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Bobby Bobby  作者: Pめんげる
9/15

Patty 登場


クリスは衝撃を受けた。「LAUTREC-One-Night Live」のチケットは元妻リタに送った。妻からは返事はなかったが、代わりに娘と孫に会わせてくれた。クリスはリタの思いやりに深く感謝したのだった。そのリタがアルツハイマー型認知症を患っているとは。


クリスは混乱していたが、とりあえず今しなくてはならないことを考えた。まず、ボビーをドロシーの元に帰すこと。今後のことは親子でしっかり話し合うべきだ。もし、自分にできることがあるなら喜んで相談に乗るつもりだった。


「ボビー、母さんに連絡するよ。迎えに来てもらうことになると思うけど、いいね」


ボビーは小さくうなずいた。


「言い忘れたけど、私を頼って来てくれてありがとう。愛しているよ、ボビー」


クリスは泣き顔の孫を強く抱きしめた。ボビーの目からまた新しい涙がこぼれた。


その翌日。母親のドロシーが妹のパティとともにやって来た。


「はじめまして! おじいちゃん。孫のパティです。お目にかかれてうれしいです!」


「キミがパティか……私はクリストファー・スペンサーだ」


「知ってますよ、もちろん! ボーイフレンドのバースデーパーティーとかぶらなかったら私だってライブ行きたかったもん。でもボビーが家出してくれたおかげでこうやっておじいちゃんにも会えちゃった」


家出息子を連れ戻しに来た母親と、家出した兄の複雑な思いを知ってか知らずか、妹のパティは大はしゃぎだった。でもそれが彼女なりの気づかいであることをみんな知っていた。

 

「ねえおじいちゃん、一緒に写真撮って! Instagramにアップしてもいいでしょ?」


というとパティはスマホをボビーに渡した。


「感動の対面シーンよ、しっかり撮ってよね」


ボビーは言われるままに祖父と妹のツーショットを何回も撮った。業界の大物プロデューサー、クリス・スペンサーも孫娘のペースに完全に巻き込まれた。


「ドロシー、こうして僕を受け入れてくれて心から感謝している、ありがとう。キミもいろいろつらい経験をしてたんだな」


ドロシーをハグしながらクリスが娘の耳元で言った。

ボビーとパティは顔をくっつけてスマホをのぞき込んで撮ったばかりの写真を確認していた。生意気な妹とシャイな兄だけど兄妹仲は悪くはないようだ。


「だけどドロシー、これはとても大切なことなんだけど、ボビーは離婚で傷ついた心の傷からまだ血を流している。キミの前の夫がどんな人物か知らないが、もし可能なら一度コンタクトとらせて欲しいと思うが、どうだろう?」


鼻を赤くしたドロシーが小さくうなずいた。


その日のパティのインスタには祖父クリスの頬にキスしたり頬をくっつけ合ったりする写真がアップされた。祖父の困惑したような笑顔と少女の輝くような笑顔に世界中からたくさんの「いいね!」が寄せられた。

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