ー大乱の章11- 信長の想い
お竹は、うわずった声を上げ、自分の股をまさぐる右手を止めることはなく、熱い吐息をはあはあと口から零れ落とすのである。義昭は、ごくりと息を飲みこむ。だんだん、理性が働かなくなっていくのが、義昭にはわかる。だが、それでもと頭を左右に振り、お竹の誘いを断るべく、何か言おうとするのであった。
しかし、先に動いたのは、お竹のほうであった。自分の股をまさぐっていた右手を義昭の着物の隙間にするっと入れ、彼のいちもつをつかむのである。義昭は、思わず、はうっと声を上げてしまう。
お竹の右手は女汁でてらてらと光って濡れており、その女汁を義昭のいちもつに塗りたくるのである。こんなことをされて、いちもつが起き上がらないものなどいないのであった。
「お竹ちゃあああん!」
「あん、義昭ちゃん。まったく、慌てん坊さんなんだからあ」
義昭は部屋の襖と閉じずにお竹との行為にいそしむのである。それを見た義昭の側付きが慌てて、その襖を閉じる。
「ん?今、何か横でどたばたとしていましたが、何かありました?」
信長が側付きのものにそう聞く。しかし、彼は、首をぶんぶんと横に振るばかりである。信長はふむと息をつき、またもや、将棋のほうに熱中するのであった。
そして、信長と貞勝の対局が始まってから3時間後、ようやく、将棋の勝負は決着を迎えようとしていたのだった。
「むむ。うーん、これは」
頭を両手で抑え、何か挽回策はないのかと知恵を振り絞る信長に対して、貞勝が余裕しゃくしゃくと行った表情で、信長を見る。
「さて、これで王手なのじゃ」
貞勝がとどめとばかりに、信長の王将の前に銀を置く。信長は、あああああと寄生を上げ、天井を見上げるのであった。そして、がっくりと肩を落とし、頭を下げる。
「まいりました。この勝負、貞勝くんの勝ちです」
「うっほん!伊達に歳は取っておらぬのじゃ。これに懲りず、また勝負を挑んでくるといいのじゃ」
貞勝は胸を張り、むふふうんと息をつく。
「さて、約束なのじゃ。さっそく、獅子屋の羊かんを買ってくれなのじゃ!」
貞勝の言いに信長が、くっと声をあげる。
「日も暮れてきましたし、明日でいいですか?どうせ、もう獅子屋の羊かんは売り切れているでしょうし、明日のいの一番で買ってきますよ」
「しょうがないのじゃ。では、明日、お願いするのじゃ。ああ、殿との真剣勝負は楽しいのじゃ」
「そうですね。たまには特殊ルール無しで戦うのも、楽しいものですね。時間を見つけて、また将棋をやりましょうか」
信長と貞勝は互いの健闘を称えあうように、右手と右手手を差し出し、硬く手を結ぶ。
「しっかし、将棋の腕前はいいのに、なんで、貞勝くんは、戦ができないんでしょうね?」
「それは、戦は生き物なのじゃ。ルールなどないのじゃ。将棋はルールがあるから、それを守っている内は、わしにも勝利の道筋があるのじゃ」
「なるほどですね。確かに戦は将棋のように決まった動きをするわけではありませんからね。盤上の駒が役割以上の動きをするなんて、ざらですからね」
「その通りなのじゃ。殿の特殊ルールを採用されてでも勝てるものこそが、戦でも、その指揮力を発揮できるのじゃ。所詮、わしはルールが存在する世界でしか、活躍はできないのじゃ」
貞勝の言いに、信長はふむと息をつく。貞勝は貞勝なりに自分のできること、できないことを理解しているのでしょうねと思うのであった。さすが、織田家の1番の官僚であると。官僚に求められることの第1はルールを順守することだ。
ルールを作る、変えるのは信長の役目である。ルールは作られた当初は素晴らしい効果を発揮する。だが、年月が経てば、そのルールはその時代に合わなくなり、逆に民たちの活動を規制するものになってしまう。
それを変えれるのは為政者だけなのだ。為政者は常にルールについて気を配らなければならない。信長が考えて作った、関所撤廃、楽市楽座、兵農分離も時代遅れになる時がきて、そのルールを変えなければならなくなるだろう。
しかし、それはまだ先のことである。天下を治め、民に笑顔を取り戻させ、安心で安全な世の中にしなければならない。信長は思う。きっと、自分の作ったルールはやがて陳腐化していくのであろう。それは、100年後、200年後の先の話かもしれない。
100年後、200年後のひのもとの国はどうなっているのだろうか?民はいつでも幸せな笑顔で、自分の夢を叶えるために日々を過ごしているのであろうか?
