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04 学習と選定

意外には早く投稿できました

 先程の部屋とは打って変わって、マグリアの実験室はものすごく殺風景だった。

 グシャグシャのシーツとよれよれの毛布が置かれたベッド、簡素な机とその上にバラバラに散らばる書類、埃を被るほどに放置された書籍の数々、よくわからない数式と文字が書かれた黒板、手入れの行き届いてない本がグシャグシャに入れられた本棚。

 ファンタジー要素はあまりないが実験室らしい実験室だった。

 するとマグリアは埃だらけの小汚ない本棚の上段から紙が茶色に変色した古びた分厚い本を本を6冊取り出し、机の上にドスドスッと置いた。


「早速だけど、貴方には勉強してもらうから。これ読んで♪」

「はぁ!?」

「いや、はぁ!?じゃなくて勉強してもらうから」

「なにをすんの。てか、説明しなさすぎだろ!」

「焦れったいのよの。説明するのがね」

「いや、せめてさ、なんのためとか聞かないからせめてなんの内容かは説明しようぜ」

「それもそうね。まず、この本だけどね」


 マグリアは重ねて置いた本の一番上の緑色の本を手にとって俺の前に広げた。さっきから分厚い本ばかりが出てくるのに対してこれは比較的薄い本だ。

 

「この本はね、語学の本、この国の公用語を学ぶための本よ」

「うぇぇ~、いきなり夢がねぇ~」

「はぁ…、仕方がないじゃない。だって貴方、字が読める。てか、そしてしゃべれる?」

「う、たしかに…。でも話せてるじゃん。お前とはということは他の人とも喋るじゃないの」

「あ、そうだったわね。ちょっと待ってて」


 マグリアはくいっと左の人差し指を右から左に移動させると、俺のなかで何かが弾ける感覚が走った。

 驚いた俺はマグリアを睨み付けた。


「何しやがった!?」

「Aoto*/thinoz//~Bcfnrjxm:umkΞΗΣ:?」

「いや、ふざけてないで説明してくれよ!」


 はぁと溜め息をマグリアは今度は左の人差し指を下から上に移動させた。

 すると俺のなかで何が一瞬で凝縮する感覚に襲われ、ビクッと震えた。

 するとマグリアは異様にニヤついた顔で俺の顔を覗きこみ話しかけてきた。


「言葉、通じたかしら?」

「なっ、なんだ!? 今の!? お前、俺に何をした?」

「質問を質問で返さないでちょうだい。まぁ、何をしたかというと翻訳魔法をあなたにかけて、それを解いて、もう一回かけたってだけよ」

「じゃあ、俺とお前が会話できるのって」

「それのお陰ね」

「じゃあ、そのままかけ続ければいいじゃん。なんで会話の練習や読み書きの学習なんてしなくちゃならないんだ」

「普通は翻訳魔法なんか使わないからよ。それに使ってるときは明らかな特徴があるからそんなにばんばん使えないし、

翻訳魔法が使われるのは要人の会合などの重要な部分だけよ。それを私生活で毎日のように使っているのは不自然よ」

「特徴って何だよ?」

「魔女や魔法使いが常に同伴しなきゃいけないところかな。そうじゃないと魔法の効果がないのよ。魔女や魔法使い(私たち)は目立つ服装をしているし、それに常に私がそばにいる訳じゃないわ。だから語学を学ばなきゃいけないの」

