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なろう演出祭  作者: 空伏空人
鏡の中に宇宙人!? 【空伏空人×室木柴】
9/34

うちゅうじんは、やってこない。

あらすじ


宇宙船が落ちてきた街、天ノ原町。

そこに住む僕、因上降幡はいわゆる『宇宙人はいると思っている』タイプの人間である。

そんな僕はある日、鏡の中に生息する宇宙人と遭遇した。


宇宙人に逢いたいと願う居場所が消えた少年。

どこかに行きたいと願う居場所がない少女。

家に帰りたいと願う居場所から遠ざかった少女。


 今日も僕らは各々の思いを胸に夜空を見上げる。

 居場所を探して、夜空の星を眺めて迷う。

 これは一夏の思い出。

 迷い迷う僕らが、居場所探しの物語。


原作者:空伏空人

演出:室木柴

『どうして宇宙人は地球に来ないのだろう』

 吸い込まれそうに真っ黒な夜空。果てのない帳を通り抜け、現れはしないかと夢をみる。

 寒風に震え、なおも待つ。用もないのに来るはずがない、そう自分に言い聞かせて。

 冷たい北風たる人々は「そもそも宇宙人なんていないんだから、来ないのも当然だろ」と嗤う。それに対して「地球人だって宇宙人だろ、何言ってんだ?」と子供じみた意地の悪い意見をぶつけるつもりもない。


 まずはすべての持論を捨ててみよう。

 仮定、『宇宙人は実在する』。

 ならばどうして地球にやってこない。

 どうしてだろう?

 この前提でいくと、その答えは納得できる。得心できる。


 用もないのに街の外に出るか。

 意味もないのにスペースシャトルを打ち上げるか。

 彼らも母星から出ようと思わないのだろう。


 ともかく。

 つまるところ『用さえあれば宇宙人がやってくるんじゃね?』という話を誰かから聞いた僕は、毎晩毎晩 あの漆黒の海に向けて願うようになった。

 夜な夜な夜な。


――宇宙人よ、僕のもとに来てくれ!


 電波を飛ばし続けた。


***


「まあ、そんな事をし続けた訳だが、やっぱり宇宙人はやってきたりしなかった」

 天ノ原高等学校の三階にある図書室。僕が部長を勤めている天文部、その活動拠点。

なかなかインパクトのある思い出……純粋な思いが胸を打つ昔話であったと思うのだが、懐かしむ僕と対照的に周りの部員からの反応は薄い。

まあいつもの事だから特に気にしたりしないけど。


「そこでだ」


 背後に用意しておいた黒板。入魂一筆、殴り書く。

『 宇 宙 人 』

 括目せよ。掌が痛くなるほど強く、その表面を強く叩けば積もった埃がパラパラと散る。


「どうやったら宇宙人が地球にやってくるか、考えてみよう!」

「先輩うるさい。読書の邪魔」


 図書室に何個か設置している大きなテーブルのうち、僕がいる貸出口の前に一番近いそこに一人で座る女子。人が真剣に話しているのに(しかも超重要議題だ)、図々しくも漫画を読みながら鬱陶しそうに言い放つ。おかげで勢いが殺されてしまった。

 尼樹 梅雨。僕を先輩と呼ぶあたりは後輩らしいのだが、逆に言えばそれ以外全くもって敬意が感じられない。

 先輩、しかも部長である僕に、敬語どことか丁寧語も使わないし、使ったとしても煽りのためだけ。

 いや、もしかすると先輩呼びすら嘲弄の一環なのか?

 別に、年上に対してへりくだれとは思わないが、けど、せめて部活の話し合いをしている時ぐらい……。漫画だけでもやめてくれ。

 ああ、しかもその本、天文部とは何ら関係ないじゃないか!

 明らかな落胆を隠しもせず見せつける。尼樹は半目で僕を睨む。次いで呆れたように溜息をつき、漫画を閉じた。おぉ。


「そりゃあ毎日毎日、なにかにこぎつけては宇宙人宇宙人と連呼されたら誰だって辟易するでしょ」

「そんな事ねえよ。毎日毎日は言ってねえし」


 言ってないはずだ。多分言ってない。言ってないよな? ちょっと自信がない。


「今の先輩は例えるなら、頼んでもないのに興味のない怪談話を始めるオカルトマニアばりに面倒くさい」

「言いたいことがスゴくよく分かる例えではあるけど、しかし、そんな面倒くさい奴と同列にして欲しくないな。宇宙人だって、立派な天文部で扱う話の一つだ」

「天文部って、たまに望遠鏡で星を眺めるだけの部活だとばかり思ってた」

「お前天文部ナメすぎだろ」


首を横に振って、手に持ったままの漫画の角で僕を指す。


「先輩は私たちにあまり興味を持っていないから分からないだろうけど、実際ね。この天文部にいる部員は殆どそういう認識だと思うよ」

「そんな事ねえよ」


 僕は否定する。二つの意味で。

 後輩たちのことはしっかりと見ているし、部員たちはきっと宇宙に関して――宇宙人でなくとも惑星なりなんなりの事を考えているはずだ。

 そうでなければどうして天文部に入部したりするだろうか。

 だから僕は彼女から視線を外して他の部員の方に向ける。その視線を敏感に感じ取ったのかびくり、と肩を震わせたのは多分気のせいだろう。


「みんな適当な部活だって思ってないよな?」


 部員たちからの返事は無かった。

 ただ、気まずそうに皆が皆、視線を外す。


「……マジか」

「ほらね?」


 驚く僕に、尼樹は面白そうに漫画で口元を隠しながらクスクスと笑った。 

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