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その街は、人の往来が激しいだけあり、かなり栄えた場所だった。商業が盛んなため、各地から商人が集まるからだ。それに伴ってか、芸術や文化もかなり優れていた。
街の中央を突き抜ける大きな通り沿いは様々な商店が立ち並ぶが、少し外れには図書館、美術館、博物館がある。子ども達の学び舎も多く、他の街に教え人を多く輩出している場所でもある。
そのような街並みでひと際目を惹くのが、通称“歴史博物館”だ。この街に訪れた旅人はみな向かう場所である。
「お二人は、歴史博物館目当てでこの街へ?」
道すがら言葉を交わすうちに随分打ち解けたネフィラが、ルシオンに問いかけた。三人は街につくと、ゆっくり話したい気持ちを抑えてまずは宿を確保した。この街には大きな宿が一つと、民宿がいくつかあるが、ネフィラもルシオン達も民宿は選ばなかったようだ。
部屋に荷物を置き、少し身ぎれいにした後、宿屋に隣接する食事処で落ち合い、再び話し始めたところだった。
「もちろんです。けど、私達の旅の目的はまた別にあります」
作りの良いトレンチコートを脱ぎ、カッターシャツに綿のズボン姿になったルシオンが答えた。
「そういえば、最初に話を集めてるって言ってましたね。ここに来る途中は俺が一方的に話過ぎてしまって……お二人の話を全然聞かず申し訳ない」
「いえいえ、学者様のお話をじっくりお聞きする機会は少ないですから、勉強になります」
「いやいや俺なんて学者なんて胸張って言えるもんじゃなくて、目的のための手段として学者をしているだけですから」
ルシオンの隣で優雅に紅茶を啜っていたロベリアが顔を上げた。真っ白な立て襟のブラウスに臙脂のリボン、焦げ茶色のワンピース姿になったロベリアには、丈夫すぎるブーツを除いて旅人の雰囲気はなく、どこにでもいる街の裕福な娘のようである。
「目的というと、絵に関することでしょうか?」
どうやら、もう直接話しかけるようになったらしい。
「鋭いですね、その通り。なんて、俺の話を聞いてたらすぐに分かっちゃいますよね」
笑いながら頭を押さえるのがネフィラの癖のようだ。もう何度もそうして笑っている。笑顔の絶えない、明るい人のようだ。その表裏のない様子に、ロベリアも心を開いたのかもしれない。
ロベリアも紅茶を机に置き、微笑み返す。
「絵がとても好きなことがお話から伝わってきました。何か好きになるきっかけはあったのでしょうか?」
「きっかけですか。少し恥ずかしいんですけど、聞いてくださいます?」
「もちろんですわ。ねぇルシオン」
ロベリアの楽しげな様子を見て安心している様子のルシオンは、笑顔で私も聞きたいと続いた。
「実は、幼い頃の思い出がきっかけなんです」
恥ずかしさから目線を二人から外して、ネフィラは話し始めた。




