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08 怪物図鑑と改造銃

 俺が訓練をはじめてから現実世界では2週間がたった。

 はじめは昔のジャンプのノリかよ、面倒くせぇとか思っていたけど慣れるとそうでもない。

 まぁ、精神世界いわゆる夢の世界で30年間の凝縮された修業をやらされてるから昼間が休憩に思えるほどに辛い。

 まさに寝る暇もなく、訓練を強いられている。

 実際には寝てるけど。

 と思いつつ今日の昼も本を読んでいる。

 地理と歴史の本だ。

 …………。


 何だか、夢が無さすぎるな。

 折角、ファンタジー世界というやつに来たのにいまだにモンスター図鑑や魔導書の類いを触ったことがない。

 毎日、言語を学ぶための教本と物価がどうこうなどの経済の本、地理や地形の本などそんなのしか、触ったことしかない。

 はぁ、ファンタジーしたいなぁ……。

 そう思い、俺は窓からそれを仰ぎ見て黄昏ていた。

 瞬間、バンッというドアをぶち破る音が耳をつんざく。

 薫はビクリと体を震わせ、思わず「ひゃあ」という何とも情けないを声を上げながら椅子ごとひっくり返った。

 何事かと思い、一瞬で起き上がりドアの方向に体をサッと向けるとそこにはマグリアがいた。

 

「薫、怪物退治にいくわよ」

「はぁ?」

「だからぁ、魔物退治にいくわよ」

「敢えて、もう一度言わせて貰おう。はぁ!?」


 マグリアが何か訳のわからないことを口走りはじめ、薫はそれを二度の疑問符で返した。


 なんだ、マグリアさんは頭のネジでも外れたのかな。

 いきなり、怪物退治って何!?

 てか、いたんだ、そんなやつ!

 てっきり、いないとも思っていたよ。

 そう言う類いの本を見してくれないから。


「ほい、これ」

「なにこれ?」

 

 そう思い、薫は顎に手をあて悶々と考えこんでいるとマグリアが一冊の本を手渡してきた。

 その本はマグリアに与えられた最も分厚く六法大全を優に越えるほどで重量もどの本より重かった。

 薫は本の題名を見るため表紙に目を向けた。


『怪物大全 ~怪物の生態と種類について~』


 それは夢にまでみた魔物図鑑だった。


「じゃあ、早速259ページを開いてもらえるかしら」

「あ、ああ」


 言われた通りに259ページまで図鑑を開き、机の上にドシンと置いた。

 

――――影鬼(シャドウ)


 吸血鬼科影鬼目に分類される魔物で人里や歓楽街を主な生息域とする怪物。

 吸血鬼の影を操る能力がより進化したため、影を操っての狩猟をする。

 姿、形はあまり関係なく人間や動物に擬態することが可能なため発見するのは困難だが、夜になると必ず一度は擬態を解かなければいけないため、夜間の戦闘を推奨する。

 主な食料は人間の血液と肉を食し、特に若い女性を好んで食す。

 弱点は主に聖遺物や銀製の武具、流水を苦手としており、通常の吸血鬼が苦手とするニンニクや日光を克服している。

  銀、または木の杭で心臓を突くか他の魔物と同様に陰鉄で精製された武具での致命傷を与えることで駆除が可能である。


       魔物図鑑、第259ページ~第260ページ――


「すげぇ、これちゃんとした図鑑じゃん」

「それはそうよ。

 魔物図鑑だもの、魔王、魔神については、なにも記されてないわ。それに新種の怪物はもちろんのってないわよ」

l「じゃあ、魔王とか出会ったら…」

「自分で弱点を探すしかないわね」

「マジかよ」

「まぁ、それはよしとして。

 259ページの魔物、影鬼が今回のターゲットよ。

 それなりに強い、魔物といってもあんたにとっては馬鹿みたいに強い魔物よ」

「でも、俺訓練してるから大丈夫だとおもうよ」

「訓練は所詮訓練よ。実戦とはまったく違う。

 訓練してるから大丈夫なんて、甘い気持ちは捨てることね。

 でないと」

「?」

「死ぬわよ。一片の肉片も残さず食われてね」

「!!」


 確かに俺が戦って、それで勝ったのは俺の分身くらいで後は負け続き、はっきり言って強くはない。

 先日、最強の魔人とやらは桁違いに強かったがあれは裏打ちされる基礎的な技術が備わっていたからだ。

 だが、俺はその基本的な部分も儘ならない。

 基本がなってないと応用が先走って悪い癖として残る。

 確かに色々と驕っていたな。

 確かにマグリアに言われた通り、甘い気持ちは捨てたほうが良さそうだ。

 もとの世界に戻るためにも。

 おれ自身が覚悟を決めなきゃな。


 薫は心の中で決意を固めると目をゆっくりと閉じて静かに遅く呼吸を始めた。


「…覚悟、完了!!」 


 薫は体に一気に力を入れ仁王立ちをした。


「うふ、ようやく覚悟が決まったってところね。

 行く前にまずは計画を建てるわよ。

 何事も周到な準備が揺るぎない勝利を生む。

 だから、色々と準備をするわよ。

 その剣だけじゃ、返り討ちにされたあげく、骨まで美味しくいだかれちゃうからね」


 マグリアはそう言うと右手を左へ薙ぎ空間を割って、小柄な人間の肘から手首くらいの大きさがある道具を薫に手渡した。


「お、おい、これって…。」

「うん。″銃″よ」


 薫は手渡された、銃をまじまじと見ていた。

 白く、白銀の雪ように輝く銃身、弾を詰めるために六角形に型どられた回転式の弾倉、指をかけやすいように少しだけ低く作られた撃鉄、手触りがいいように研きをかけられたグリップ。

 一言で言い表すなら、芸術品だ。


 最近、高そうなものを三つも頂いちゃってるんだけど、ヤバイ、嫌な汗がだらだらと出てくる。

 壊しちゃったりしてべ、弁償とか………。


 薫は、改めて貰った二振りの剣と銃を顔色を悪くしながら見ていた。


「?、嬉しくないかしら?」

「い、いや嬉しいけど。複雑だよ」

「変ね。まぁ、いいわ。その銃について説明するわ。その銃はあなたたちの世界、地球に存在するレイジング・ブルという銃を私が色々と弄りまくって出来た銃よ。弾殼は加工純銀弾殼を使用、薬筒はカリウムと硫黄、炭素の配合を少し魔法で弄くってあるから少量でも対戦車ライフルと同等の威力を誇るわ。最後に弾頭だけど、これも焼夷式と炸裂式を掛け合わせたものにしてあるわ」

「そのなんと言うか、ラスボス系主人公の銃と同じくらいすごいな」


 それにしてもこの銃、重そうに見えてそこまででもないんだな。

 でも、やっぱり銃だからかズッシリとした感覚が腕に伝わってくるな。

 そう思いながら俺は銃を西部劇のガンマンのようにくるくると回して弄んだ。


「あと、もうひとつ。」

「まだ、あんのか?」

「ええ。」


 マグリアは自分の艶やかな唇に色ぽっく人差し指をちょんとつけて顔をニヤリと歪めた。

 この顔は明らかに何かある。

 ゆっくりと口を開いた。


「情報提供してくれる協力者にあってもらうわ」




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