表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「Reincarnater」  作者: 春風 優華
二人の出会い
12/24

1

 その日は珍しく一日中雨が降り続けた。少女は降りしきる雨の中、傘もささず、一人荒れた大地に膝をつき、頭を垂れていた。本当は涙を流していたのだが、雨のせいでそれは少女自身にしかわからなかった。少女は一輪の、その町では珍しい種の花を小さな木の前に寝かせ、祈りを捧げる。それがどのような祈りなのか、はたまた祈っているように見えるだけで、別の意味があるのか。少女のその姿は、背丈から想像できる年齢より遥かに大人びて、その仕草は、格好から予想される境遇の者とはかけ離れて繊細で、少女に重なって、誰か全く別の女性が見えるようだった。

 ざざっ、と質の良いブーツが舗装されていない荒れた道を踏みしめる音がして、少女は顔を上げた。足音の主は、少女を視界に捉えたのかその場で立ち止まる。街並みとは到底似つかわしくない様相、しかしながら纏う雰囲気は貴族と言うには地味な、薄幸を物語る濃緑色の瞳の男性だった。大地と傘とが雨を弾く音がその場を支配する。

 少女と男性は、互いの存在に気づくと、静かに息を飲んだ。

 少女の不健康に痩せた頬が、急に生気を取り戻したかのように紅潮し、その頬を、雨が降っていても分かるほどの涙が伝う。男性は少女に近づき、傘をさしかけた。

「随分と、落ち着きましたね」

「君は変わらず美しい」

 男性は少女の横に膝をつき、その細く小さな肩を抱き寄せた。

「やっと会えた。随分待たせたな、フリージア」

「ほんとに、あなたが先にいってから十年、この世に再び生を受け十数年。ずっと待ち続けていましたよ。でも、会えたから」

「もう一度、会えたから」

 震える唇が、優しく触れ合う。互いの温もりが混ざり合い溶け合い、一つになる。

「このような姿になっても、よく見つけてくれました。ありがとう、ワイス」

「何言ってるんだ、君こそ私を分かってくれたじゃないか。とても、とても美しい。どんな姿でも、君は君だ。愛しているよ」

「私もよ。今度こそ、守ってくださいね」

 二人はしばらくそのまま再会を喜びあった。しかし、雨に打たれすぎたせいか少女の体は冷え切っており、再びその頬は生気をなくした。もともと丈夫とは言えない体に産まれ、さらに満足な栄養が得られない環境に育った少女の体力は、寒さで限界まで削られていた。それでも再会の幸せから気丈を演じていたが、それも長くは持たない。

 もちろん、男性はそのことにも気づいていた。少女が力なく男性に寄りかかると、すぐに抱きかかえ、あらかじめ把握していた町の病院に連れていく。男性と会う前、少女だけでは利用できなかった病院。その町は、今では珍しい貧富の差がある、貧民街が存在する町だった。

 少女は、貧民街産まれの病弱な娘。男性は、その町からは少し離れた場所に存在する、工業の発展した裕福な人が多い町の、さらに貴族と呼ばれる立場の次男。

 再会できた二人には、以前にはなかった、大きな隔たりがあった。しかし、世襲の決めつけた隔たりなど、強い絆で結ばれた二人にはそんなものないに等しい。

 しかしながら世界は、奇跡により再開した二人を祝福するほど、甘いものではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