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なろう演出祭  作者: 空伏空人
ダークネスハント・リーパー【フィーア・ラングーレ×めんつゆ】
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三話

 スモラーフィシ討伐任務で私たちはヴァイスによって壊滅した都市であるビーゴンに輸送車で向かっていた。輸送車の中は運転手と私だけ。お父さんには悪いが、パミル大尉は置いて来た。


(目的地まではもう少しあるな。少し仮眠を取るか……)


 私は輸送車の後ろの席で目を閉じ、昔のことを思い出す。それは苦々しい私の思い出。忘れてはいけない、私の力の原点。


 私がまだ小さい頃、両親が巨大なヴァイスに食べられたこと。


 私は孤児となり滅びた街を彷徨っていたこと。


 μの局長であるお父さんが私を引き取ってくれたこと。


 私は少しでもお父さんの役に立ちたいと思いμのメンバーになることを決意する。最初は反対されたが、それでも私はなりたいと言い続けた。どんな厳しい訓練にも耐え、今の自分がいる。これからもさらに成長していかなければならない。ヴァイスがいる限り……


 お父さんの事を思っていると、運転手に声をかけられた。彼のようなノア使いを補助する人たちはこの世界の偉大な裏方役だ。彼らとは友達でもチームでもないが信用できる。


「目的地、廃都市『ビーゴン』に到着しました」


「了解。すぐに準備を始める」


私は小型無線機を耳に装着し、武器と服装を再点検し輸送車の扉を開ける。前より被害が酷くなっている。まるで戦争終わりのような風景だ。


(朽ちた鉄の匂い……どこも同じね)


 暗黒鎌ダークネスサイズを構え輸送車から降りた。早くこの任務を終わらせて帰りたい。この任務を一人で終わらすことができれば、お父さんも私が一人で戦える実力と認めてくれるだろう。


「運転手、お前はここで待機してくれ」


「了解しました。良い戦いを大尉」


 私はここまで運んでくれた彼に対して敬意を込めて敬礼をした。ゆっくりと振り返り、ヴァイスの巣となっている廃都市の入り口をくぐる。一歩踏み込んだそこは、昔に人が住んでいたとは思えないほど荒廃した都市の残骸であった。


「さて、目標のスモラーフィシはどこだ?」


 私は五感を研ぎ澄ませて、周囲は観察する。どうやら都市の入り口付近にはいないようだ。


「奥へ行ってみるか」


 私は充分に周囲を警戒しながら歩き始めた。いつどこから周りのコンクリートの残骸の山からヴァイスが飛び出してくるか分からない。すぐそこに死があるということだ。しばらく歩くと、廃都市の中央公園だった場所が見えた。


「ん? あれは……」


 公園の噴水の残骸を貪る生物が見えた。どうやら簡単にスモラーフィシを発見することができたようだ。スモラーフィシは食事に夢中でこちらに気づいていない様子だった。


「思ったより早く帰れそうだ」


 私は食事中のヴァイスに気づかれないように、近くにあったコンクリートの残骸に身を潜めた。そして、一気に近づき、有無を言わせずその首を刈り取った。軽々と馬並みの巨体であるヴァイスの首が吹き飛んだ。


 楽な任務だった。だが、何か嫌な予感が胸をしめつけた。何か……変だ。


(これほど大きい都市だ……なのに一匹だけなのか?)


 わずかな疑問を抱えながら、来た道を戻ろうとした。だが、そこで私は大きな過ちに気だついた。


「ほう……それで私を取り囲んだつもりか?」


 周りから複数のスモラーフィシが姿を現す。目標の敵を倒した一瞬の油断。それが、あいつらに囲まれる隙を生んでしまった。


「ギュオォォォォォォ!」


「ギャオァァァァァァ!」


「ギャラァァオァァァ!」


 獰猛な鳴き声と共に次々と公園の噴水を囲むようにヴァイスが姿を現した。その数63体。並みのノア使いなら大規模な殲滅作戦が必要になる数だ。


「面白い、探す手間が省けたものだ」


(私はエサだ。さあ私を食らいにくるがいい、化け物ども)


 だが、やつらは動くことは無く威嚇をするだけだ。つまらない。どうやらこの新型ノアにびびっているらしい。


「そっちがこないなら、私から……行くぞ!」


 私は全速力で駆け出した。目標は眼前の4体。私は大鎌を両手で構え、4体のスモラーフィシの中心点まで滑り込んだ。すでにやつらは死の境界線に踏み込んでいる。


「踊り! 狂え!」


 私は大鎌を振るい、その場で一回した。大鎌による大回転斬り。やつらから見れば一瞬で胴体が真っ二つになったと思っただろう。大鎌型の最大の利点はその攻撃範囲。標的を効率的に惨殺する武器。仲間の死が分かり、初めてスモラーフィシ共が攻撃態勢に移った。


「ギュオォォォォォォォォォォォォ!」


「安らかに死ねると思うなよ。今からするのはただの虐殺だ」


 暴れまわる59体のスモラーフィシの群れのなかを黒の線が疾走した。回避、斬る、殺す。残酷と残虐と殺戮の三拍子のワルツを私はただ踊る。そう、これは踊りだ。


「踊り! 廻れ!」


 私が大鎌を縦に振るえばスモラーフィシの首が吹き飛ぶ。


 私が大鎌を横に振るえばスモラーファシの体は真っ二つになる。


 私が大鎌を一回転させればスモラーファシの群れが消えてなくなる。


 次々と公園にはスモラーファシの屍の山ができあがった。だが、私は体はいつもの半分以下の動きしかできていなかった。体が重い。こんなに自分の武器が思いと感じることはいままでになかった。それでも私は武器を振う。

 

「はぁ……はぁ……まだだ! どうしたスモラーフィシ。私はまだ生きているぞ!」 


 雄叫びと共にスモラーフィシに突き刺した部分からどす黒いオーラが勢いよく噴き出す。他のスモラーフィシが仲間を助ける為に寄ってくる。その駆け寄ってきたスモラーフィシも殺す。全部殺す。全て殺す。殺す殺す殺す。


(残り2体!)


