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折角なので異世界を満喫することにしました  作者: 枯葉一葉
第一章 生活基盤をください
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異世界で事案

「―――は、放せ!!この、ケモノ!ケダモノ!!」


街を歩いていると、流石異世界といったところか。いろいろな発見があるものだ。

例えば、馴染みの無い食べ物ばかりかと思いきや、リンゴやオレンジなんかは売っていたり。

エルフやドワーフなんかは、亜人族という扱いで、人間に属されていたり。


「だから、放せって言ってるの!いい加減にしないと衛兵呼ぶぞ、ヘンタイ!!」


―――あとは、なけなしの金を掏ろうとする不届き者がいたり。


「放せじゃねえんだよ、ガキ。今からお望み通り、衛兵のところに突き出してやるからおとなしくしろ」

「嫌だあああ!!!放してえええええ!!!!」


軽い観光気分で街を歩いていたというのに、スリに会うのは人生初の経験である。

とはいえ、背の低い子供が目深にフードをかぶって、こそこそしているんだ。

怪しいと思わないわけがない。

一目で野良魔族だと見抜いたね、俺は。


そうして警戒してると、想定通りにぶつかってきたため、ぶつかってきたときに即座に持ち物を確認し、巾着袋が取られていることが判明すると同時に尾行。

先回りして路地裏に追い詰めたのだ。


「とりあえず、俺から掏ったものを返せ」

「じゃあ、放せ!腕が使えないだろ!!」

「片腕は空いてる。文句を言うな」

「……ぐぬぬぬぬ!!」


気丈に振る舞う涙目の子供というのは、なんとも愛らしいものだ。

髪が短いものだから、性別か区別しづらかったが、腕の細さから行けば女の子だろう。

それならば、流石に力の差で負けることは無いはずだ。

加えて、この状況は目的のために絶好だといえる。

……今度こそ生涯のパートナーにしてやるぜ。

あ、別にロリコンじゃないですよ。


少女から巾着袋を受け取り、中身を確認する。当然、腕は掴んだままだ。

どうやら銀硬貨は健在のもよう。

「たった2グラン取られたぐらいで大人げないんだよ!!正直、掏る価値も無いね!!」

「テメー、俺の全財産を馬鹿にしやがったな。心優しい人から恵んでもらった大事な金を!」

「はあ!?おまえ、私以下じゃないか!!……ああ、こんなのから掏らなきゃよかった……」

俺より金持ってるのかこいつ。

まあ、俺より持っていない奴なんてそれこそ一文無し以外ないだろうけど。

そうそう、この世界の銀硬貨の単位は『グラン』というらしい。日本円に換算して千円ほどだろうか。

ちなみに32円は予想通り無価値でした。


さあ、ここからが正念場だ。ここで交渉が上手くいけば、異世界を(つつが)なく過ごせるはず。


「いいか、腕を放してほしかったら俺の言う条件をのめ」


「―――やっぱりケダモノじゃん!!」


そう叫び、少女は再びギャーギャーと騒ぎ始める。

全く、心外だな。

女の子の手を握ってどぎまぎしてる俺に、そんな高度な要求できるわけないだろう。

ダメ人間であれど、犯罪者になるつもりなど毛頭ないのだ。

絵面だけ見たら一発アウトな事案なんですけど。


「まあ、どれだけ騒いでも、条件をのんでくれるまで諦めるつもりはないがな」

俺がそういうと、しかし少女はキッと睨んできた。

まだ抵抗をつづけるらしい。

少女は歯を噛みしめると、顔を赤くしながら口を開いた。


「い、言っておくが!魔族と人族じゃ子供はできないし、私は、しょっ、処女じゃ、ないぞ……!!」


なるほど、興を削がせようと、そういうことか。

しかしながら、俺にそのつもりはないし、すんなりと信用するほどいい性格もしていない。

ついでに、煙が出るほどに赤面してちゃ、説得力も無いんだよなあ。


「そうか、その歳でか……。よほど辛い目にあったんだろう、かわいそうに……」


―――だが、ここは同情しておく。


策を逆手に取った良い人アッピルだ。

更に追撃するべく、優しく頭を撫でてやる。

これで陥落は必至、俺のやさしさに包まれるといいさ。


しかし、少女はイナバウアー顔負けに背中を反らせて逃げた。

そんなに照れなくてもいいのに。


「う、嘘だから!!さっきのは嘘だから変な憐れみを向けるなキモチワルイ!!……なんだこいつ、なんだこいつ!!」


「気持ち悪いだなんて、これまた心外な。ひどい扱いを受けてきたから拗ねた子供になったんだろ?いいさ、更生できるように俺が存分に愛情をかけてやるよ」

再度頭を撫でるために手を伸ばす。


「やめろ!!気安く触るなあ!!やめろおおおおおお!!!!」


まあまあ、そう照れるなって。


「だから、一緒に暮らそうぜ。真っ当に仕事しよう。そして幸せに生きよう」


赤面しながら抵抗する少女の頭を存分に撫でる。

フードの上からなので直接触れているわけでは無いのだが、それにしても少女の反応が面白い。


片手で腕を掴んだまま、もう片手で頭を撫で続ける。

すると、しばらく撫でているうちに、だんだん抵抗しなくなっていき、縮こまるようにおとなしくなった。

ふはははは、この勝負、俺の勝ちなようだな。


俺の溢れる優しさに諦めたんだなと思い、顔を覗きこむと―――


「ぐすっ……ひぐ、………ぐすん。……うぅ…………」


―――なんと、ガチ泣きされていた。




描写してませんが、少女の身長は140cmくらい。

主人公は165cmくらいです。

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