14 居場所確定
べっ、別にPS4に浮気してたんじゃないんだからね…!!!
………。
遅れて申し訳ございません。
今度からは遅れないようにします。
ティアのいった一言で自分の周りの空気が一瞬で張りつき本能的に武器に手をかけた。
緊張と恐怖で額から脂汗が吹き出て呼吸が不規則になる。
すぐ近くにいるティアを見ると緊張した様子もなく鋭い眼差しで影鬼が潜んでいると思われる路地を睨み付ける。
ティアはハンドサインで自分が突撃するからカオルはバックアップを担当するように伝え、武器を構えてゆっくりと歩を進める。
ティアが一歩、また一歩と進むにつれてカオルは自分の心臓の鼓動がドクン、ドクンと速まるのが聞こえ、潜めるはずの呼吸がどんどん荒くなっていく。
そして、路地に飛び出した。
だが、そこには誰も居なかった。
影鬼が潜んでいるはずだが、そこには何もないただの道だけだった。
「ティア、影鬼がいけないんだけど逃げられたか?」
「ええ、そうみたいね。正直な話ここで奴を仕留められるとは思ってないけどちょっと悔しいかな」
するとカオルはポーチから二枚のメモを取りだしそこに書かれていることを食い入るような見た。
「影鬼の習性からして一回は擬態を解かなきゃいけないと言うことか……いや、待てよ。ティア、あいつは寄生生物だといったよな?」
「ええ、そうだけど」
「でも図鑑によるとやつは単に人間や動物に化けるだけとなっている。それに太陽を克服しているって、でも実際は擬態じゃなくて寄生生物であり、あたかも本人のように振る舞っているだけ。しかも日の光を克服してるんじゃなくて宿主の体内で日の光から身を守っている。図鑑最後には擬態を解かなきゃいけない。つまり宿主から一回は抜け出ないといけないってことになる。つまり……」
「宿主と分離するために夜になると人が絶対に立ち寄らない場所に行くってことね」
「そう言うこと。図鑑との相違点があるから仮説でしかないけど一応探す目標は決まった。この街で絶対に夜になると近寄らない場所を住人に聞くしかないな」
カオルとティアは武器から手を離すとまたフェレンス通りに戻るためにもと来た道を逆走していった。
◆
「このラットバックでだぁ~れも立ち寄らない場所かぇ?」
「ああ、そうだ。おばあちゃん」
「んー、そうじゃな。ラットバックで誰も立ち寄らぁ~んと言ったらバレッタの家くら~いじゃな」
「バレッタの家?」
「ああ、そうじゃ。ここから二時間ほど東に歩いたら見えてくる。まぁ~、実際は家ちゅうよりもボロい廃屋じゃがな。昼間でもだぁ~れも来んし夜じゃともはや人が住んでいたことすら忘れられとる」
「わかった。ありがとう、おばあちゃん」
カオルはこの情報を伝えるためにティアが情報収集している場所へ駆け出した。
先程の情報と怪物の大きさを考えると廃屋は確かにいい隠れ家になる。
夜になるとそのバレッタの家にいき宿主から抜け出してもう一度宿主に入り込むに違いない。
怪物退治は初めてでうまくいく保証は全くない。
敵の強さがわからないのもあるが何よりあの死体を見たことよる精神的ショックのほうが大きい。
負ければ自分もあの死体と同じようになってしまうという恐怖が心の底にあり、身震いを起こす。
カオルは自然と体がこわばり背筋に薄ら寒いものを感じるようになっていた。
ダメだ、恐怖で体を硬直させちゃそれこそ死ぬ原因になる。
深呼吸してリラックスしないといけない。
考え込んでるといつの間にかティアのいる場所の近くまで来ており、ティアは人に聞き込みをしている真っ最中だった。
「つまり、奥さん。旦那さんは一昨日の夜から一回も見ていないってことですね」
「そうなんだよ。あの人はどこをほっつき歩いてるだろうね。ろくでなしだけど必ず一日に一回は家に帰ってくるんだけどねぇ、それに小さな女の子の幽霊を見かける何て話もあるし夜もおちおち寝てらんないよぉ」
「なるほど、お話どうもありがとうございました。(一昨日……。なら、ちょうどあの遺体の死後経過に一致している)」
「ああ、気を付けてね。なにかと物騒だから」
ティアは身長の低いボロボロのチュニックを来た中年の女性と話しており聞いた情報をメモに書き込んでいた。
会話が終わったのを見計らって、カオルはティアの肩を叩いた。お互いの情報収集の成果を話し合うために道の端によった。
「一応、俺のところは収穫があったぞ」
「へぇ、なに?」
「ここから東に二時間歩いたほどところにバレッタの家ってところがあるらしいんだ。そこは昼夜問わず誰も立ち寄らない場所らしいんだ」
「そこなら確かにいい隠れ家になっていそうだね。そうと決まれば準備をして後顧の憂いを無くさないとね」
ティアはそう言うこと明らかにひきつった感じの笑顔を作りカオルに笑いかけた。
かなりの感情の変化にカオルは違和感を感じを質問を投げ掛けてみる。
例え、この一回きりのペアとして組んだビジネスの関係であって彼女が仲間であることは変わらない。
そう思いカオルはティアの肩にそっと置いた。
ティアはその置かれた手をゆっくりと握った。
「何でもないよ。あたしは大丈夫だから」
「大丈夫じゃねえよ。大丈夫だったらそんなひきつった顔はしない。それに今は俺はお前の味方だよ」
「うるさい……」
「ん、なっ、何?」
「うるさっいって言ってるんだよ。この糞餓鬼が!! お前に何がわかるんだよ!!」
「なっ…!?」
そうとティアはカオルの手を勢いよく払いのけ、キッと睨み付ける。今まで普通に接して接された分、何故彼女が怒っているのは全く理解できなかった。
それもそのはずだ。
ティアが怒っているのはカオル自身にではなく、もっと別のことだった。
「………」
ティアは、はっとしたのか急に頭を抱え自分が怒っているのはちょっとした誤解だと思わせるためにあたふたしており、弁明の言い訳を考えていた。
「その…」
「たしかに俺はお前のことはわからない。それに俺とお前は一回きりのビジネスの関係だ。それでもさ。お前が仲間であることは変わらないじゃん」
「え…?」
「だから親身に相談するのは当たり前じゃん。だからよ……その、なんだ。思いつめんなよ」
「もしかしたら、昨日の友達は明日の敵になってるこもしれないんだよ? ついこの間までは楽しく話してた相手がお金目当てに殺しに来るかもしれないんだよ。それでもあんたはあたしを信じられんの?」
「たしかに信用は出来ないな。でも今、信用しちゃいけない理由にはなんないなかな」
「バカな奴……」
顔をプイッと逆方向に向け唇を尖らせてティアはそっぽを向いた。
でも顔は凄く安らかな表情になっていた。
(バレッタの家に少女の幽霊。この事件は明らかにあたしが処理しきれなかったあの事件と関係している。いや、関係どころじゃない全く一緒だ。なら……、あたしはどうすればいいんだろう)
カオルはポーチの中身と配置を確かめ銀製の武器をとりやすい位置に移動させていてた。
カオルのこの姿をみてティアはちょっと頼りないけど多分いい奴かもなと自分の中で評価を下した。
カオルは決意の眼差しでティアに出発の合図をした。
「行こう。バレッタの家へ影鬼を倒しに!!!」
「了解!」
ティアとカオルは夕陽が照りつけるフェレンス通りを早足で駆けていった。
読んでいただきありがとうございます。
これから頑張りたいと思います。