プロローグ2
遅れて申し訳ありません。
校門の前に近藤伊織が数名の生徒を引き連れて仁王立ちをしている。その姿はまるで女帝のようだ。
彼女は誰を待っているようだったが、ハッキリ言って俺には関係のないことだ。
そう思い俺は近藤伊織の横をすり抜けて昇降口を上がって下駄箱に行こうとした瞬間…。
―ドカッ!!!
俺は誰かに背中を殴られていた。
即座に俺は後ろを振り向く。後ろには知らない男子生徒が立っていた。訳が分からず周りをキョロキョロと見渡す。
何故か、俺を取り囲むように2、3人ほどの男子の集団がそこにはいた。察しはつく。だが、頭がそれを否定している。
背中に先程の痛みと共に悪寒が走る。周りには自分より圧倒的に強い男。そして、弱々しい自分自身がいる。
俺はすっかり恐怖の虜だった。
「あの俺になんか、用ですか……?」
「ああ~、そうだぜ。大事な大事な用があるんだ」
男子の集団の一人が下品な笑いを浮かべながら俺をみていた。まるで弱った獲物をみる野獣のような目付きで。
取り敢えず、適当に誤魔化して逃げちまおう。
幸い、いるのは三人だけ、逃げようと思ったら逃げられる。
俺は震えながら男たちに問いかけ、あわよくばその場から逃げたそうと画策していた。
だが、男の一人が後ろから俺を羽交い締めにし、もう一人の男が俺の腹に拳を突き立てる。
俺の体に鈍重な衝撃が響く。
拳が体に入るごとに五臓六腑が揺れる。
痛くて、痛くて泣き叫びたいはずなのに恐怖で声が出ない。
俺を殴る男たちはまるで獲物を玩具のように扱う猟奇的な悪魔のようだった。
耐え難い、暴力を受け続けたあとに近藤伊織が俺の目の前に立っていた。
滑稽で醜いものをみるような目で俺を見下していた。可愛い顔に似合ないほど、下卑た笑顔で。
「こんにちはー、痛かったかな?」
「なんで、なんでこんなこと」
「なんでって、強いて言うなら気持ち悪かったからかな。あと、暇潰し?」
「え?」
俺は驚愕していた、ただ驚愕していた。
こんなよくわからないことのために俺は、あんなことをされたのか。
こいつ、おかしいよ。
どうかしている。
俺は恐怖に染まった眼で近藤伊織を見つめ、逃げ出そうと男の腕のなかで必死にもがいた。
そんな中、近藤伊織が俺の顔を殴った。
「そんな、気持ち悪い目で私を見るからよ」
―グシャリ……―
異様な音がした。頭がぼーっとする。
俺はようやく、拘束をとかれたがその場に倒れこんでしまった。
倒れこんだその場に人だかりができ、あたりが騒然する。皆、ひっきりなしに噂話やこそこそ話を始める。
まるで腫れ物を扱うかのように誰もが見ているだけだった。
「誰か助けて。誰でもいい助けてくれよ」
俺を助けてを求めるためにその場を立ち上がろうとすると野次馬たちは退いて、何故か俺を警戒の目でこちらをみていた。
多分、俺を助けると今度は自分がターゲットにされるのではないかという恐怖から、俺を助けないのだろう。
「あら、友達がいないんだね。まあ、楽しかったわよ」
近藤伊織は俺の鳩尾めがけて前蹴りを放った。
俺は暗い、暗い海の底に沈むかのように意識を手放した………。
なんだか、よくわからないものが頭のなかを駆け巡る。
枯れ葉色の髪に黒衣を纏い、二本の剣を帯刀している人形のように美しい少女と真っ黒なとんがり帽子を被り、真っ黒な外套を見に纏う少女が死体の山と化した町を大地を駆け回る。
そのような夢が頭のなかでただぐるぐると回る。
黒衣を纏い、剣を振るう少女は誰かに似ている気がした。
ただの一度も見たことがないのに……。
まるで自分のようだ。
彼女は戦い幾百の戦いを乗り越えていく。
そして、最後に彼女は、あの少女は、自分の胸を貫いた。
まるで何からを悟ったかのように…。
そこで俺は白い光に飲み込まれた。
体に鈍痛が走り、舌の上に鉄の味が微かに残っている。
そして、床の冷たい感触がする。
ああ…、このまま授業を受けるのか…。すげえ体が痛い。
このまま、帰ろうかな。あいつともう一回顔合わせるとか、やだし…。
俺は瞼をおもむろに開けた。
だが、そこに、あったのは巨大な城だった。
多分、ネズミで有名なあの遊園地もびっくりするほどのサイズでとても武骨な雰囲気を醸し出していた。
城の庭園だろうか、広くて芝生がしかれた場所で近藤伊織や取り巻き男たち、野次馬の奴等もそこにはいた。
俺たちはさっきまで学校の昇降口にいたはずなのに…。
周りの奴等が驚きのあまりに静まりかえっていると前から人影が2つほどこちらにむかってきた。
と思ったら、何故かもうすぐそばににいた。
その二人はとても美しい少女だった。
そのうちの一人がこう言った。
「ようこそ、異世界へ……」
TS展開は次回です。
感想等をしてくれるととても嬉しいです。
おたのしみノシ