いや、そんなことを今、考えても仕方がない。今、頭を悩ませている、この包囲網を打開しなければならないのだ。
信長は自分には天から与えられた使命があるのだと考えている。ひのもとの国に住むすべての民が笑って暮らせる世を作れと、そう命じられているのだと思う。自分が天から与えらえれた、軍才も、政治の才能も全て、そのために使い切らなければならないのだと。
「貞勝くんは、先生のために長生きをしてくれますか?」
信長の言いに貞勝が何事かと、信長の顔を見つめる。
「何を言っておるのじゃ。この貞勝、まだまだ、死ぬ気はないのじゃ。いらぬ心配をする必要はないのじゃ」
あぐらで座る信長に対して、貞勝は正坐に座り直し、うっほんと咳払いをする。
「殿は自分がしたい、やりたいと思っていることをするのじゃ。なあに、この貞勝、殿が考えていることを実現するために、身を粉にしてでも働くのじゃ。無論、他の家臣たちも思いは同じはずなのじゃ」
「ありがたい話ですね。皆さんの期待に応えるためにも先生は精進を続けなければいけませんね」
信長はそう言い、ふふっははっあははと笑う。貞勝もつられて、はははと笑うのであった。
ひとしきり笑ったあと、貞勝は、はっとした顔付きになる。
「と、殿。大変なのじゃ!ゆっくり将棋を指している時間など、なかったのじゃ」
慌てふためく貞勝を見て、信長もはっと言う顔になる。
「しまった!こんなことしてる場合じゃありませんでしたよ。義昭は、彼はどうしました?」
信長と貞勝は、がばっと立ち上がり、急いで襖をガンッと開く。そこには、裸で折り重なって畳の上で眠る男女が2人、いたのである。
その男女は汗と男汁と女汁で身体は汚れきっており、ひと目、見ただけで壮絶な求め合いが行われていたことが想像に難くない。
「これは手遅れだったようですね。将軍さまの死因は腹上死だったようです。見てください、この全てを出し切った顔を」
「勝手に殺すななのじゃ。しっかり息はしているのじゃ。しっかし、よくこうなるまで、求め合うものなのじゃ。ほっといたわしらもわしらなのじゃが、これはいささか、いきすぎなのじゃ」
義昭とお竹は汗と汁にまみれて、すやすやと眠っている。貞勝はどうしたものかと思案していると、信長が眠る2人にずかずかと近づき、義昭の尻めがけて、自分の足の裏でガンッと蹴飛ばす。
その勢いで、義昭は身体を前に押し出され、恰好としては、お竹の顔の上に自分の股を押し付ける形になった。お竹はううんと声を上げ、眼を覚ますと、眼前に義昭のいちもつがあり、少々、驚いてしまう。
「むふふ。義昭ちゃん、まだ出したりないのー?」
お竹はそう言い、義昭のいちもつをぱくりと咥えこむ始末である。義昭は突然のいちもつへの刺激により、はうううと声を上ずらせ、眼を覚ます。
「ちょ、ちょっとお竹ちゃん。やめるのでおじゃる、もう出ないのでおじゃる!」
まだやるのかと、信長は、男女2人を見て、はあああと長いため息をつく。
「将軍さま、お竹さん。いい加減、イチャイチャするのは、やめてもらえませんか?約束の時間はとうに過ぎていますよ?」
「御父・信長殿、助けてほしいのでおじゃる。これ以上、絞り出されては、まろは死んでしまうのでおじゃる!」
義昭は必死に信長に懇願する。信長と貞勝はやれやれと思い、義昭の上半身を左右から抱え上げ、お竹から身をはがそうとする。
だが、お竹は、一度くわえたら決して離さない、すっぽんの如くに義昭のいちもつを咥え込み、ちゅうちゅうと吸い続けるのである。
「あ、あれ?困りましたね。これ、とれないんですけど?ちょっと、お竹さん。止めてもらいます?」
信長は、お竹にそう言うが、お竹は半分、寝ぼけているのか、吸引力はますます強まっており、全然、義昭とお竹を離すことができない。
「本当に、吸い込むのはやめてほしいのでおじゃる、お竹ちゃん!まろのいちもつが取れてしまうのでおじゃる」
お竹の吸引力に義昭は痛いような気持ちいいような感触に襲われ、腰砕けになる。
「義昭さま。腰に力を入れるのじゃ。力を抜けば、全てをもっていかれるのじゃ!」
貞勝は自分の腕に力を込めて、義昭の上半身を持ち抱える。だが、それでもお竹は義昭のものを口から離そうとうはしない。
義昭のいちもつは、信長と貞勝に引っ張られる力と、お竹に吸い込まれる力でいったりきたりになり、その刺激で余計に腰砕けになる。
「ちょっと、将軍さま。何、荒い吐息を出しているんですか!気持ち悪いんでやめてくださいよ」
「あ、あふ、あふん。そうは言われても、この引っ張られるのと吸い込まれるので気持ちいいのでおじゃる。ああ、もっともっと、頼むのでおじゃる」