 想像以上に体力の消費が激しい。どうやら連続の任務が体に相当な負担になっていたようだ。体が鉛のように重く感じる。


(動け私の体! 殺せ敵を! それが私の存在意義だ!)


素早く暗黒鎌ダークネスサイズを倒したスモラーフィシの残骸から引き抜き、スモラーフィシの尻尾攻撃を宙返りで躱し胴体を切り裂いた。瞬間、背後から最後のスモラーフィシが襲ってきた。


(何!?)


 最後の一体の気配は背後から感じた。だが、体が思うように動かない。防御が間に合わない!?


 絶体絶命。私はあがくように振り向き、大鎌を使い防御の姿勢をとる。だが、その防御をすり抜けるようにスモラーフィシの強靭な右腕が私を切り裂こうと振るわれた。冷静に脳内で攻撃を分析したが、結果自身の死が想像できた。


(この攻撃、威力、速さ……私、死んだな……)


 だがその攻撃は私に届くことは無かった。私に直撃する寸前に、スモラーフィシの巨大な右腕が木っ端微塵になった。グシャグシャとなったスモラーフィシの破片を私は全身で浴びた。


(え?)


 すると、無線から聞いたことがある声が聞こえてきた。


「ビンゴ♪」


 右腕が粉々となったスモラーフィシは自分に何が起きたか分からなかった。


「これが最後の一体ね。ラストシュートよ!」


 私の大鎌ですら切り裂くことが困難なスモラーフィシの頭部が吹き飛ぶ。そこで私は初めて理解した、この攻撃がスナイパーライフルの攻撃だということを。


「スモラーフィシの頭部骨格を粉砕するほどの口径……パミル大尉か!!」


 私はスモラーフィシが攻撃された弾丸の軌跡を逆算し振り向いた。だが荒廃した都市の風景だけで人影は見当たらなかった。どこにいる? 探していると無線から彼女の声が聞こえた。 

「こんにちはリヴィナ。私はそこから5km先のビルの上にいるわ」


(5kmだと!? 新型とは聞いてきたがそこまでの性能なのか!)


 彼女が易々と行ったのは5km先からの超超長距離射撃であった。ビルの隙間からの複雑な風、地球の重力など様々な要因が狙撃を困難にしてくる。そのなかで彼女は軽々と私を狙うスモラーファシの右腕だけを狙い打ったのだ。それは超人的な肉体を持つノア使いと新型ノアの両方があって初めてできる神技だ。


「それにしても私を置いてっちゃうのはひどいよ~ で、私に何か言うことある?」


「んっ……た、助かった……感謝する」


 強制的に言わされた感謝の言葉を搾り出すように言った。彼女のおかげで助かったのは事実だ。だが納得いかない。


「どういたしまして♪ それにしても噂以上の実力ね、一人でこの都市のヴァイスの群れを殲滅しちゃうなんて。まさに、暗黒を狩る死神ダークネスハント・リーパーと呼ぶに相応しい強さね」


「パミル大尉がこなくても、私一人で何とかなっていた……」


 とっさに強がってしまった。だが協力が必要だったことは認めたくない。


「もう、そんなに強がって~ でもリヴィナ、チームも悪くないでしょ?」


「え?」


「一人では限界があるものよ。でも二人なら、もっと多くのヴァイスを倒せるわよ?」


「……検討してみ……いや、却下する!」


いな! 断じていなだ!!)


「あら残念。なら友達になりましょ? 私達、いい関係になれそうよ」


「気でも狂ったか。私はそんなものは必要な――」


 必要ない。そう言い切ろうとしたとき、パミル大尉が途中でわりこんできた。


「ふふふ、期待して待っているわ。さてオペレーター、任務完了よ」


「な!? 最後まで聞け!!」


(なんなんだ! この女は!)


 パミル大尉が無線を使い、オペレーターに任務終了を伝えた。どうやら私が一人で行動したのも全て筒抜けだったようだ。それを知ってパミル大尉が急いでこちらに向かってくれたのだろう。私は黙ってオペレーターの返答を待っていた。だがオペレーターの返答は予想外のものであった。


『二人とも注意してください! 予測外の中型ヴァイスが接近しています! リヴィナ大尉のすぐ後ろです!』


「新手か!!」


 私の近くにある建物の壁を突き破って現れたのは足が六本あるヴァイス。まるで蜘蛛のようだ。しかし、蜘蛛とは違い、鋭い黄色の牙が生えており、胴体からはブヨブヨした腕が二本生えている。


「ガオォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」


八つある紫色の目が不気味に輝く。どう見ても地球上に元からいた生物ではない。蜘蛛などの昆虫を取り込んで進化したのだろう。私は独り言を言うようにパミル大尉と連絡をとる。


「パミル大尉」


「何かしら?」


「友人にはならない。だが3分だけ……チームになってやらんでもない」


「あらあら、素直じゃないツンデレさんね」


「別に馴れ合う気はない。だが、効率の問題だ。助けて欲しいわけではないからな」


「ツンデレさんなのね」


「だから、違う!」


(パミル大尉、なかなかの人物だ。正直、目の前の中型ヴァイスよりやりにくい……)

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