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なろう演出祭  作者: 空伏空人
ダークネスハント・リーパー【フィーア・ラングーレ×めんつゆ】
20/34

一話

あらすじ


突如異世界から現れたとされる怪物、通称“ヴァイス”によって世界の半分以上が滅亡した。世界の脅威であるヴァイスに対抗する為、人類は希望の象徴となる新たな武器“ノア”を開発した。しかし、ノアという希望を持っても人類は滅亡の淵に立たされていた。 主人公である少女“リヴィナ・ヴァリアンエル”はある出来事から他者を拒絶し、ノア使いとしての使命を果たす為、たった一人で戦う道を選んだ。そんな彼女も様々な出会いによって友達や仲間の大切さを理解していく。 物語の最後に待ち受けているのは希望か・・・それとも真の絶望か。


原作者:フィーア・ラングーレ(朝田詩乃)

演出:めんつゆ

 戦場はどこも土埃つちぼこりと砕けたコンクリートで満ちている。今私は、一度滅びた街に立っていた。街だった場所。


(さてここからは狩の時間だ)


 意を決して、私は耳に装着している小型無線機に向かってつぶやいた。


「こちら、リヴィナ・ヴァリアンエル。これより、任務を開始する」


 狩猟目標である『ヴァイス』は街の入り口の近くにいたため、すぐに発見することができた。人類の敵ヴァイス。ある日異世界から現れ、人類に攻撃してきた未知の生命体。私の任務はそのヴァイスを狩ることだ。


「ギュオォォォォォォォォォォォォォォォ!」


 晴れ渡る空に向け雄叫びをあげるヴァイスは下級の方である“スモラーフィシ”。滅びた街に生息しコンクリートを主に食べる4足歩行の生物だ。馬並みの体格で、口の隙間から見える白くて鋭い牙、体や頭が白い骨のような硬いもので覆われている。尻尾や目は魚のようだ。そして、ティラノサウルスのような足と腕がある。不思議な生物だと何度見ても思ってしまう。馬と同等の巨体は、そこにいるだけでプレッシャーを与えてくる。大きく、硬く、強い。


「目標発見。これより殲滅に移ります」


 向こうはこちらに気づいていないのか、ヴァイスの視線が私がいる地点からずれた。その隙を見た私は勢いよく飛び出し、鎌型の『ノア』を構えた。


(今ならいける)


 人類が唯一ヴァイスに抵抗できる武器『ノア』。ヴァイスの細胞や身体を素材にして作られた兵器、ノア。現代兵器が効かないヴァイスに人類はようやく異世界から現れた脅威と対等に戦えるようになった。これが私の力、私のノア。


 その形は、死の象徴である死神を想像させられる大鎌の形をしている。私は両の手でノアを持ち、突進する。やつはまだこちらに気がついてない。いまなら殺せる!! 両足で跳躍しての回転切り。何度もやってきたころだ迷いはない。これはただの作業だ。ノア使いの超人的な身体能力から繰り出される、斬撃がヴァイスの首めがけて放たれた。


「はああああああああああああああああ!」


 バシュン。ヴァイスの強固な骨格が切断される音がした。


 一瞬の出来事だった。大鎌によってあっけなく頭部が切断された。スモラーフィシの頭部が宙を舞い、胴体から離れる。人間のような血が流れることはない。噴き出るのは赤黒いオーラやどす黒いオーラ。力尽きるように胴体が地面に倒れる。目標完全沈黙。


 私はノアを片手に、耳に装着してある小型無線機のスイッチを押す。すぐに男性の声が聞こえてきた。


「任務完了です」


『了解。スモラーフィシの回収はこちらで行います。リヴィナ大尉は帰還してください』


「了解」


 オペレーターの男性に返事をしながら私はヴァイスだったものを見つめる。何が目的で異世界から現れたのか。それはまだ誰にも分からない。知っているのは人間のような言語を話さないヴァイスのみ。


