傀儡
あらすじ
どこまでが散文詩でどこまでが掌編なのか―――互いの境い目を模索しようと思い立った結果の試作品集。
原作者:新染 因循
演出:kinoe
整然と列を成し、自分の番を待つ人々
決められた規則に大人しく従うそれは、己の意思を失った只の器…傀儡と化している。
しかし、私という存在も、また同様にそこにあった。
足元に真っ直ぐ引かれた黄色いラインは、生と死の狭間の境界線だろうか。
ふと、思う。
境界線の向こうには何があるのだろうか、と。
光の届かない地下の世界を人口灯が照らし、閉鎖された空間は梅雨の時期のように湿っぽい。
ラインの伸びる向こうに視線をやると、ぽっかりと口を開けた漆黒の世界への入り口が、冷たい息を徐々に吐きながら、その時が近い事を私に告げる。
風が私の頬を撫でた。
長大な鉄の棺桶は、鉄の轍を踏み締め、咆哮を上げながら私の元へと疾走する。
そして、それは、まるでメトロノームのように一定のリズムを刻んだ。
響く単調なリズムはやがて、私の鼓動と同期する。
速まる鼓動
汗ばむ手指
予測できない未来に恐怖していると言うのか。
……馬鹿馬鹿しい。
一歩前に出る。
傀儡の視線が私に集まる。
集団から外れた異質な存在を訝しがり、興味を抱きながらも……ほら、やはり動けないではないか。
それぞれの傀儡共が、多種多様の鮮やかな衣を纏い己を誇張していた。
私を見て、と
私はここにいる、と
だのに、誰も私を止めることは出来ない。
それもそうだろう。
私は自ら糸を断ち切ったのだ。
社会、他人、家庭、国家、法律……ありとあらゆる場所から伸びる見えない糸、それに従うお前らとは違う……そう、操り人形ではない。
自分の意思で、自分の未来を決められるのだ。
見るがいい!
私のあり方を!
私を雁字搦めていた糸は、一歩一歩と歩みを進める度に、いとも簡単に解けていく。
あんなにも重かった四肢は、羽毛のように軽く、私を前へ前へとさらに推し進めた。
煌々と輝く二つの眼が私を見つめ、私自身の視線と交差する。
そしてーー境界線を越えた。
最後の一歩は、私に地面を踏み締める感触を与えず、身体は底へと沈み込む。
……鉄の棺桶はすぐ其処まで来ていた。
薄れゆく意識の中
私が最後に捉えたのは、バラバラになった人形の姿……己を支える糸を失い、動けなくなった憐れな操り人形の姿だった……
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