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とある小さな村に、一人の少年と、少女がいた。
少女は十五歳前後。大人と子どもの狭間で揺れ動く感情を抑えるため、ひたすらに絵を描いた。
少年は、まだ七歳ほど。純粋で真っすぐで、何にでも興味を持った。
二人は幼い頃からずっと一緒で、農作業に忙しい少年の両親に代わって、少女が少年の面倒を見ていた。この村では、少し年上の子どもが、近所の赤子の子守をするのは普通のことであった。少年は少女によく懐き、少女も素直な少年が大好きだった。
少女はやり場のない思いを抱えると、草原に向かい、絵を描いた。感情を筆に乗せ、爆発させることで、少女は平静を取り戻せたのだ。特に、絵が完成した後、お気に入りの空色で名前を書く瞬間は、また一歩少女を成長させた。少年はそんな少女の思いなど知らず、ただ少女の後を追い、少女が絵を描く姿を眺めていた。少年は、少女が絵を描く姿を見ることが好きだった。
ずっと、少女が絵を描く姿を見て育った。残念ながら少年に絵の才能はなかったようだが。それでも、少女も絵も大好きだった。守りたいと思った。ずっと見ているのも恥ずかしいので、草原を走り回ったり、寝転んだり、本を読んだりしてごまかしながら、少女のお気に入りのワンピースが風にたなびく様子を日がな一日眺めていた。
十数年後、遠くから始まった戦渦は、その小さな村にまで及んだ。ごまかしのために始めた読書が功を奏し学を積んだ少年は立派な青年へと成長し、仕事で近くの大きな町に出かけていた時だった。知らせを聞いて急いで村に帰ると、そこには、少女があまり好きではないといった絵の具の赤と黒を混ぜたような景色が広がっていた。少女のワンピースに描かれた村の象徴は、あっけなく破壊され、無残な姿を晒していた。それが少女と結びつき、猛烈な吐き気に襲われる。しかし、青年はここで挫けてはいけないと村に足を踏み入れた。
もうすでに村は荒らされた後で、人の気配はなかった。青年は必死に女性となった少女を探したが、その努力は虚しく朽ちる。せめてもと、大切にしていた彼女の絵を炎の中からどうにか救い出し、青年は戦争が終わるまで懸命に生きて絵を守った。
戦争が終わると、青年は再びかの村を訪れる。もう、救えるものなど何もないと思われる灰色と黒の中から、毎日何時間も探し続け、僅かながら人々が生きた証を見つけた。そして、青年は誓う。これらの記憶を忘れないように、各地から歴史に残すべきものを集め、保管しようと。そのための、様々な物品を修繕する知識を学び、やがてある街に博物館を創設するまでに至った。そうして青年は、その生涯を費やし、証を集め続けたのだ。
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