『リヴィナ大尉、帰還後すぐに局長室に来てくれ』


「了解です、お父さん」


『その呼び方はよせ』


「了解です……局長」



 私の名はリヴィナ・ヴァリアンエル。現在は“μ”という組織からの指令で任務を行なっている。μという組織は突如この世界に現れた化け物、“ヴァイス”を狩ることを目的としている組織だ。唯一生き残っている都市はμの本拠地がある“リペル”を含め四つしかない。


 リペルに到着し、μの基地に帰還した私は局長室にいた。基地内は静かでどうやら、他のメンバーは任務に向かっていたり、シェルターの建設を手伝っているようだ。


「任務お疲れ様だったな」


「いいえ、ヴァイスを狩るのが私の……私たちノア使いの使命です」


「そうだな……」


 私の父的存在であるμの局長、サイアン・アミスカーバ。孤児だった私を引き取ってくれた。それ以来私は局長のことを『お父さん』と呼ぶ。呼ばれている本人は嫌がっているが、私にとって唯一家族と呼べる存在。仕事中は仕方なく局長と呼んでいるが、上司であろうが私の中ではお父さんだ。


「ところで、新型ノアの調子はどうだ?」


「問題ないです。適合率も98%にようやく到達しました」


「誰も適合できなかった新型ノア、『暗黒鎌ダークネスサイズ』に適合するとは……驚きのあまり言葉が出ないな。これからも頼むぞ」


「はっ! 了解です!」


 お父さんの言葉に私は敬礼をする。黒い椅子からお父さんは立ち上がり私の肩にそっと手を置いた。服の胸に付いている様々な称号を表す複数のバッジが目立つ。この数だけ殺したヴァイスがいる。


「今日はゆっくり休むといい。まだ新型ノアを使い始めたばかりだ……何が起こるか分からないからな」


「はい」


***


 私は深く頭を下げ、局長室を後にする。鉄の廊下を歩き、エレベーターのボタンを押す。待っている間、私は暗黒鎌ダークネスサイズを持っていた右手を見つめた。そのには黒く光る武器であり、私の相棒があった。


「暗黒鎌ダークネスサイズ……お前も私と同じだな」


 私の言葉に呼応するように大鎌が光ったような気がした。思わず、そっと刀身をなでた。冷たくて、気から強いと肌身で感じる。その姿は禍々しいとしか言い現せることができなかった。そうだ、お前は醜い。歪で不器用な力だ。それを使う私も同様……だな。


 エレベーターを使い一階まで降り、最新型パソコンが三台置いてあるカウンターに向かう。しかし、オペレーターがいない。提出しなければならない報告書を持ってきたのだが……いないのなら仕方がないな。


(さて、どうするか)


 私は近くに置いてあるボロボロなベンチに座り、オペレーターが来るのを待った。いつも密かに思っていることだが、このベンチは座り心地が悪い、かなり悪い。だが、今の世界で贅沢は言ってられない状況だ。


(贅沢か。私にとっての贅沢はなんだろうな……)


 現在、食料ですら満足な程ないのだから。昔は農家などで野菜や肉などを生産していたものらしい。だが今は人工肉や人工野菜で賄っている。避難民に食料が十分に行き渡らず、飢えて餓死する人も少なくないそうだ。一歩基地からでれば地獄。ヴァイスによって農家が出来るような場所は一つも残っていない。世界は暗黒に包まれているのだ。


(そして、私たちμはその暗黒を狩る者。そうでありたい、そうでなくてはいけない)


 ベンチで物思いにふけっていると、正面から女性に声をかけられた。


「リヴィナ大尉、任務お疲れ様です」


 ゆっくりと私は声の方に視線を向ける。私に話しかけてきたのは三日前に配属されたばかりの新人オペレーター、『ユズキ・ルノルドア』だった。オレンジ色の綺麗な髪の毛で美少女オペレーターと周りから言われている。まあまあ可愛いと言える子だ。


