳になったのでございます。前田家の当主としての貫禄も出てきた以上、小姓のひとりやふたり、はべらかしてもいいのではないのかと思うのでございます」
「んー。考えたことが無かったッスね。でも、松から見たら、家臣との恋愛は浮気として見られるんッスかね。そこが問題点ッスね。信長さまの場合はどうなんッスか?」
「先生ですか?うーん。奥方連中から、利家くんとの仲について、表立ってとやかく言われたとこは無いですね。まあ、子はしっかり作っていますし、先生としては、小姓がそのまま自分の親衛隊に代わるのですから、おおめに見てくれているのではないですか?本人たちから直接聞いたわけではないので、確証を取れていることではないですが」
「そうッスか。でも、俺、城持ち武将じゃないッスからねえ。一益や秀吉、光秀みたいに城主になっても無い内に、自分専属の親衛隊を雇うって言うのも、どうかと思うんッスよねえ」
「僕は宇佐山城の城主を任されているのでございますが、うちの家臣団は斎藤家から出奔したときから付き従ってきたものばかりで、おっさんだらけでございます。若い男が入ってくる余地がないのが困りどころでございます」
「斉藤利三くんたちでしたっけ?光秀くんの家臣団と言えば。ひるがえって利家くんと言えば、おっさんではないですが、同期としては佐々くんですし、あと不破光治くんも最近、活躍をするようになってきましたね。今に、美濃3人衆を超える、なんとか3人衆って呼ばれるようになったりしたら、面白いですね?」
「不破ッスか。そういえば、元々、岐阜出身だったはずッスよね、あいつ。佐々とよくつるんでいるみたいッスけど、あいつがどうかしたんッスか?」
「この前の5月の長島攻めで氏家卜全くんが亡くなったので、勝家くんの副官に新たに不破くんをつけようかと思っているところなのですね?」
「うわっ、勝家さま付きの副官ッスか。それはまた難儀なところに飛ばされるッスね。不破の奴、辞職願いでも持ってくるんじゃないッスか?」
「ふひっ。僕も勝家さまの下は嫌でございますね。休みを1日も、もらえなくなりそうな気がするのでございます」
「きみたち、何を言っているんですか?勝家くんだって、生き物ですよ?休息くらいとると思うのですが、違うんですか?」
「なんで、そこで疑問形なんッスか。勝家さまは休息のときも筋肉鍛錬をするようなひとッス。筋肉は1日にして成らずでもうすってのが、勝家さまの座右の銘ッスよ」
「ふむ。それは困りましたね。不破くん、もしかして、1年後には筋肉隆々となっているんじゃないですか?先生、抱く相手は、少しなよっとしてくれているほうが、攻め甲斐があるんですけどねえ」
「ちょっと待つッスよ。信長さまはことあるごとに、抱くとか不穏な言葉を出すのは止めるッスよ。不破にだって嫁さんはいるッス。すこしは嫁さんの気持ちになるッスよ!」
「ええ?でも、不破くんは中々にいい声で鳴きそうな気がしませんか?その彼が筋肉隆々になってしまうと思うと、残念で仕方ありませんよ。今が調度いいくらいの身体つきなんですから」
「ふひっ。でも、不破殿は2枚目と言うよりは武辺ものの顔付きでございます。信長さまは確か、美男子が好きと言ってたのではないのかでございます」
「それはそれ。これはこれです。毎日、ご馳走を食べていたら、たまには粗食も食べてみたくなる気持ち、わかりませんか?」
「残念ながら、その気持ちはわからないッス。粗食は粗食ッス。食べたい気持ちにはならないッス」