「まぁ、たしかにお前の言う通りだな。コミュニケーションは生活の基盤になるし、必要ちゃ、必要かそれにお前がいつも隣にはいる訳じゃないしな」

「あと、この本とこれも併用してちょうだい」


 マグリアは2冊目の本を手に持ち、俺に見せた。

 表紙が赤色の分厚い本、これは多分辞書なのだろう。

 言葉は何をするにも基盤となるのでたしかに必要だ、だがあとの三冊は何の本なのだろうか。

 ファンタジー世界なので出来ればモンスター図鑑や魔導書など夢のある本だとうれしい。

 俺たちの世界ではまず、見れないものだ。

 そう期待していた時期が俺にもありました。

 実際に用意されていた書籍は衛生や保健について詳しく記された書籍や金融や経済についての書籍、地理や歴史が記された書籍といった感じで完全に勉強のための本ばかりだ。

 出来れば見たかった本物の魔導書…。


「黄昏てないで、さっさと読みなさい。一時間以内にね。でないともう5冊、これらより分厚い本を追加するわよ」

「はぁ!?ちょっ、おま、ふざけんな!無理に決まってんだろ!!」

「ハァーイ、ごさっ…「すみません、マグリア様、土下座しますんで」可愛い女の子になっても元が情けないブ男だからなのかまったく可愛くないわね」


 そういわれても俺は、精神、男だしそこら辺は憂慮してほしいかな。まぁ、胸がそこそこデかいしな。

 マグリアはくわっと表情を般若のように歪め、俺を射殺さんばかりの視線をぶつけた。

 背筋に悪寒と恐怖がゾゾ~と登り゛ヒッ″と言って縮こまった。

 怖い…。

 女の子ってあんなに怖い顔が出来るんだね。

 はじめて知ったよ 。


「一時も休む時間はないわよ。」

「ああ、面倒だけどやるか」

「あら、意外に素直になったわね」

「だって、もう魔人だし、それに着の身着のままのほうがいいかなって思うんだよね。俺」

「あっそ…。観念したってだけね。それはそれで先が思いやられるわ」


 そう言ってマグリアは部屋をあとにした。

 俺に逃げられないよう、きっちり実験室の鍵をかけて。


 ◇


 私たちは、このシレーネとか言う女の子の後について、お城のなかを移動していた。

 それにしてもデかくてゴージャスなお城ね。

 個人的には、ドイツのノイシュヴァンシュタイン城よりも立派で好きなデザインだけど、私は、私達は学校に家に帰えしてほしかった。

 異世界といってまったく実感がなく、お城の中しか見せてもらってないのでただのドッキリと言ったほうがまだまだ信用できるそんなレベルだ。

 そこで私は先頭を歩くシレーネにこんな質問を投げ掛ける。


「ねぇ、ドッキリなんでしょ?」

「ドッキリ?まぁ、そう思いたいのならそう思えばいいでしょう。ですがこれは紛れもない事実ですよ」

「なら…」

「なら?」

「なら証拠を証拠を見せなさいよ!!!」

「はぁ、あなたは疑り深いですね。それにいちいちうるさいです。はぁ…、まぁ、いいですよ」


 そう言うとシレーネは右の人差し指をスゥーと右から左へ移動させた。

 その瞬間、城の壁から石材が抜け出し独りでにバラバラに砕け始め、一瞬にして立派な石像になっていた。

 

「すごい…」


 回りにいた皆も同様に驚いていた。

 私たちの世界は魔法など存在してないのでこんなのを見るの衝撃的だった。


「で、信じてもらったところで部屋につきました」

「へ…?」


 そこは仰々しいデザインの扉でその扉からは異様なほどの重々しい雰囲気が醸し出されていた。

 その扉のまえにシレーネは立ち、私たちを一列に並ばせ、懐を探った。

 シレーネは扉にかけてある錠前を解くのだろう。

 鍵を見つけて南京錠に突っ込み、鍵をあけた。


「名乗ってなかったのでまずは自己紹介をします。私はシレーネ・フェグトリア、あなたたちの担当になっています。それとあなた達のするべきことについて話します」

「うん、選定とか言ってたわね」

「はい、まずはその選定についてお話しさせていただきます。選定とはその名の通り、選ぶことです。ついでに選ぶのは私です。あなた達ではありませんよ」

「いや、そうじゃなくてなんで選ぶか何のため選ぶのかってことを聞いているのよ」

「それは聖剣を抜くそれを使って魔神と魔王を葬る勇者を選ぶためです。そうでなくてもあなたたちは怪物にアンチテーゼを持っています。私たち、つまりこの世界の住民よりは」

「じゃあ、戦わせるために呼び出したの」

「その通りですね。そのために貴方達をここへ、異世界へ呼び出したのです」

「そんなの横暴じゃない!いきなり呼び出した挙げ句の果てに、戦ってくれってふざけるのも大概にして!!」

「私や姉さんだって、貴方たちみたいなちんちくりんよりも自衛官やネイビーシールズなどの軍隊を呼び出したかったですよ。でもランダムで決まるものなので仕方なくあなたたちを選定にかけることにしたんです」

「いい加減に…!!」


 シレーネに殴りかかろうとした瞬間、一緒にきた人たちに止められた。

 友人たちになだめられる。

 それでも怒りは収まらなかった。

 いきなり呼び出して、そして戦え。

 それはつまり死ねと言っているのと同意義だ。

 そんなことをしたら、男はともかく女である私や私の友達は死んでしまう可能性がある。

 そんなの冗談じゃない。

 私はシレーネを睨み付けた。


「ちゃんと帰しますよ。あなたたちの世界に。約束を守ってくれたらね。だから、そのなめた目で私を見ないでください」

「約束…?」

「そう約束です。」

「なによ、それ」

「簡単ですよ。魔神と魔王共を塵も残さず殺しに殺しまくったらあなた達を帰しますよ」

「私たちにそんなことができるはずがないじゃない…」

「あなた、意外に現実が見えるんですね」

「違う。わからないから出来ないそれだけよ」

「そうですか。でもさっきの約束は絶対条件です。それができないなら帰す気はありません」


 そんな言葉を聞いて皆、絶望する奴もいれば興奮する奴もいる私は前者だ、はっきり言って不安と絶望しかない。

 それでも自分達に残された道はただひとつ、戦うことそれだけなのだ。

 もしかしたら…。

 これは止そう。

 こうなるのならいい奴にでもなるべきだったかな…。


 こんな思いがぐるぐると私の胸の中を巡り回った。

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