Dear Bobby 2
1970年代のある年。
ここはロックバンド、ロートレックがレコーディングに向けて合宿している山荘。ギタリスト、ボビー・ターナーの部屋のドアを小さくノックする者がいた。
「Come in」
入ってきたのはクリスのガールフレンド、リタだった。
「何?」
ドラッグをやりながらソファーに腰かけたボビーが気だるそうにたずねた。
「お願いだからクリスを誘惑しないで」
聞こえているのかいないのか、顔も上げないボビーの態度にリタは苛立った。
「私、知ってるのよ! クリスを誘惑しないで!」
やっぱりボビーからは何の反応もなかった。
「私はクリスと結婚したいのよ。クリスをとらないで!」
「それはクリスが決めることだろ? それよりリタ、キミは本当にクリスを愛しているのかい?」
「愛しているわよ!」
ふっと笑いながらボビーは言った。
「キミはロックスターの妻になりたいだけじゃないのか?」
「そんなこと……」
リタは言葉につまった。
「クリスとつきあいながら、キミはアルフレッドとも寝てただろ?」
「……」
「別にそれを責めたりしないよ。恋愛は自由だからね。もちろんクリスにもチクったりしない。だけど」
「……」
「僕のクリスに対する気持ちはpureだ。キミとは違う」
「クリスはゲイじゃないわ! ストレートよ! 汚れた世界へ彼を連れて行かないで!」
「メンバー誰とでも寝るキミは汚れていないのか?」
そう言いながらボビーは立ち上がった。リタはちょっとひるんだ。ドラッグのせいでボビーの目は焦点が定まっていない感じだった。
ボビーは立ちすくんだリタとの距離をつめて来た。
「誰とでも寝る汚れたお姫様。だったら僕ともセックスしませんか?」
「できないくせに! 男としかできないくせに! Fag!(オカマ野郎)」
罵りながらリタは恐怖に震えた。シャツを脱ぎながらさらにボビーは近づいてきた。
後ずさりながらドアノブを後ろ手につかもうとしたリタはその腕をボビーに強くつかまれた。
「怒りは性衝動にもなるんだよ。クリスから離れるのはキミの方だ」
大声を出せば誰かに聞こえる。だけどクリスにも知られてしまう。
リタはボビーの顔面に唾を吐きかけた。その行為がボビーの行動に拍車をかけた。
決して屈強な体格とは言えなくても男のボビーの怒りのパワーにあらがうことはリタにはできなかった。
下半身だけを剥き出しにされたリタは床でボビーに後ろからレイプされた。
「あとジョーイとデイビーとやったらロートレック完全制覇だね。高級娼婦のお姫様」
パンツを履いたボビーはふたたびソファーに腰かけてドラッグを始めた。
「ゲス野郎」
涙に濡れた髪を頬に貼り付けたままリタがボビーを睨んでスラングを吐いた。
「クリスから離れるのはキミの方だよ、リタ」
もう一度ボビーがつぶやいた。