「これ」


 私は言葉数少なく、報告書を渡した。どうせならもっと早く来て欲しかったものだ。


「あっ、報告書ですね。ありがとうございます」


 律儀に彼女はペコッと頭を下げると張り巡らされた太い導線を跨ぎながらカウンターに入っていく。仕事熱心なユズキは頼れると評判だ。男性はあのような子が好みなのだろう。私のようなものは眼中にない。


(さて、自室へ戻ろうかな)


 私はベンチから立ち上がり自分の部屋に向かおうとした時、任務から防衛班がボロボロな状態で帰還してきた。慌てて周りにいた人たちが駆け寄るが、私は見て見ぬ振りをし、エレベーターが降りてくるのを待つ。軽い騒ぎとなった。


(エレベーター……遅い)


 私が待っている間に、彼ら防衛班の様子を見た。全身血まみれで、何が起きたのかだいたい想像ができた。彼らはただ地獄を見たのだろう。ここではそれが日常だ。弱肉強食、それがこの世界の全て。


 ボロボロな防衛班のもとに、救護班が近づいてきた。


「おいお前ら、大丈夫か!?」


「あ、あぁ。だけど一人……仲間が殺られた」


「なんだって!? くそ、また仲間が!」


「巨大なヴァイスに突然襲われたんだ。あいつはオレたちを逃がす為にたった一人で……」


「……そうか。もうしゃべるな」


「ちくしょう……あいつ。あいつには恋人もいたのに……先に死んじまいやがって!!」


 敗北者の叫びが施設に響く。同時にエレベーターが降りてきてゆっくりとフェンス式の自動ドアが開いた。私はエレベーターに乗り地下へのボタンを押す。


(英雄気取りが一人死んだか。馬鹿だな、実に愚かだ)


***


 私には仲間など不要。一人で戦う方が気楽でいい。仲間のことを考えて行動するのではなく、自分のことだけ考えればいいのだから。目の前で仲間を失うこともない。悲しむことすらない。だから私はずっと一人でヴァイスを狩っている。


(これからもずっと……ずっと)


 そんなことを考えながらエレベーターに乗っているとμの特装制服のポケットに入っている携帯電話が鳴る。電話を掛けてきたのは局長であるお父さんだ。恐らく新しい任務かそれとも違う仕事の依頼だろう。部屋で暇をしているよりは仕事があった方がいい。私は携帯電話を耳に当てた。


「なんでしょうか」


『リヴィナ、15分後局長室に来てくれ。新しい任務がある』


「了解です」


 即答だ。私は電話を切り、携帯電話をズボンのポケットに入れる。フェンス式の自動ドアがガタガタと音を立てながら開いた。鉄の廊下を歩き自分の部屋に向かう。地下一階は階級が大尉以上の人が使う部屋があるので、大尉以下の人たちは許可がない限りこの階層には入れない。


(ここに住めるのは並の人間より偉い人か変人か、強いやつだけ)


自分の部屋のカードキーをスキャンし中に入った。その部屋にはテレビとベッド、そして黒いソファーとテーブル、パソコンが置かれている。それ以外は置かれていないし、それ以外必要ない。シンプル過ぎる部屋。私は静かな部屋の電気を点け、ソファーにゆっくりと座る。体が柔らかいソファーに沈み、久しぶりにリラックスできる。


(少し疲れた……かな)


 髪に付けたヘアピンをゆっくり外す。このヘアピンは昔、友達だった人から貰った物だ。その友達はこの世にいない。私にヘアピンをくれてからすぐにヴァイスに食べられて死んだ。その人が私の人生で初めてできた友達であり、最後の友達だろう。


自分の短い茶髪をいじりながら昔のことを思い出してしまう。忘れたくても忘れられない記憶。


(ティノ……)


 私は昔に友達だった人の名前を呟き、シャワーを浴びに脱衣所へ向かう。今日はやけに感傷的になっているようだ。

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